本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「中原の虹」浅田次郎
中原の虹 (全4巻)
中原の虹 (全4巻)
  • 発売元: 講談社
  • 価格: ¥ 6,720
  • 発売日: 2007/11
  • 売上ランキング: 122534
  • おすすめ度 3.0


馬賊の李春雷は、張作霖に大金で買われた。二人は、中国を統べる者が
持っているという伝説の「龍玉」を探しに行く。
そして張作霖は、満州で一大勢力を築いていく。
一方、清国は死にかけていた。光緒帝は幽閉され、西太后が実権を握っている。
清朝の滅亡を自らの手で引き受けつつ、他国の侵略を阻むために必死に画策する西太后。
愛する光緒帝を追い落とす運命にあった西太后の苦悩や老いを見守る、宦官の李春雲。
また、袁世凱もいつしかトップに祭り上げられていく。
そして清朝が興った頃、太祖ヌルハチの息子ダイシャンは、平安を求めて苦悩しつつ、
幼い皇帝とともに長城を超え、中原の覇者となる。
清朝誕生から清朝崩壊までを、龍玉を軸に時空を超えて描く、大河中国ロマン。

「蒼穹の昴」、「珍妃の井戸」から続いており、これだけ独立して読んでも
わからないと思うので、最初から読むことを勧めます。「珍妃の井戸」も忘れちゃ駄目です。
そして、「中原の虹」にも更に続編があるらしい!2年後目処に刊行予定だとか、
それも踏まえつつ読んだ方がいい。でないと私みたいに、テンションさんざん上げて読んで、
「最終回は来週でしたか!!」と落胆する羽目になるので。
もちろん、「中原の虹」自体は一つの流れとして、しっかり完結はしてるんだけどね。
「蒼穹の昴」刊行は1996年なので、浅田次郎的には10年経っての続編刊行となる。
私は2005年末に「蒼穹の昴」を読んだので、タイムラグは1年と少し。
このタイムラグの違いはけっこう大きかったような気もするなあ。
浅田次郎、良くも悪くも年を取ったな、と思ってしまった。

今回の「中原の虹」は、歴史小説という感じではなかったな。私としては。
全4巻で西太后を偲び、果てには滅びゆく清国を偲ぶ、とてもセンチメンタルな作品で、
龍玉の伝説のくだりとか、清国の太祖達が現在(20世紀初頭)の西太后達の前に
現れたりスクリーンで写ったりする様はまるでファンタジーでもあり、少し驚かされた。
このおセンチな感じに著者の年齢を感じてしまったりする私は意地悪だろうか。

変な喩えだけど、甘くて濃厚なセンチメンタリズムたっぷりのお酒を
ぐいぐい飲まされてる感じ。最初は「飲み過ぎたらあかん」と冷静だったり、
時々胸焼けもするのですが、「まあまあそう言わないで」とどんどん注ぎ足されるので、
ある時からまあいっかと開き直って飲むようになる。
その勢いは止まらず最後には酩酊。涙涙の連続だ。
入り込んでしまえば、センチメンタルに酔いしれる快感というのはなかなかのものでした。

前作の人間関係とかかなり忘れていたわりには後日談とか多いのでちょっと戸惑う。
これからまとめて読む方は第4巻に挟まっている「蒼穹の昴」あらすじを先に少し
読んでおくといいと思う(図書館本についてるかどうかまではわからないけど)。
4巻読書中に見つけた私は悔しかった。1巻に挟んでおいておくれよ・・・。

まあ、1巻はあれですわ、新たな登場人物達を占い師の白太太がいちいち占っては
先行きを示してくれるという紹介が延々と続くので、ちょっと笑ってしまったが。
物語が進むにつれてそんな笑いや不満も忘れて、長い大河ロマンの渦に否応なく巻き込まれる。

わが勲は民の平安。この理想を目指して、清の太祖、満州国のヌルハチは、勇敢な軍勢で
満州を制圧し、その息子達は更なる平安を求め、長城を挟んだ明国との戦いに挑む。
満州だけを制圧しても、長城の先に他の国がある限り、我々に平安はない。
そういう理想を持って軍を進める清の軍勢。戦を無くすために戦をする、その矛盾に苦しみながらも。
だからこそ、天下を欲する彼らは天命を求める。龍玉を。彼らが天に認められたその証を。

