本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「ゴールデンスランバー」伊坂幸太郎
ゴールデンスランバー
ゴールデンスランバー
  • 発売元: 新潮社
  • 価格: ¥ 1,680
  • 発売日: 2007/11/29
  • 売上ランキング: 3005
  • おすすめ度 4.0


伊坂さんの作品は全部面白いんだけれど、
そういえば一番!って何だろうって前から思っていた。
どれもこれも面白いしなあ、でもだからこそ甲乙付けがたいなあ。
東野圭吾では「白夜行」が断然一番だと私は思ってるんだけど(これも人によるだろうな)、
そういうぬきんでたものがないというか、思ってたんだけど。

これは最高傑作でしょう。
「魔王」と「砂漠」を足して2でわって更に1.5倍したような。
「魔王」で見られる重い重いテーマを根底に、
「砂漠」で見られる青春小説の良さを全部詰め込み、
そして「重力ピエロ」で主人公が語る「深刻なことは陽気に伝えるべきなんだよ」のポリシーを
語らずして実践し、更に「ラッシュライフ」で見られる時系列を自在に動く描き方を極め、
「チルドレン」「砂漠」あたりで見られるへんてこな登場人物もちゃんと出てくるし、
そして全編通して見られる洒落た会話はそのまま、しかし今までのアクがとれたような。
集大成にして最高傑作。ファンも喜び、これから伊坂さんを読む人でもこれは楽しめるでしょう。
いやあ、非常に面白かったです。
仙台市で首相が爆殺される事件が発生。その様子は、爆発の時点から
テレビで派手にとりあげられ、翌日には青柳雅春という容疑者があぶり出されていた。
青柳雅春が怪しいという証拠は次々に出てきて、仙台市内の病院では入院患者が
暇にあかせてテレビを見続ける。青柳はそんな中逃走を続けていく。

入院患者が見るテレビを通じて、世間で青柳雅春がどう見られていたかを追い続ける第1章、
そして第2章ではいきなり事件から20年後に飛び、あるノンフィクションライター風の
人間の語りが入る。20年前の首相暗殺について謎めいた示唆が残される。
そうやってさんざん待たされたあと、第3章で当日の青柳雅春が登場する。
外堀から埋めていくこの構成にまず引きつけられる。

青柳雅春はその日、大学時代の友達の森田森吾に呼び出されていた。
学生時代から「森の声が聞こえる」と言うのが口癖で、不思議なことを予言したりしていた
森田森吾が、青柳雅春に警告する。「逃げろ、オズワルドにされるぞ」
そして爆発。警察はいきなり彼を追ってくる。彼はひたすら逃げる。
逃げてあちこち隠れながら、森田森吾や樋口晴子と過ごした大学時代を思い出していく。

一方樋口晴子は主婦になっていたが、青柳雅春の逃走を見て驚く。
彼は昔の恋人だった。彼が犯人のはずがない、直感から晴子も動く。
大学時代を思い出しながら。

青柳雅春の過去、未来、樋口晴子の過去、未来が交互に現れるけれど、
それは章の最初にイラストでマークがあるからわかりやすくなってる。
「ラッシュライフ」を思い出した。

彼らの過去と現在が交錯する逃走劇は、過去の台詞や出来事がうまい具合に現代に
つながっていく展開がすごく面白い上に、すごくいいなあと思ったのは、
青柳雅春が大学時代の思い出にいっぱい助けられているってこと。
逃げてる最中には新しい人にも出会うけど、次々新しい人が都合良く出てきて、って
展開じゃなくて、昔の思い出や昔の人々に助けられているのがすごくいい。
大学の時のサークルのメンバーや、昔の恋人とか、2年前に痴漢から助けたアイドルや、
バイトしていた花火工房の人達とか。そんなところから応援がやってくる。
青柳雅春が今まで生きてきたことが力になって、過去が今に力を与えてくれている。
そんな展開がすごく好きだなあと。もう理屈じゃなくて好きだなあ。と。

どのキャラクターもたってるんだけど、青柳雅春の父親が出てきた時には思わず泣けてしまう。
痴漢が死ぬほど嫌いで痴漢に遭遇したらぼこぼこに殴ってしまうものすごく
破天荒な父親だけど、息子のことはわかってるし、とにかく信じてくれるのだ。
いいよなあ、親って。
それに友達だって、今まで接してきた人達は、自分のこときっとわかってくれてる。
そんな風に思えてすごく元気になれた。悲壮な境遇なのに変だけど・・・

軽妙な会話、荒唐無稽な、痛快な物語なんだけど、物語自体には重みがある。
セキュリティポッドという装置が街のあちこちに置かれている世界は、
現代世界のパラレルワールドで、だからこそ荒唐無稽な展開が可能でもあるんだけど、
極度に管理され、それに異を唱えない人々が住んでいる世界。
誰が我々を管理しているのか?私たちは知らないうちに管理され見張られ、
そして策謀にはまってしまう。いつのまにか大きな何かに取り込まれ、
いつのまにか情報操作され洗脳されていく。
あっというまにテレビに映って英雄になったり、逆に犯罪者になったりしている。
何が起こっているかわからないうちに。
このデフォルメされたパラレルワールド世界を描きながら、
「魔王」でも見られた重いテーマが浮かび上がってくる。
考えろマクガイバー。私たちは何か大きなものに、いつのまにか洗脳されて、
流されていないか?そんなような疑問が、この本から投げかけられている。

いつにまにか法律が変わっている昨今、私たちは流されてないか、
小さな私たちでも、出来ることがあるはず。樋口晴子もほんの小さなことで、
青柳雅春を手伝えたのだから。

