本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「八日目の蝉」角田光代
八日目の蝉
八日目の蝉
  • 発売元: 中央公論新社
  • 価格: ¥ 1,680
  • 発売日: 2007/03
  • 売上ランキング: 1497
  • おすすめ度 4.0


不倫相手の赤ちゃんを一目見ようと家に忍び込んだ希和子。
赤ちゃんは泣き出し、希和子は思わずその子を抱えて逃げてしまう。
自らが産むはずだった子につける名前だった、「薫」と言う名をその娘につけ、
彼女は逃げ続ける。薫と一緒ならどこまでも行ける・・・

角田さん作品はたくさん読んだし、傑作といえるものもたくさんあるんだけど、
それでもこれがダントツに良かった。すばらしかった。
何度も号泣した。泣いて泣いて泣きまくった。
ちょうど私が今の歳で読んだからかもしれない。33歳、独身、子供なし、女。
女であること、を一番考える年代だからかもしれない。

私は今も一人でこれからも一人かもしれないけれど、子どもは産まなくていいのか?
女に生まれたのに子どもを育てて、子どもと人生を分かち合えないなんてそれでいいのか?
結婚も、夫も正直どうでもよくて、男なんかいなくてもやってける、と思うんだけど、
子どもがいなくてもいいのか、その問いはもう根源的な、本能的なものだ。
30歳を超えてから、そんなことを強く考えるようになった。だからこそ、響いたのか。

希和子と薫は本当の親子ではないし、誘拐しているから犯罪だ。
希和子はそれを知っているし、そうとわかってのうのうと暮らしていけるほど
悪人でもない。でもどうしても彼女は、赤ちゃんを手に入れなくてはいられなかった、
その思いが痛いほどわかってしまった。
彼女も「愛する男の子どもが欲しい」とかそういうんじゃないのよね。
ただ、娘を見たら、連れて行かざるを得なかったのだ。

そして彼女は逃げる。犯罪者だからというより、薫との生活を守りたいがためだけに。

新興宗教や立ち退き住宅やらに次々に逃げていく彼女の逃避行、
やっと生活の基盤を築いたと思ったら去っていかないといけない。
そのたびに、薫に見せてやれていない生活や景色を思う希和子は、ただの母だ。
特殊な関係でもなんでもなく、もうこうなったら母と娘だ。
そして彼女達は美しい海に囲まれた街にたどり着く、のだが・・・

後半は娘の視点で描かれるこの物語。希和子との生活が、娘に何を残したのか。
自らのルーツをたどる彼女のこれまた壮絶な人生。「どうして、私なの?」

でもわかってくる。
血のつながりなんかなくても、彼女達はしっかりとつながっているのだ。

母とはなんだ、母性とはなんだ。そんなことをこれでもかと考えた。
希和子が駆け込む新興宗教が女性ばかりの特殊な場所だったということなんかでも、
そのテーマが象徴されていた。

なんだろう、母性って。
私が今切実に感じている何かだろうか。
子どもはかわいい。自分の子どもを育てる自信はないけれど、いつかは
彼及び彼女の人生を私は背負っていかないといけないのだろう。
自分が誰かの人生に影響を与えまくるということ。それは一つの試練なのに、
どうして私はそれを欲してしまうんだろう。

私は希和子を羨ましく思ったのだった。そして深く愛された薫も。

角田さんは本当にうまい作家だと思うしこの小説も構成とかすごくうまいと思うけど、
うまいから感動してるんでもない、女を根源的に理解しているような作品を、
いつも書いていると思う。女であることの黒さも、温かさも、どろどろも、全て。
激しく目を背けたくなりながらも夢中で読む作品もあれば、
この作品みたいにどこかからだの芯の方にまで訴えかけてくるような物語もある。
普段女を忘れて生きている私が、女であることを激しく思い出す。
そんな作品が多い。だから、毎回覚悟して読まないといけないのだった。

これも覚悟して読んで、そして激しく揺さぶられる。
そして考えてしまう本。これから私がどうすればいいのか。
自分がどうしたいと思ってるのか。そんな、普段目をそらしてることを。
すごい影響力にただただ茫然とする私だった。

あーなんか思ったようには感想書けなかったな。こんな文章でしか表現できないけれど、
ものすごく感動したのにな。タクシーの運転手の台詞にすら泣かされ、
海の見える景色を想像しただけでもう泣けるのに。
うまくいかないもんだわ。もうとにかく読んでくれとしか言えないな。

| comments(6) | trackbacks(2) | 23:41 | category: 作家別・か行(角田光代) |
コメント
私は子どもが居るので、また違った気持ちで読みました。

この子達を可愛いと思うのは
「自分の血を引いているから」ではなく
「今まで一緒に居た時間」があるから、だと思っています。
(実験して検証できないのがつらいところですが)

