本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「奇術師」クリストファー・プリースト/古沢嘉通訳


どうでもいいことから入るけれど、海外小説はまだ読みはじめな私、
著者別ではなくてジャンル別でカテゴリ分けをしてるのですが、
この小説を「ミステリ」に入れるか「SF、ファンタジー」に入れるかしばし迷う。
結局SF側に放り込んだけど、ミステリでもよかったかなあ、いまだ迷う。
こういう作品が出てくるとジャンル分けって意味ないよなと思う。
そして私が思うに、ジャンルがはっきりしない小説ほど、面白かったりする。

いやあ、面白かった。

プリースト、はじめて手に取ります。昨年「双生児」が刊行されて話題でしたが
この本があるから先にそれを読もうと思って置いてあったのに、分厚いから
なかなか手が出なかったんだけど、読み始めたらたった2日。夢中。
あーはよ読めばよかったわ。ほんま。

映画「プレステージ」の原作でもあり、私が持っている本は映画バージョンの表紙ですが、
この上の表紙の方が絶対良かったのになあ。
映画はなんだか別物の匂いがしますが、大変気になる・・・・

記者のアンドルー・ウェストリーは、普段から不思議な感覚にとらわれている。
自分の双子の片割れの気配を感じるのだ。養子である彼には出生に謎もあり、
双子の兄弟がどこかにいるに違いないと思っている。そんな彼の元に、彼の先祖が書いたと
思われる手記が贈られ、そして、送り主と思われるケイトという女性に会うこととなり、
奇術師であった彼の先祖、アルフレッド・ボーデンが綴った日記を紐解くこととなる。
そこにはボーデンと、彼の天敵でもありライバルでもあった奇術師、ルパート・エンジャとの、
瞬間移動の奇術を巡る壮絶な闘いが記されていた。

各編で語り手が変わる。アンドルーの語り、「アルフレッド・ボーデンの手記」、
そして現代に戻ってケイトの語り、「ルパート・エンジャの日記」、過去も現在も行き来しつつ、
過去の謎、そして現在にもつながる謎がたち現れていく。
その構成がむちゃくちゃうまくてとにかく引き込まれる。
ボーデンが、エンジャの演じる瞬間移動のタネがわからずに画策するシーンが
エンジャの日記で明らかになったりするのだが、同時代の同時期の人々が交互に語って
別の視点で見たら謎が解けましたなんてのは当たり前なんだけど、
その謎が時代を超えるあたり、ものすごくぞくぞくした。
奇術の闘いのくだりも見ものだしものすごく面白いけど、それが時代を超えること、
現代という視点が加わってるから更に更にすさまじく面白いものになったんだと思う。

奇抜な発想が盛り込まれてきてそれが幻想の色合いを加えているわけで、
それがジャンル不明になってるゆえんだけれど、ただの謎解きの観点で読むと
普通反則であるはずのその幻想味も、これだけ凝った構成で導いてくれたら何の不満もない。
むしろ伏線張りまくりの上質ミステリとして読んで、先が読める部分もあり、
全く読めない部分もあり、すごく驚かされたし興奮したし、エキサイティングな読書でした。

著者自身が奇術師じゃないかと思わせる見事な語り口で、とにかく素晴らしかった。
そもそも本というのはもともとが読者を騙そうと思って書いているわけだから(ジャンルによるが)、
奇術と同じじゃないか、読者はそうやって著者のいいように導かれ気持ちよく騙されてるのだ、
読書にはそういう面白さもつきものだなと思ったりもした。

構成やら設定やらそんなことばかり書いてるけど、ボーデンとかエンジャの人間としての
面白さも魅力のひとつで、特にボーデンの複雑怪奇な人間性、ボーデンから見たエンジャ像と
実際のエンジャ像がかなり違うことなんかもとても興味深く読んだし、
彼ら二人の奇術に賭ける意気込み、その命がけの姿勢にはプロ根性を見て、参ったなと。
なんか変な感想だけど。
科学者、ニコラ・テスラがまた強烈でした。実在の人物とは知らなかったけど、
この奇想天外な作品で実在の人物まで出して来ちゃうとはすさまじいです。知ってたらもっと、
楽しく読めたんだろうに、自分のもののしらなさ加減が惜しいです。

ネタバレしないで魅力を書くにはもうこれで限度(まだまだ書き足りないけど!)
翻訳もスムーズで読みやすいです。翻訳苦手な人も是非。
| comments(4) | trackbacks(3) | 21:49 | category: 海外・作家別ハ行(クリストファー・プリースト) |
コメント
おばちゃんも翻訳物はなかなか勘がはたらかへんのですが
これは面白かった。
『双生児』の方を先に読んだのですが
こちらも無茶苦茶面白い。
どちらも奥が深い作品でした。
| ナカムラのおばちゃん | 2008/03/12 11:29 PM |

昨年『奇術師』『魔法』と一気に読みました。
読書の醍醐味を味わえる作品といっても過言でないでしょう。
『プレステージ』も是非ご覧になってください。
| 美結 | 2008/03/13 8:28 AM |

私はとにかく圧倒的に「魔法」が好きです。
それまでプリーストのことは知らなくて、題名に惹かれて読み出したので、どういうジャンルなのかどういう小説なのか全く予測がつかずに読んでいたので、驚きとコーフンもひとしおでした。
ぜひ今度は「魔法」を読んでみてください〜。
| りつこ | 2008/03/14 4:56 PM |

映画版の『プレステージ』は、アイディア群は当然同じなんですが(だから、原作を読んでるとオチは分かってしまう)、脚本が、原作を完全に解体し、一から再構築しなおした大変な労作となってます。
原作のややメタっぽい構成はかなりわかりやすく即物的に、しかし、語りの重層的入れ子構造に関しては、思わぬアレンジで利用されており、唸ってしまいました。
そして、何といっても二コラ・テスラを演じたデヴィッド・ボウイがすばらしい!
もちろん、主役2人も素晴らしかったですし、原作にないキャラクターを演じたサー・ケインもさすがの貫禄でした。
| ふゆき | 2008/03/15 12:33 AM |

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