本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
<< June 2018 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 >>
<< 「オブ・ザ・ベースボール」円城塔 | main | 「キリハラキリコ」紺野キリフキ >>
# 「エマ」ジェイン・オースティン/中野康司訳
エマ (上) (ちくま文庫)エマ (下) (ちくま文庫)

ジェイン・オースティンの読書会、という映画が最近公開されていましたね。
だからというわけでもないけれど、代表作(かな?)のこの作品を読んでみました。

海外作品を読み始めたのが最近なこともあり、海外の古典にはむちゃくちゃ疎いです。
なのでオースティンもいつの時代の人かも知らなかったんだけれど、
この「エマ」が書かれたのは1816年。日本では江戸時代後半くらい、かなり昔です。
世界史にもかなり疎いのであとで調べたのだけれど、舞台となったイギリスでは
産業革命が1760年頃〜1830年代らしいから、近代化が進んでいる最中というところか?
って書いても全然想像できないけど。
とりあえず登場人物達はみんな馬車か馬に乗ってます。のどかな雰囲気。
日本の時代小説は読んでいるけど、海外のは読んでないに等しく、
それによく考えると、現代の人が書いている時代小説を読んでるだけで、
日本の江戸時代に当時の人が書いた作品を読んだことあるかと言われたら、
古典の授業以外に覚えがないので(明治の文豪ですらほとんど読んでない)、
この年代に実際に生きていた人が書いた本を読む、というのは、これはなかなか貴重な、
面白い体験でした。当時の人達の考えてることが普通にわかるわけだから。
言葉の壁があって、日本の江戸以前の作品がなんとなくとっつきにくい
(もちろん現代語訳はあるだろうけど、ニュアンスが違う気がするし)ことを考えると、
昔の作品は翻訳の方が読みやすいのかもしれないなあ。少し発見でした。

さて、「エマ」です。イギリスの小さな村社会での、結婚騒動。
としか言いようがない、日常極まりないテーマで上下巻と長いです。大河ドラマな感じ、
とかでは全然無い。規模がとにかく小さいです。

結婚騒動だし、今も昔も同じだろうし、お年頃の私が読むと共感できるんじゃ、とか
思ってたけど、とんでもなかった。
主人公エマは綺麗でお金持ちで身分も高くて、今まで何不自由なく育ってきたお嬢様。
だから大変鼻持ちならない。あまりのうざさに頭にきて、一度本を置いたくらい。
人間の価値を身分とか見た目とか洗練とか頭の良さとか、そういうことばかりに置いてて、
そして自分は全て兼ね備えていると当然のように思ってるあたりがすごくうざい。
で、そんな彼女の趣味は、よりによって縁結び。もううざすぎ。
そんな彼女が、孤児のハリエットと友達になり、頭は悪くて位も低いが美しくて気だてがいい、
そんなハリエットにふさわしいお相手をみつけてあげなくちゃ、と躍起になり、
ハリエットが農夫と仲良くなると、「農夫なんて!」と反対し、牧師のエルトンと
縁結びしようとするのだが・・・・

エマは自分が頭がいいと思いこんでるようだけど、恋愛経験が皆無なのもあって、
ものすごく勘違いをしてそのまま突き進んでしまう。エマという、歪んだ視点から描いた
小説と思うと、なんだかミステリ調ですらある。
「エルトンはきっとこう思ってるな」とか、こちらで推測しながら状況を把握し、
そしてとんでもないことをしでかすエマをみて「あーやっちゃったよ」と
こちらが頭を抱えることに。
そう思って読んでいくとこれが案外面白いのだが、最初の方はエマのうざさに
目がいってしまって、なかなかその楽しみに気づけなかった。
後半は、人間関係が更に複雑になり、そしてエマはやはり勘違いフィルターを
かけてくれるので、「フランクの本心はきっと」とか
「ハリエットって本当はこう思ってるんじゃ」とか、
「あいつとあいつはできてるぞ」とか推理しながら読むと、実に楽しくなってきた。
まあだいたいは当たるしね。

不思議なもので、最初うざくて仕方がなかったエマについても、だんだん好感度が上がってくる。
エマは高慢で勘違いだけど、間違いに気づいたらものすごく反省するのよね。
そこがかわいくて、なんていうか、本当に何も知らない、純粋培養のお嬢様なんだなあ、
だから純粋で性根がいいよね、とかいうのがわかってくると、かわいくなってくる。

