本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「本泥棒」マークース・ズーサック/入江真佐子訳
本泥棒
本泥棒
  • 発売元: 早川書房
  • 価格: ¥ 2,310
  • 発売日: 2007/07
  • 売上ランキング: 23288
  • おすすめ度 4.5


語り手は死神。第二次大戦下のドイツで、死神は一人の少女を見かける。
彼女は弟を電車で亡くし、雪の中、母と共にたたずんでいた。
そして少女は母から離され、養父母に預けられる。少女はリーゼルと言って、
文字は読めなかったが、弟の墓に落ちていた1冊の本を盗む。
それが少女の本泥棒のはじまりだった。

墓堀のマニュアルだったその本を、養父のハンスと一緒に読み解き、
少しずつ、言葉を自分のものにしていくリーゼル。
口は悪いが愛情たっぷりの義母のローザ、そして幼なじみの男の子ルディと、
戦争の中日常を送るリーゼル。ある日、父の元にある男性が訪れた。彼はユダヤ人だった・・・
だいぶ前に図書館で借りて読んで、返したんだけど、いまだに図書館にいくたびに
手にとってぱらぱらとページをめくってます。分厚いから厳しいけど、欲しいな・・・
っていうか誰も借りないのかよ。こんなにいい本なのに。
図書館の本にPOP貼れたら貼ってやるのになあ。そんな本です。
楽しくって切なくって哀しいけど、とにかくステキな本。

文字すら読めなかったリーゼルが、少しずつ言葉を覚えて、自分のものにしていって、
防空壕でみんなに本を読んで皆を落ち着かせたり、そんなことができるようになって。
言葉で伝わること、伝えることの大事さすばらしさを知っていくその過程が、
すごく心に染みました。
ユダヤ人のマックスが地下室で、リーゼルの温かい心に答えようと、「わが闘争」を
塗りつぶして(それがまたいろいろ考えさせられちゃって、うまいなあと思った)、
そこにリーゼルに向けての物語を書いて、贈る。
その絵本は飄々としたイラストと簡潔な言葉で綴られているのに、
私はいきなり泣かされました。
言葉が伝えることの深さ、重みを思い知らされるようなそんな絵本。
マックスは養父のハンスに、そしてリーゼルに、命だけでなく心も救われたのだなあ、と
熱くなりながら感じた。まだ中盤だってのにこの感動・・

リーゼルと幼なじみのルディのコンビもとってもステキで。彼らは時々盗みとか
しちゃうんだけど、リーゼルは本を盗んじゃう。飢えてるはずなのに、食べ物より
言葉を、物語を求めるリーゼル。戦争は身も心も飢えさせる。
でも彼らのささやかな、でも大胆な冒険はスリル満点で楽しそうで、戦時中の悲惨さを
時折忘れさせる、日常がそこにあった。
リーゼルのことをよくわかっていて、川に落ちた本を拾いにいくルディ、
すっごいかっこよかった。ルディ、大好きだ。

出てくる人達がみんな魅力的で引き込まれる人ばかり。リーゼルの洗濯屋のお客さんである
市長夫人との経緯もすごく温かくて、そして少し哀しい。
本を読ませてくれる市長夫人、息子を失って外に出ない夫人のその優しさが、
誰かの家に行かないと本が読めないリーゼルの生活が、そんなことが少し、哀しい。
でもみんな全体的に温かい。悲壮感漂う風に戦争を描いていないだけ、
そのにじみ出てくる悲しみが、じんわりと染みてくるのだけど。

分厚い本なのにどのシーンも読ませるし、ラストに至っていくその盛り上がり方が本当に見事。
語り手の死神は途中であっさりラストをばらしてしまったりして、えっ、と思っちゃうけど、
だからこそ先が気になったり、むしろ「もう読みたくない」と思うほど哀しくなったりも
したけれど、そんないろんなことを思いながら逸るようにページを繰ってしまう。
最後まで息もつかせず読み、読み終わって脱力。
ああ、やっぱり戦争なんだ、と強く強く思った。こんなに、すばらしい、世界だったのに。
つらい結末がやってくるんだけど、読後感が悪くてつらい、というのではなかった。
つらくても、このリーゼルがいる世界にいられてよかった、とほのかに温かく思えるような、
そういう物語だ。
読み終わるのに1週間かかったけれど、読みにくいというんではなく、
むしろ読み終わりたくないという気持ちが強かったように思う。
ずっと彼女たちと一緒にいたかった。

読み終わったあとじわじわと、戦争の悲惨さについて考えはじめた。
マックスが描いたあの絵本、防空壕で恐怖に震える人々が、リーゼルの本を読む声に
耳を傾けるシーンなんかが、いつまでも忘れられずに、こびりついている。
日常の中にふいに潜む恐怖、そして破壊。そんなものが戦争なんだろう。
悲惨だ、悲惨だと訴えるものより、日常から突然戦争が自覚される、こういう物語の方が、
あとからじわじわとくる気がする。恐怖や悲しみが。

そんな中でも、どんな状況でも、本が、言葉が勇気をくれる、そんな物語だったので、
哀しくも温かい気持ちで読み終えた。読んでよかった。

| comments(0) | trackbacks(5) | 23:36 | category: 海外・作家別サ行(その他の作家) |
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