本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「天使」佐藤亜紀
天使
天使
  • 発売元: 文芸春秋
  • 価格: ¥ 620
  • 発売日: 2005/01
  • 売上ランキング: 133639
  • おすすめ度 4.5


佐藤亜紀という作家は「バルタザールの遍歴」で魅了され、ずっと気になっていて、
今回このシンプルな表紙「天使」を手に取ってみる。
芸がないようでしかし美しい、印象深い表紙である。白地に黒。

舞台は第一次大戦前のウイーン。酒飲みの父に育てられていた少年ジェルジュは、
父の死後、顧問官と名乗る男に引き取られ、ウイーンに渡る。
そこで彼の特殊な能力を鍛えられ、そして彼はいつしか第一次大戦につながる
諜報活動に身を投じていく・・・

いやしかしすんごい難しいんですよ。世界史全然知らないしさ。
かろうじて皇太子暗殺というキーワードで「ああ、第一次大戦か」ってはじめて
わかったっていう難しさで。第二次大戦ならまだわかるけど、第一次大戦って
どことどこが敵同士でしたっけ?この本には時代背景説明一切無し。
国の世情とかそんなことも全然教えてくれないから、ジェルジュって結局どちら側?と
混乱しつつ、でものめりこんで読むことになる。
歴史小説って解説が入るからどうしても客観的というか淡白なものが多い気がするけど
(司馬遼太郎とか)、これはその対極にある、解説を一切廃した、
実に濃密な文章で綴られるドラマ。すっかりはまりこんでしまった。

現地の人が現地時間で書いたようなリアルさがある。
今私が文章を書いたところで、今の世情とか、今どんな時代かとか、
日本は今どんな状況かとか、全然書かないと思うのね。当たり前やから、私にとって。
そういう状況説明を一切排除しているから、その場にいるような臨場感。
私は状況をわかろうとするのを時々諦める。その場その場のシーンの迫力を堪能してると
細かい設定はどうでもよくなってしまうのだ。ふと我にかえって「で?」とページを繰っては、
ジェルジュの置かれた状況を復習してみて(いくつかの手がかりからじっくり読めば
わかるようになっていると思われる。それでもわからないことが多かったけど)、
ああそうか、と思ったりしながら、ゆっくり反芻して、また読む。

彼らの能力についてもほとんど説明がない。五感で感じる以上の何かを感じ取る能力を
ジェルジュは生来持っていて、それは同じ能力を持つ別の人には彼の能力はつぶさに
感じ取れてしまう。能力を隠したり、すさまじい能力を発揮したりしながら、
ジェルジュは切迫した諜報活動の渦にはまっていく。
すさまじい能力を持つ者の孤独。ジェルジュにはいつも影がさしている。

ジェルジュは諜報の中で、様々な魅惑的な人達と出会い、一瞬の情熱的な邂逅を重ねていく。
男性とは激しい友情や憎しみやつながりを、女性とは激しい恋を。
彼ら魅力的な人々との出会い、別れが繰り返され、私は何度もそのドラマに幻惑された。
ジェルジュ本人も、卓越した能力を持ちつつ斜に構えた、憂いのある美男子
(容姿については特に書かれてなかった気がするが美しいに決まっている)で、
私ならずとも女性はみんな虜だろう、と思わせる魅力たっぷりなダークヒーローだが、
出てくる人達の蠱惑的なことといったらもう・・・。すっかり酔いしれてしまったわ。

そして明らかになるジェルジュの秘密・・・、つながりのなさそうなそれぞれの出会いや
出来事がどんどん一つになっていく、物語が収まるところに収まっていくそのぞくぞく感は
たまらなかった。

「雲雀」が姉妹編らしい。もちろん買ってあるので、近いうちに読まないとなー。
やっぱり佐藤亜紀は迫力あって好きやなあ。
| comments(1) | trackbacks(2) | 10:29 | category: 作家別・さ行(佐藤亜紀) |
コメント
ざれこさん、コンバンハ。
佐藤亜紀さんは私も好きです。
読者おいてけぼりみたいな作風も、、。
| indi-book | 2007/11/07 12:57 AM |

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天使
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