本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「遭難、」本谷有希子
遭難、
遭難、
  • 発売元: 講談社
  • 価格: ¥ 1,365
  • 発売日: 2007/05/16
  • 売上ランキング: 216853
  • おすすめ度 4.5


本谷有希子が最年少で鶴屋南北賞とやらを受賞した戯曲。
演劇には疎い私にはどこまでの快挙かわからないんだけども。
とにかく表紙強烈やし本谷さんやしということで読んでみる。

劇の脚本って高校の文化祭で書いたことあるけど、一つ、あるいは数個の舞台を固定して
そこでドラマをやらなきゃいけないし、登場人物もそんなに出せないし、いっぱい制約があって、
どうやって舞台内でドラマを収めるか、そして面白くするか、と考える面白さがあった。
この戯曲は中学校の職員室に舞台を絞っていて、
登場人物もほんの5人程度、教師と保護者だけだ。
生徒数人がキーパーソンになるものの、出てはこない。でも存在感はある。
5人だけど何人もいるような広がりを見せつつ、その5人がまず曲者揃いだから
もうそれだけで面白いし。
脚本の制約をあっさりクリアしてなおかつべらぼうに面白く、引き込まれる。
改めて脚本や劇のおもしろみを知った気がした。

中学生が自殺未遂して入院している。その保護者が、相談を聞いてくれなかったと
担任教師の江國先生に毎日詰め寄る。そのシーンからスタートするのだが、
いきなり保護者、「そこでウン○しなさいよ」とか言い出すからさあ。仰天よ。
そんな中割り込む正義感溢れる教師、里見先生と、日和見の学年主任(男)、
無愛想な石原先生。彼らの会話から新事実が発覚していく。
生徒は誰のせいで自殺しようとしたのか?

でもテーマは謎解きではない。恩田さんあたりが劇を書いたら謎解きになるだろうが、
そこは本谷さんだ。謎がメインじゃなくて描きたかったのは彼らのキャラクターだろう。
各登場人物が全員「俺様」な奴らで、「私が!」「私が!」「私が!」って言ってる感じ?
そんな劇なんだもん。
江國はかわいらしい英語教師で「私が悪いんです」とひたすら謝ってるんだけど、
どうも謝ること、悲劇のヒロインになることに快感を覚えているようでもあるし、
保護者の側もストレス発散してるだけのような気がするしさあ。

ま、一番すごいのは里見先生ね。登場人物紹介に「人望がある」ようなことが
書いてあってそうなんだと素直に思っていたら、違う違う。
正義漢に見せかけておいて自分が大好き!な彼女、あらゆることを人のせいにしてしまおうと
ものすごく画策をする。その様は性格悪いとかえげつないとか通り越して、もうね、面白い。
そこまでするかー!みたいな。はじけてるし徹底してるわ。
いろいろ悪事がばれてきたら、しまいには自らのトラウマを作り上げてしまい、
それを言い訳に逃げる逃げる。トラウマがこんな風に出てきたのってすごい新鮮やわ。

誰でも、私は悪くない、私って可哀想、って思いたいじゃないですか。
でもそんな自分を認めたくないから目をそらす。私だって目をそらしてる。
全部自分のせいだったりするのに、本当に可哀想で同情の余地ありと思いたい。
そこらへんの心情をはっきりえぐってくるから、笑いながらもえげつないんだよなあ。
こいつらみんな、もしかして私?と思ってしまう恐怖に笑い顔が歪むわ。

普通に小説でも面白かったと思うけど、舞台という装置があって、
こちらも劇を見るように本を読めて、劇を見るように楽しめたのがまた良かった。
無音、って書いてあるところがラストにあって、このシチュエーションで無音かあ、
劇でみてたら息をのむだろうなあ、ってところもあり。更に、ここであくびするのか!とか、
実際見てみたらどんな空気感になってるんだろう、って気になるシーンもあったけど、
そんなことも想像しながら読めて、楽しかった。

でも一度観てみたいなあ、舞台。
| comments(4) | trackbacks(1) | 17:37 | category: 作家別・ま行(本谷有希子) |
コメント
鶴屋南北賞は野田秀樹や三谷幸喜という大御所たちも取った賞で、最年少受賞だそうです。
賞金200万円をもらったと、ラジオで本谷さんが言ってました。
舞台のDVDが出てるみたいやけど、さすがにレンタルはないよね。
| しんちゃん | 2007/12/27 12:44 PM |

はぢめまして、だと多分思います。
書込みしそうな作家さんをいくつか辿ってみましたが、書いたような書いてないような…で、すいません。
あらためまして、本谷氏について。
力強いですね、このヒト。おそらく他人のことを考えつつ、あるいは視野に捕らえつつも本能を優先させて、「ええい、いっちゃえ」ってな感じの人だと思います。
ガツンとくるところがいいのだけれど、この路線のままでは潰れるだろうな、ともエラソウに危惧してます。
| チョロ | 2007/12/27 6:25 PM |

こんにちは。
この本は読んでいないのですが、舞台は見ました。
舞台、よかったです。
わたしの好きな小劇場の女優さんたちの競演といった感じでしたので。
とにかくすごかったんですよ。

この人は人のイタさを容赦なく書く人だと思います。でもまだちょっと照れとかがあるんじゃないかとは作品を見るたびに思います。
またいつも狭い空間の中で物語が繰り広げられてるような印象もあります。
これからも見て行きたい人ではありますが。
| ハルコ | 2007/12/31 11:30 AM |

しんちゃん
わあ、すごい賞なんですね。これで芥川賞とか小説で獲ったりしたらなんだかすごいですよね。
DVDレンタルあったらいいなあ・・・無理かなあ・・・

チョロさん
そですねーがつんがつんと行ってるようでいろいろ計算ずくのような気もします。毎回がつんがつんとやられてしまうので、読むのやめられないんですけど。これからも楽しみに読みますー。

ハルコさん
舞台良かったですか。いいですねえ。私も見たい・・・。
そうですね、イタい作品多いですよね。
確かにデフォルメっぽいところもあるし照れもあるのでしょうかねえ。しかし、これで照れてるんだったらテレがなくなったらどうなるんだって気もします。興味深いところですね。
| ざれこ | 2008/01/06 3:03 AM |

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遭難、本谷 有希子 (2007/05/16)講談社 この商品の詳細を見る この本は戯曲です。 舞台の台本の形式になっております。 登場人物はたったの5人。 4人の先生と、自殺未遂を起こした...
| しんちゃんの買い物帳 | 2007/12/27 12:35 PM |
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