本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「遠まわりする雛」米澤穂信
遠まわりする雛
遠まわりする雛
  • 発売元: 角川書店
  • 価格: ¥ 1,470
  • 発売日: 2007/10
  • 売上ランキング: 12266
  • おすすめ度 5.0


久しぶりの古典部シリーズ。神山高校古典部の文化祭までの数々の事件を綴ったのが
今までの三作品(『氷菓』『愚者のエンドロール』『クドリャフカの順番』)では、
神山高校の文化祭の準備から終わりまでに遭遇する事件、といった風が強かったので、
文化祭も終わっちゃってでも古典部シリーズ最新刊、ってどうするつもりだろう、と思っていたら、
奉太郎が入学して古典部に入ってから、1年生が終わるまでの1年間に、
古典部が遭遇したもろもろのミステリを解いていく、そんな連作短編集だった。
なにはともあれ、彼らとまた逢えて嬉しい。
省エネキャラの奉太郎のひねくれっぷりとか、里志の飄々っぷりとか、
千反田えるの飽くなき好奇心とか、摩耶花のきついけどかわいいところとか、
好きなんだよねえ。
米澤さんの描くキャラクターの、理屈っぽいところとか、素直じゃないところとか、
妙に私の性に合う。だから奉太郎がいい感じなんだな特に。

連作短編で、短い話もちょい長めの話もあり、初詣とか夏の温泉旅行とか
イベントもありつつ、普通に世間話をしてるだけの時もあり、バラエティ豊かである。
バレンタインなんて恋愛的なイベントもあるから「お?」と思ったら、
そこは米澤さん、チョコレートが消えちゃったりして、一筋縄ではいかないんだけど。

ミステリだから、謎は解くのだけれど、世間には解かれなくてもいいこと、
知らなかった方がよかったなあ、ってことがたんまりある。
それをまあとにかく解いちゃうのがミステリであって、
あー探偵、そこまで首つっこまなくても・・、あーあ、ってことはあるよね。
「みんな不幸になってしまった・・・」なんてドラマの探偵役が呟いていたりすると
「お前のせいなんじゃ・・」と思ったりさ。

ここでも、千反田えるの好奇心が見逃さず、奉太郎の推理能力がそれを見破ってしまい、
知らなくてもよかったようなことがわかってしまうから、苦々しい後味が時折残る。
一見平和で穏やかに思える場所に潜むちょっとした悪意。そんなことを知ってしまって、
その事実を知ったが故にいろいろ考えてはまた成長していく、そんな物語なのかなと思う。

軽く1つずつ感想を。

「やるべきことなら手短に」
高校の定番、怪談話をモチーフに。ホータローの省エネ主義が悪く出てしまったような。
4月の時点でいきなり彼は自らの省エネ主義に自ら疑問を呈してしまう形に。
千反田えるの好奇心が省エネの邪魔になるのなら無視してしまえばいいのにね。

「大罪を犯す」
あれ、どんな謎だっけ。部室の与太話と言っていいようなネタじゃなかったか、
あー思い出した、千反田えるが珍しく怒って、その怒った原因を探る話でした。
・・思い出してもやっぱり与太話には違いないが、7つの大罪をめぐる
4人のおしゃべりは面白く読みました。
しかし高校生とは思えないな彼ら。知識量というか、分析力というかが。

「正体見たり」
夏休みに摩耶花の親戚の温泉旅館に旅行に行った彼ら4人。
男女2人ずつだというのに全くロマンスはなく、奉太郎は湯当たりで倒れたりしてる。
そこに出て来たお決まりの幽霊騒動。あの影は何か?
えるの好奇心は炸裂し、そして彼らは苦い結末を知る。

知らなくてもいい事実を知ってしまった、それを打ち明けるときの
奉太郎の何気ない優しさと、それを聞くえるの強さみたいなものを思った。

「心あたりのある者は」
あーこれは傑作。謎の校内放送、文字にしてたった2行ほどの校内放送から、
ここまでの推理をやらかしてくれるとは。なんでそこまでわかるねん、と
思うけど、ちゃんと筋通ってるんだよねー。短いけど本格ミステリ読んだ満足感。

「あきましておめでとう」
初詣に行って、密室に閉じ込められてしまったえるとホータロー。
大声で人を呼ぶのも誤解されるし、さてどうやって脱出しよう?
ホータローが考え付いた方法に爆笑してしまった。
関係ないと思わせる今までの与太話が効いてる話。うまい。タイトルもうまい。

「手作りチョコレート事件」
この辺からちょっと流れがしっとりとしてきて、ラスト2編は違う意味で読み応えが。
バレンタイン。摩耶花の手作りチョコレートをめぐるひと騒動が描かれます。
摩耶花は里志に告白し続けては流され続けてるけれど、それはどうしてか?
もどかしすぎる里志の思いを知り、ホータローの心も少し動きます。
未熟な自分、まだ成長しきれてない自分。彼らはそれを自覚し、真摯に悩んでいる。
そんな苦い思いが、少し思い出されるようでした。
そして、里志を気遣う、ホータローの何気ない計らいがとてもいいなと思いました。
なんだかんだいって優しい奴なのよね。

「遠まわりする雛」
そんな前回の事件を受けつつ、ホータローは今度は生き雛の祭りに駆り出されます。
そこではえるが生き雛をやっていて、ホータローは傘を差す役をやって
練り歩くのだけど、橋の工事でコースが変わり、そしてその原因は?

謎はどうでもいいのです。ホータローがある事に気づくのです。
その気づき方がなんともまあもどかしくて、かわいくてかわいくて。
ホータローの姉になって肩でもばしんとたたきに行きたくなったりして。
前回からの流れで彼の意識の動きもすごく共感できるし、
ほっと胸があったかくなるようなラストの短編でした。

さて彼らももうすぐ2年生。きっと古典部もいろいろ変わるでしょう。
ここで終わるのも一興、でも私はもっともっと読んでいたいな。興ざめでも。
かわいい彼らと謎を解きながら、苦い苦い青春をもっと味わっていたいな。
ホータローの姉も気になる登場はしながら脇に徹してるので、彼女の話も読みたいし。
あーしかしあんな弟、欲しいなあ。
| comments(3) | trackbacks(2) | 01:32 | category: 作家別・や行(米澤穂信) |
コメント
千反田の事を無視できない奉太郎。本人は気付いてませんが、実は一目惚れだったんじゃないのか、なんて思ったりしてます。
家は男兄弟でしかも長男なんで、姉貴とかは憧れだったりもしますが、このお姉さんはちょっと勘弁です。何をしても勝てなさそう……。
| たまねぎ | 2008/01/12 1:48 AM |

 奉太郎たちの知識量には、私もいつも驚かされますね。省エネ主義にしては、あの知識量は異常ですね。(笑)
 私にも、あれだけの知識や分析力があればな〜。
| 岡山の118 | 2008/01/12 11:35 AM |

たまねぎさん
ホータローは絶対に認めないでしょうが、きっとそうなんでしょうねえ。もう、素直じゃないんだから。
私はあのお姉さんとは友達になれそうですよ(笑)ホータローをいじめる気持ちわかるわあ。

岡山の118さん
そうですねえ、幅広く知識を身につけるのは省エネ主義に反しないんでしょうかね(笑)ホンモノの省エネ主義は試験に出るところしか覚えないんじゃ、とか思ったりしますが。でもあの豊富な知識と分析力があるからこそ古典部は面白いんですよね。ステキです。
| ざれこ | 2008/01/13 9:42 PM |

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遠まわりする雛  米澤穂信
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