エマが下巻で本当の自分の気持ちに気づくあたりも、「やっとかよ!!」とかツッコミながら、
かわいかったしね。しかしな、友達だったら小一時間説教してるけどねこの女。
自分の都合の悪いことは見えてない、ってところがまたかわいらしくて、笑える。

でもそれは自分も一緒で、エマほどは勘違いしてないと思うけど(多分)、
自分に都合のいい目線で周りの人間関係を眺めているところはあるよね・・・
絶対私はこいつには嫌われてない、と言い切れる人間は案外少ないし、
自分がわかってないだけであいたたた、なことをきっとしてるんだろうな、と
エマの猛省をみつつこちらも我が身を省みた。エマを嫌い!と言ってた自分が
同族嫌悪ではなかったかどうか。そこらへん、なかなか自分は自分を客観視できないなあ。
いろいろ考えてしまいました。

当時ののどかな村社会の生活が活き活きと描かれていて、村全体が日常の
些細なネタに一喜一憂して、何でもすぐ噂になって、上流階級の人達は財産持ちで働かず、
パーティとかピクニックとかばっかりしているし、羨ましい!と読んでて
かりかりするような生活だけれど、そこにこちらもなじんでしまうと、
なんだかのんびりと出来ました。いい空気吸ってのんびり暮らしてる、みたいな。

キャラ立ち小説でもあり、個性的なエマはもちろん、エマのお父様がまたおかしくって、
ドアが少し開いていてすきま風が吹いただけで、「風邪をひいてしまう!ありえない!」と大騒ぎする。
当時は風邪で命取りだったのかも知れないけどさ、健康オタクとでも言っていい
過剰すぎる反応にはいちいち笑ってしまう。
ご近所のミス・ベイツは話があちこち飛んで途切れなくて、また笑えるし。
それにこんなおばちゃんはうちの近所にもたくさんいるから全然時代を感じない・・・。
しかしなんと言ってもエルトン夫人が強烈。「うちのEさま」(ちくま文庫訳では)と旦那を呼び、
あちこちに強烈なおせっかいを焼く、超高飛車な成金女で、後半エマがとってもかわいく
思えたのは彼女の登場のおかげだろう。いやあ、もってってくれたなあ。笑える。

後半になった頃にはっきり気づいたけれど、この作品はたいそうよくできたコメディでした。
わははと笑って読めばいいのだった。楽しい。

ラストは笑っちゃうほどの大団円だし。童話かよ、ってくらい。そこがまたよかったわ。

ある意味、誰と誰がくっついたなんて話は、日常のネタとしては面白いけれど、
小説にしてしまうとくだらないものだ。
それをこんな長編にして、だけど飽きずに読めてしまった。
そこに小説の威力を感じます。日常的だからこそ、その時代の空気も映し出すし、
でも人々の姿や、その悩みは普遍的で、共感もできる。
長く読み継がれるだけのことはあるなと思いました。
| comments(2) | trackbacks(0) | 23:48 | category: 海外・作家別ア行(その他の作家) |
コメント
未読(海外物は苦手で・・・)ですが、映画は観ました。
エマ(グィネス・パルトロウ)が、大勘違いしながら爆走してました。
原作に忠実なのかな?
| つつつ | 2008/05/16 9:15 PM |

オースティンの作品のヒロインは、
・控え目な振りして実は周囲の人を小莫迦にしたところがあり、
・学はあるけど他人から見ると高慢なで鼻につくし、
・その割に世慣れしていないので変なところでポカッと抜けている、
というところが、なんだか気に障る。他人とは思えなくて。
さらに、上流の下、中流の上、といった家庭でちゃんと教育受けている人たちが、あーだこーだいいながら、本人たちはいたって真面目に、周囲からみるとばかばかしく生きてるというところも、ツボです。
当時の階級制度を厳密に反映したセリフや文章が評価が高い作家のようですが、罰あたりにも、私は単なるハッピーエンドものとして、一連の作品を読んでいます。
(数が少ないので、たぶん全部読んだはずです)
| オプト | 2008/05/24 3:13 PM |

コメントする









この記事のトラックバックURL
http://blog.zare.boo.jp/trackback/768636
トラックバック
NOW READING
ざれこの今読んでる本
Categories
Comments
Trackback
Mobile
qrcode
Profile
Search this site
Sponsored Links