本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「猫舌男爵」皆川博子
猫舌男爵
猫舌男爵
  • 発売元: 講談社
  • 発売日: 2004/03
  • 売上ランキング: 131214
  • おすすめ度 4.5


皆川博子さんは「死の泉」を読んでから気になる作家さんになって、
で、図書館でも「み」の棚を眺めたりしてたんだけど、
そこにいつも置かれてあったのがこの本。「猫舌男爵」なんていうタイトルは気になるし、
表紙もなんともいえない感じで、なんとなく手にとっては戻し、を繰り返してたんだけど、
やっと借りてきました。何をぐずぐずしてたんだか私。

入手困難かしら、と今アマゾンの紹介を見て、噴き出した。

内容(「BOOK」データベースより)
棘のある舌を持った残虐冷酷な男爵が清純な乙女を苛む物語。

違うし!!全然違うけどこういう紹介するアマゾンっておもろいわ。

ちゃんと下にオチがついてたけど。↓

内容(「MARC」データベースより)
「猫舌男爵」とは、棘のある舌を持った残虐冷酷な男爵が清純な乙女を苛む物語…? 爆笑、幻惑、そして戦慄。小説の無限の可能性を示す、瞠目すべき作品世界。表題作ほか4編を収録した短編集。


ちなみに文庫化もしてないし入手困難っぽい。なんで、面白かったのに。
表題作のほか、5つの短編が収録されていて、全部違う雰囲気で、
濃厚な物語世界に酔いました。短編なんだけど、読むのすごく時間かかるの。
濃密で、じっくり時間をかけないともったいないというか。
最近読んだ作家では津原泰水を思い出しました。
幻想的、幻惑的で、とろりとした時間が流れていて、引き込まれました。

幻想的なんだけど、見えないように謎が織り込まれていることが多く、
全貌が見えてくるとはっとさせられる。短編としての構成も非常にうまく、
とにかく夢中で読んだのでした。すごく完成された作品集という印象。
「猫舌男爵」は最高だったし、でも一番好きだったのは「睡蓮」かな。

それにしても、日本語が美しい。小説を幻想的、幻惑的な仕上げにするには
まずは濃密で美しい日本語ですね。と思います。
格調高くて、読んでるだけで幸せな文章。
物語のすばらしさといい、文章といい、小説ってほんますごいな、と
感嘆する気持ちで読み進めました。

「水葬祭」
人の寿命が短くなり、父も、母も、美しく趣向を凝らした延命装置に入っていて、
兄と私は誰にも姿が見えないかのように生きている。
でも、長く生きる人たちもいて、彼らは祖と呼ばれている・・・。

異世界の設定なんだけど、現在の介護問題とかを皮肉ってるかのような物語に
ちょっと考えたりもしちゃいました。人があっさり死ぬ時代、でもそれでも、
生き延びてしまう人々の悲哀・・・。そんな寂しさがあって。
「私」の一人称によって隠された真実があらわになってからの展開が、
また締め付けられるようでした。「私」から、どんどん奪われていくのが辛くて。
残酷で、でもだからこそ美しい、そんな物語。

「猫舌男爵」
このタイトルからこの話を想像できる人がいるとは思えない!
私もいい意味でむちゃくちゃ裏切られました。
「猫舌男爵」という日本の本を見つけた、「ヤマダ・フタロ」ファンの
とある外人が、「猫舌」の意味もわからずにその本を訳そうとしてしまい・・・
外国と日本とのカルチャーギャップをことごとく笑い飛ばす、みたいな物語で、
手紙や文章のやりとりだからお互いの主観(正しいと思ってること)ばかりで
それが間違いまくってるもんだからなんだかなあもう、で、
とにかく面白く読んで、最後はあれ、なんだか少し切ないなみたいな。
ハッピーエンドってこんなんだっけ?誰もいないんだけど?みたいな。
ちょっとやられた。でもとても面白かった。
って意味不明だろって。
いやこれ感想なんか書けないしこれに関してはとにかく読んで欲しいな。