だから、濃密な数年を共にした希和子と薫の関係は本物だし、
数年を奪われてしまった本当の両親と薫との間は
決定的に何かが欠けてしまったままだろう・・・。

宗教施設で最後に別れた女性から
「子どもと離れないであげて」と言われるシーンがありましたよね。
やっぱり「一緒に居る」というのが一番大事なんだろうと思います。

角田さん、ほんとに、深い所をグイグイえぐってきますねぇー。
| つつつ | 2007/12/18 9:38 PM |

はじめまして。突然のコメント失礼します。
この本は前からすごく気になっていたのですが、この年末年始にぜひ読んでみたいと思いました。

私も長く独身でしたが、丁度厄年を過ぎて体の変化を痛感し出した33歳の頃から同じような焦りを感じ出しました。
子供を産みたい、という思いはおそらく体の底からわきあがってくる、動物としての本能の部分なのだと思います。
その頃職場の飲み会で男共の前でうっかりその気持ちを語ってしまい、下卑な冗談のネタにされて傷ついたことは、自分が迂闊だったとはいえ、未だに忘れがたく悔しいです。
一生繁殖活動ができる男たちには、あの切実な焦りは絶対わからないのでしょうね。

結局37歳で結婚、あきらめかけていましたが子供を二人授かり、今は四十路過ぎてオムツ換えに追われる毎日です。

良い本のご紹介、ありがとうございました。
| なかさん | 2007/12/19 9:45 AM |

つつつさん
そうですねえ・・・。産んだけど一緒に過ごしていない子、産んでなくてもともに過ごした子・・・。どっちが自分の子だろう、といわれると難しいでしょうね・・・。やっぱり一緒に過ごした時間が大事だと私も思います。
角田さん、すごいですよね・・・本当、やられました。

なかさんさん
はじめまして。
男性に言ったらそんな風に取られることもあるんですね・・。なんだか哀しいですね。男の人はそういう切実な何かはないのでしょうか。きっと同じだと思うんだけどな・・・。

なかさんさんの経緯は私にも希望を与えます・・。まだ頑張れるかなー。なんかこの歳(33歳)だといろいろ言われるのを通り越して、もう諦められてる節があって、私自身ある種投げやりなのですが。自分のペースで進めばいいですよね。ありがとうございます。

この本、すごくいいと思いますよ。是非読んでみてください。あ、でもお子さんがおられたら、赤ちゃんの実の母の気持ちになってしまうかもしれず、辛いかもしれませんが。
| ざれこ | 2007/12/22 11:23 PM |

角田さんが最近出した本のなかで久々にぐっときた作品でした。
ラストがまぶしかったです。
女性のための小説だし、どの世代で読んでもそれぞれ何か感じるんじゃないでしょうかね。
今年最後にいい本に出会えました.

なかさんのお話、私にも希望を与えてくれました。
既婚者ですが子供いない歴が長いので周りの目や口に傷つくことが多々ありまして..(^^;
マイペースでいることは難しい時もありますが、大事なことだと思って何かある度に自分で納得できているかどうかを考えたりします。

この作品もそんな意味では勇気をもらいましたね。

| るー | 2007/12/25 2:24 PM |

>ざれこさま

今頃書き込み失礼します。
自分の方のブログに、この本の感想をアップしたのですが、こちらの感想にリンクはらせて頂きました。
事後承諾をお願いしてしまい、申し訳ありません。
もしもお嫌でしたら、即訂正いたします。
読んでみて、本当に良かったです。泣けて泣けて仕方ありませんでした。
自分がお局扱いされていた33歳の頃は、まさか10年後に授乳してるとは夢にも思ってませんでしたが、人生はどうなるかわからんもんですねー。

>るーさま
私は結婚したのも遅かったですが、子宮筋腫を持っていて、子供は無理だと思ってました。それが筋腫の摘出手術直前に妊娠が判明。
本当に、子どもは授かりものなんだと思いました・・・(そのわりに今は雑な子育てしてるんですが:汗)。
これは親子関係をメインにしていますが、女性の本能の生かし方を描いた作品だと思います。ご自分の中の愛情を大切に育んで下さいね。
| なかさん | 2008/02/06 6:22 PM |

「この子には私しかいない」
と、言えるのが母性。

「私にはこの子しかいない」

これが母性なのか、もう一度考えてみてください。
| 新米ママ | 2013/04/27 7:59 PM |

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八日目の蝉  角田光代
著者初のサスペンスという文句につられて読んでみました。そうしたらですね、もう参った。ガツンとやられました。家族というものの形、あり方を問うのにこういう方法を取るとは。ある意味えげつない。 全編を通して感じるのは、それが偽りであれ何であれ、あまりにも深
| 今更なんですがの本の話 | 2007/12/21 8:53 PM |
こんにちは(*・∀・*)鐓
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