本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「アムステルダム」イアン・マキューアン/小山太一訳
アムステルダム (新潮文庫)
アムステルダム (新潮文庫)
  • 発売元: 新潮社
  • 価格: ¥ 500
  • 発売日: 2005/07
  • 売上ランキング: 3768
  • おすすめ度 4.0


薄い本だったのに、まとまった時間がとれなくて結局3日かけてしまって、あとで後悔した。
絶対、一気に読んだ方が面白かったと思うのだ。惜しいことをした。
そういう些細なタイミングとかで、より楽しめるはずだった本の楽しみが少し減るというのは
残念なことで、読書計画は綿密にしっかりたてないとなと改めて思う。
時間のある日に読めばよかったのよねー。つまりは。
まあでも、サスペンスものの連続ドラマ的な楽しみ方ができたので、それはそれで良かったかも。
芸術家のモリーが死んだ。夫がいながら奔放な性生活を送っていた彼女の葬儀には、
彼女の昔の男たち、新聞社の編集長、著名な作曲家、外務大臣もおり、
編集長と作曲家は長年の友人でもあった。
男女の関係はなくなっても人生の大事なパートナーだったモリーの死は彼らにも
大きなダメージを与えるが、ある時、モリーの夫が編集長に見せた、
外務大臣のとある写真が、彼らの運命を大きく狂わせることになる・・・

モリーの喪失、そして写真をきっかけに、長い間奇妙な均衡を保っていた、
彼ら3人の愛人そして彼女の夫との間の関係ががらがらと崩れていく様子が
緊迫感たっぷりに描かれている。二転三転する展開に目を見張りながら読む。
特に、昔から信頼し合っていたはずの編集長と作曲家との関係は本当に刻々と変化し、
すさまじいものがあった。

それぞれの人物の性格や背景などが緻密な描写で色濃く描かれていて、
編集長の仕事への野心や人柄、作曲家の作品への執着、なんてものが
こちらにも伝わってきて、お互いの言い分が身に染みてわかるから、より緊張感が増す。
だからすごく濃い作品を読んだ、というずっしりした実感があるのに、
本の背表紙を見てみたらすごく薄くて、なんかそれがすごい不思議だった。得した気分。
字の大きさも他の本と一緒だよな?とかふざけたことを思ってみたりもして。
緻密な文章に思えて、余計なことを書かずに必要な描写をぎっしり詰め込む、
無駄のない的確な表現力が備わってるんだろうと思う。

作曲家が、一瞬素晴らしいフレーズを思いついて、それを覚えておきたいがために、
周りに起こってる出来事に対処できなくなるシーンがあって、
それが後々の展開にもつながっていくんだけど、私は芸術家でもなんでもないけどさ、
そんな私ですら、ブログに書くいい文章が浮かんだときとか、趣味でやってる楽器の
ジャズのアドリブでいいフレーズが浮かんだときとか、あーっ、それそれ、って思うし、
一瞬浮かんでは消えていくそれをなんとか残したいモノにしたい、そういう気持ちは、
わかる気がして、それはプロであり、今までの実績があればあるほど、切実だろうなと思う。
そこらへんの感情の動きが丁寧に描かれているので、自分の世界からは遙か彼方にいる
作曲家の人なのに、共感できる部分もあったりした。
作家本人の実感もこもってるんだろうなという気がする。

新聞社内での水面下での権力抗争などもすごく読み応えがあって、称賛を浴びたことで
むしろあとで追いつめられていく展開で、組織ってこわいなーと思いながらずんずん読む。

新聞社内だけでもすごいけど、全体としても二転三転する展開は全然読めなくて、
ミステリと思って読んでも非常に面白かった。
勝手な先入観で、クレストブックスだし人間ドラマだろう、と思って読んでたんだけど
ああミステリかこれ、みたいな。もちろん人間を描いたドラマとして秀逸なのに、
謎解き的な満足感まであってとても充実感のある読書だった。

作品冒頭から既に死んでいる女性モリーの存在感の大きさがまた凄い。
彼らの思い出の中にしかいない女性がとても魅力的に思えて、
自分がこれだけ男に影を落とせる女だったらステキだろうな、と身の程知らずにも
憧れたりしてしまった。ぜーったい無理やけどね。

今まで海外の作品は作家読みというより、評判を聞いて手にとって読んでみたり、
クレストブックス、奇想コレクション、とかを手に取ってみたり、と
まだまだ開拓中だったんだけど。
今回、また一人、すごい作家と出会った気がする。そのことがまた嬉しい。

しかしやっぱり一気に読めば良かったと後悔している今日この頃。
読まれる際には一気読みをオススメします。
| comments(1) | trackbacks(0) | 01:27 | category: 海外・作家別マ行(イアン・マキューアン) |
コメント
失礼します。同志社ミステリ研究会の者です。この度皆川博子先生の講演会を開催することになりましたので、この場を借りて告知させていただきます。


皆川博子講演会
主催:
同志社ミステリ研究会
http://www.donet.gr.jp/~dms/cgi-bin/wiki/wiki.cgi

日時:
6月14日(土)
開場 12:00
開演 12:30
終演 17:30(予定)

場所:
同志社大学 今出川校地 至誠館32教室

アクセス:
地下鉄「今出川」駅から徒歩1分
京阪「出町柳」駅から徒歩15分

サイン会あり(整理券配布)
入場無料・入場制限なし



皆様のご参加を心よりお待ちしております。宣伝失礼いたしました。
| 同志社ミステリ研究会 | 2008/06/07 10:08 PM |

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