本当は全世界が一緒だったら戦いはないんだろうけどそんなの理想でしかないし、
彼らが本当に平安を求めて軍を進めたのかなんて真実は何もわからないけれど、
清という国がこういう国であって、最後に残った西太后もそれをわかっていた、って風に、
これを読んだらそう思いたくなってくる。こんなに偉大な国だったのだと。
そして中国という国には、そういうスケールのでかさが備わっている気がするのだ。

誕生と合わせて破滅も描かれていく。西太后と、幽閉された皇帝光緒帝を中心に。
新たな中国内部の勢力を呼び起こし、内側からの改革を目指すため、自ら進んで汚れ役を引き受け、
それによって列強勢力を食い止めた西太后。ここで面々と綴られるその偉大さは計り知れず、
またもや、西太后が悪逆非道な人ではなくって、本当にこういう人だったに違いない、と
信じたくなってくる。
この物語の西太后は、老仏爺(生き仏様)のあだ名にふさわしい、すごい女性なのだ。
西太后の最期と、その遺したものを考えると涙がこぼれた。

もう一つの軸として李春雲と兄の春雷の物語がある。貧しさのために、兄は弟と家族を捨てて
命を張って金を稼ぐ馬賊になり、春雲は男の一物を切りとって宦官になる。
普通に家族みんなで生き延びることが出来ないくらいの貧しさが蔓延する国で、
春雲は西太后の側近となり、春雷は東北王と呼ばれ慕われる張作霖の部下になり、
立場は全く違えども、彼らはいつのまにかその国を動かす立場に立っていた。
運命を分かってしまったその二人の一瞬の出会い、それは今までのセンチメンタリズムからは
離れた、淡々としたシーンで、だからこそ泣けた。
この緩急の絶妙さ、さすが浅田節である。泣かせるわ・・・

そしてもう一人の主役、張作霖。若くて色男でけして強そうに見えない彼が、
満州を統一していく。あくまで馬賊であり、任侠の世界にいる彼が、学はないけれど
科挙の試験を受けたような秀才と互角に張り合って、頭角を現していく様は圧巻だ。
学問の意味を問う、もう一つのテーマがあるような気がする。文盲だから駄目なのか、
学があるから偉いのか、そんなことはない、本当の人間の値打ちはそんなもんじゃない、
これを読んでいるとまたそんなことを思う。貧しさを知り抜き、貧しさから脱するために、
貧しい人達の代表としてただいい世界を作ろうと進む彼と、
清国誕生の時代とがシンクロしている、この構成もとてもうまいと思う。

彼についてはまだ謎もあるが、とても魅力的な人物に思える。
張作霖って日本史で習うじゃないですか。それを強烈に覚えているので、
先がわかってしまうところがどうかなと思うんだけれども、だからこそこんな人だったのかと
想像するのは楽しいし、先が気になったりもするのだった。
あ、これから読む人で「張作霖って聞いたことあるけど誰だっけ」って人は、
わざわざウィキで調べたりしない方がいいと思いますよ。まあ、お任せしますが。
ちなみに張作霖の息子は張学良ですが、彼も名前だけ知っていて知識がないので、
何度ウィキで調べようかと思ったか。とりあえず読んでるあいだは我慢しました。

そういえばもう一人の主人公、袁世凱の俗物ぶりも圧巻です。ここまでけなされる
歴史上の人物もどうかと思うよね。でも実は気弱な彼が祭り上げられていく様に、
抗えない時代の流れの恐ろしさを感じました。
読んでるあいだは強烈な人だったのに、読み終わったら心に残るのは西太后と
張作霖でしたな。不思議なもんです。

清を偲んで偲んで、新たに動き出したと思ったら終わってしまった、次は激動がやってきますね。
何年後かであろう次回の発売まで記憶力を保てる自信が全くないので、
次は1巻に「蒼穹の昴」「中原の虹」のあらすじをお願いします!そしていっぺんに出してくれ。
しかしなあ、この全4巻の内容をぎゅっと3巻にしてしまって、
4巻目で終わりにしてもいけたような気はするけれど・・・
まあ激動の第二次大戦だろうから、また全4巻とかでじっくり読みたいかな。
どれだけ濃厚なドラマがあるのか、中国って本当に凄い歴史を内包しているなあと思う。
そして次からは日本も徹底して絡んできますね。いろいろ考えさせられそうだ。

| comments(2) | trackbacks(0) | 02:14 | category: 作家別・あ行(浅田次郎) |
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