「オムレツ少年の儀式」
著者らしく、ドイツの話で、貧しい中、レストランのオムレツ作り、という
花形の仕事に就いた少年の話。
短いけれど濃厚でぐらぐらきた。官能的で哀しい物語。最後の1ページに戦慄した。

「睡蓮」
精神病院に入っていた女性が死んだ。病室には、有名な画家が書いた
「太陽」という絵が飾られている。そして物語は、時を遡っていく・・・

時を遡っていくという構成がすごくうまくて、で、それが全て書簡や新聞記事や日記や、
書き記された断片でなっていて、それによって読者は真実を知っていく。
明らかになる女性の過去、そして「睡蓮」という絵に秘められた謎は・・・?
ミステリとしてもレベルの高い構成に夢中になって読むうちに、
2人の芸術家の悲しい愛僧、そして芸術家に振り回される家族の哀しみなんかが
浮き彫りになってきて、翻弄される読書だった。
太陽が青い、そう言い切る女性の絵を、見てみたい気がした。

評伝「カミーユ・クローデル」に示唆を得たと最後にありました。
彼女の人生は映画にもなっているようで。見てみたいような、哀しくて見れないような・・・

「太陽馬」
誇り高きコサック部隊の末裔が戦時下の追い詰められた状況で
白昼夢を見、本を読み、現実と幻想が切れ目なく混じりあう、そんな物語。
物語自体、一番難解さを感じたし、正直読みきった自信はないけど。
音楽で会話をし、舌のない人々のお話が戦争真っ只中の現実を侵食する、
その様はなんだかなんともおぞましい。話さえしなければ、音でさえ会話できれば、
私たちは幸せだったか?でもそれさえも幻想だろう。
圧倒的なラストシーンが目に焼きつく。
| comments(3) | trackbacks(2) | 00:39 | category: 作家別・ま行(皆川博子) |
コメント
ざれこさん、こんにちは。
皆川博子さんは『伯林蝋人形館』でハマッた大好きな作家さんです!
なんとも美しい文章と暗く淫靡な雰囲気がたまらんです。
あんまり本ブロさんで読まれている方が見当たらなくて、
皆川さんの感想をみつけると嬉しくなってしまいます。
また読まれたら感想アップしてくださいね♪
| tomekiti | 2008/05/25 1:45 PM |

こんにちは。
皆川さんは大好きな作家さんなのですが、直木賞を取ってらっしゃるにも関わらず、多作で素晴らしい作品ばかりにも関わらず、なぜか絶版だらけで入手しにくくて哀しいです。
前にブックオフで大量に文庫があったとき、購入しておけばよかったと後悔しきりです。
猫舌男爵、私も図書館で借りて「これいい!買おう!」と思ったのに、何故か今じゃ新刊書店で入手できない。しくしくです。
| なかさん | 2008/05/29 11:50 AM |

tomekitiさん
そうですね、皆川さんはかなりはまりそうな作家さんですよね。私も文庫で出てるのをみつけては細々と読んでいきたいなと思っています。

なかさん
どうしてなかなか入手できないんでしょうね・・・。この本も文庫でてれば買うんですが・・・。装丁もステキですし。
| ざれこ | 2008/06/12 11:59 PM |

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皆川博子『猫舌男爵』
皆川博子『猫舌男爵』 講談社 2004年3月25日発行 「猫舌男爵」とは、棘のある舌を持った残虐冷酷な男爵が清純な乙女を苛む物語・・・? 爆笑、幻惑、戦慄。表題作の他、多様な表情を持つ短編小説を4編を収録した短編集。 猫舌男爵 皆川 博子 面白いと
| 多趣味が趣味♪ | 2008/05/25 1:20 PM |
皆川博子「猫舌男爵」
 タイトルからするとちょっとグロテスクの雰囲気のある作品っぽく思える。  カバーイラストもどことなくミステリアスで、不安感を煽る。まさに皆川博子らしい。  が、そんな想 ...
| 日々のんぽり | 2016/10/26 12:00 AM |
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