爽やかな青春物語であり、痛快な逃亡劇でもあり、後味も最高だし
エンターテイメントとして申し分のない、しかし重い何かを秘めた物語。
一気に読んで構成に酔い展開に酔い、そして読み終わったあと確実に何かが残る。
すごい作品。なんかうまく褒められないんだけどさー。
伊坂さんありがとー。って馴れ馴れしいけど感謝したいような。そんな感じです。

とりあえず、痴漢は死ね!!!・・・と言っておこうかな。
| comments(15) | trackbacks(10) | 00:43 | category: 作家別・あ行(伊坂幸太郎) |
コメント
おお!!
もう読まれたんですか…!
私は伊坂作品の最高傑作は砂漠だと思っていたんですがそれを超えるとは…!
まだちょっと読む予定は無いのですが今から凄い楽しみです。
| 鷲尾 | 2007/12/26 7:16 AM |

こんにちは。
父親、泣けますよね〜。状況は最悪なのに、なんだか温められる話でした。
>最高傑作
確かに!このところ短編が続いていたので、久々に読み応えのある伊坂作品でしたね。色々な作品の要素が詰まってました。
晴子が『陽気なギャング〜』の雪子と似た雰囲気で気持ちよかったです。
| momo | 2007/12/26 7:56 PM |

よ、よみたい・・・・。
すみません、その一言しか・・・。
| つつつ | 2007/12/26 10:01 PM |

はじめまして。
間違いなく伊坂本で1番ですよね。
僕もそう思いました。
帯を読んだときに明るい話ではないと思って、ちょっと不安でしたが、
読んでみたらいつも通り、いつも以上の爽快感でした。
さすがですよね。
| ゆうじ | 2007/12/26 11:04 PM |

理想の父親です。
“痴漢は死ね”私も筆で書いてみたいかも。
奥田英朗の「サウスバウンド」の父親も素敵でしたが、今回の父親は素晴らしい。

周囲に流される正義ではなく、自分で考えた正義。
『選挙権をもっと大事にしないと』と考えさせられました。

| kazumi | 2007/12/28 5:48 PM |

いーよね伊坂作品!オードュボンの祈りもなかなか非現実で面白かったけどゴルスラは現実っぽく非現実で…。。。面白。あとアレだ、早く単行本出ろ。
| 桜 | 2008/01/06 1:44 AM |

鷲尾さん
「砂漠」っぽい味わいもあり、でもいろいろもう集大成でそりゃあ面白いですよ!是非また読んでみてください。

momoさん
なんか久しぶり、と思ったのはきっと前回が短編集だったからですねー。短編も好きだけど、長いとやっぱり充実しますね。いやあ、おとん、よかった!

つつつさん
是非読んでください!私もそれしか(笑)

ゆうじさん
はじめまして。
そうですね、帯暗そうだったから私も「魔王」っぽいのかと思っていましたが、それも含めていろんな要素含めてで、とても面白かったですねー。爽快でしたねー。

kazumiさん
父親出番少ないのにあの存在感。確かに「サウスバウンド」のおとんも彷彿とさせましたね。
そう、選挙権。とりあえず大阪府知事選はどうしたものか(笑)

桜さん
いいですよね!ゴルスラって何かと思いましたが(笑)
アレってなんですかアレって。雑誌か何かで連載してました?
| ざれこ | 2008/01/06 1:52 AM |

長い文うつのがめんどうなのです。本当は単行本ではなく文庫本、とうちたかったのです。あとゴルスラってゴールデンスライムでもいけるよね。…なんかごめんなさい。
| 桜 | 2008/01/06 3:42 AM |

桜さん
ああそうでしたか、こっちこそすいません。
ゴールデンスライムって倒したらいっぱいお金がもらえるやつでしたっけ?(笑)
| ざれこ | 2008/01/13 9:31 PM |

こんにちは。

読み応えがあっておもしろくて最高でした。
伊坂氏の作品のなかで一番読み返したかもしれません。

最近は、話題作の映画・ドラマ化に食傷気味ですが...
いくら話題作といえどもこの作品の映画化は無理でしょうねえ。
本の世界だけで充分楽しめますね。
| るー | 2008/01/23 4:02 PM |

るーさん
そうでしょうか、案外映画化あっさりされそうな予感もするのですが・・・(少なくとも「アヒルと鴨・・」よりは映画化しやすそうです・・)
私も本だけで充分なんですけどねー。とっても、面白かったですね!
| ざれこ | 2008/01/29 11:26 PM |

はじめまして。初めて伊坂幸太郎さんの作品ゴールデンスランバーを読ませてもらったのですが、最後の鎌田昌太という人物が誰なのかいまだに分からずにすっきりしないんです…。誰か教えて下さいm(__)m
| みゆき | 2008/02/01 2:50 AM |

みゆきさん
私も忘れていたので教えて頂きましたが

263ページ
「今頃、赤のオープンカーで、どっか走ってるんじゃないかな」という部分の前後を読めば正体がわかります。
| ざれこ | 2008/02/01 10:21 AM |

不躾ですみませんが教えてください。
首相を暗殺したのは誰なんですか?
| あつし | 2009/07/01 9:00 AM |

こんにちは。
TB送らせていただいたので御挨拶です。
ほんとによかったです。
知らない間に犯人にでっち上げられていたり、セキュリティポッドに街中監視されていたり、冷静に考えると結構怖い話だと思うのですが、読み終わった後嫌な気持ちにならないところがいいですね。
「たいへんよくできました」にうるっときてしまいました。
| 山手のドルフィン | 2009/10/04 1:28 PM |

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