本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「ピュタゴラスの旅」酒見賢一
発売元: 講談社
発売日: 1991/01
売上ランキング: 717662
おすすめ度 5.0
posted with Socialtunes at 2007/11/07


今入手困難かと。復刊ドットコムで投票行われてます。興味出た方は是非。


「陋巷に在り」全13巻とか、一冊一冊すごいボリュームなのに全然話がすすまずに
全然終わりそうにない「泣き虫弱虫諸葛孔明」とか、
大長編の中国ものを多く書いているイメージのある酒見賢一。
短編集は珍しいんじゃないかな?唯一かな?調べてないけど。
そして驚いたのが現代物を書いていることだった。へえ、書けるんだみたいな(失敬な)。
イメージにないんだよなあ。ギリシャものも2編収録で、それも意外だったし。西洋かあ。

短編って作家の力量がすごく出るような気がするんだけど、ああ短編もうまいなあと思いましたね。
酒見氏の作品は短くても凝縮されていて、そして時間の長さを感じさせられるけど、
今回もそんなようなことを感じました。短くても長さを感じる。短編数頁の世界で終わらない
広がりを感じられる、そういうのがほんまにいい短編やと私は思うので、面白く読みました。


「そしてすべて目に見えないもの」
何やこれ?ミステリを激しく皮肉った内容で笑ってしまいました。
ミステリというか小説全体を皮肉ってるというか・・・だよね。うん。
もともとメタ的な解説ががつがつ入るのが酒見氏の小説なので、驚かずに読みましたが、
これを普通の作家さんがやったら私はキレるかもしれないわー

「ピュタゴラスの旅」
お得意の歴史ものは古代ギリシャでも健在。酒見氏って古代史だよねえ、書くのが。
わかってないことが多くて、発想(妄想?)の余地が広いからだろうか。
超有名だけど何も知らなかった(ピタゴラスの定理ってなんだったっけ?)ピュタゴラスは
生涯を旅して過ごしたそうです。旅にいつも付き従っていた弟子がいたけれど、
彼はピュタゴラスの合理性、数字によって見えてくる世界を見ることを望み、
ピュタゴラス自身は、音楽を奏でることで救われようとしている。
一見全く違うように思える音楽と数学が、これを読んでいるとなんとなく同じもののような、
そして数学でも音楽で救われるような気になるのは不思議です。
彼が見つけた音階、そして彼が見つけられなかった無限の旋律は今街に溢れていて、
私たちを癒しています。共通項の音楽を通じることで、ピュタゴラスの、
そこから引き継がれた我々の人生の旅が想いおこされ、
長い長い時間をそこに感じたような気がしました。

「籖引き」
その村ではくじ引きで犯罪者を決める。何か犯罪が起こったら、全員集まってくじをひくのだ。
支配者として入った異国の男は仰天するが、若い妻はそのしきたりをおもしろがっていて・・。

一番面白かったな。ひねりが効いていて、ぴりっとしている感じで。
この国では、自分が犯罪を犯しても誰かが罰せられる。くじで当たれば自分が罰せられるが。
なのに、犯罪はほとんど起こっていない。実際に犯罪を犯してしまったときに、
誰か他人が罰せられる。それをいたたまれないと思う、まっとうな人間が揃ってこそ、
犯罪が起こらないように出来るんだろうなと思った。
罪とか罰とかについてちょっと考えてしまった。

虐待者たち
現代もの。飼い猫を酷い目に遭わされたサラリーマンが、復讐を決意し、会社を辞める。
ハードボイルドな題材で内容けっこうハードなのに、
猫を量って癒すへんてこなばあさんが出てきたり、
なんだか妙にほのぼのしていたような気がする。
やっぱり酒見氏流の味つけがしてあって、現代ものでも独特なものを感じた。

エピクテトス
エピクテトス、ギリシャのストア派の哲学者らしい。初めて知ったんだけど。
ネロ皇帝の時代、奴隷として売られた彼、奴隷となっても主人にも決して屈せず、
どれだけ痛い目に遭わされても一切屈しない。彼の精神の強さに主人がいつしか従うようになる。
エピクテトスの精神はどんな状況下でも「自由」なんだけど、自由であることの厳しさというか、
そんなことも思い、感慨深いラストだった。
| comments(2) | trackbacks(1) | 13:47 | category: 作家別・さ行(酒見賢一) |
コメント
どうもー。
私は中短編から酒見に入ったので、短編でこそ本領を発揮すると思っています。いえ、大長編もおいしくていいのですけれど。
ちなみに、短編集はもう一冊、ハルキ文庫から『聖母の部隊』というものが出ていますが、こちらも入手は難しいようです。いつもとちょっと違う、熱い酒見が読める珍しいものだけにとても残念です。
| たかこ | 2007/12/04 12:24 AM |

たかこさん
私は長編から入っちゃったからなあ。でも短編でも長編みたいな奥の深さ、凄いですよね。
「聖母の部隊」持ってますよ。古本屋で無理やりみつけたような・・・。読んでみますわ。酒見さん、どうして入手困難本が多いのでしょうね?
それはともかく、この本貸してくださってありがとうございました。おもしろく読めました。
| ざれこ | 2007/12/08 3:00 AM |

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