本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「黒い時計の旅」スティーヴ・エリクソン/柴田元幸訳
黒い時計の旅 (白水uブックス)
黒い時計の旅 (白水uブックス)
  • 発売元: 白水社
  • 価格: ¥ 1,260
  • 発売日: 2005/08
  • 売上ランキング: 72544
  • おすすめ度 5.0


「本を読む人々。」で翻訳好きの方に激しくオススメされ、メモしていたけれど
なかなか読めずにいた本だ。図書館でふとみかけ、よし、と意を決して借りてきた。
なんとなく読みづらそうな雰囲気が漂っていたので、躊躇してたんだけど、
なんでとっとと読まなかったんだろう。
これを薦めてくれた皆さんにお礼を。いつもいつも読書好きの方々には、
私が全く知らないすごい本をたくさん紹介してもらいまくり、
砂浜でダイヤモンド見つけるみたいなステキな気持ちをもらってます。
そしてその積み重ねは心の財産になっていくと思う、っていうかそうしたいですね。
ありがとうございます。
さて、この物語。背表紙に「ヒトラーが戦争に負けずに生きていたら・・」といった
言葉が書かれており、ヒトラーが勝ってしまった世界を舞台にしたパラレルワールドものか、
と、その程度の認識で読み始めた。
あれ、ヒトラーなんか出てこないよ?とか思っているうちにぐいぐい話にひきこまれ、
ヒトラーなんかもうどうでもよくなったころにやっとこの物語の全貌が現れはじめ、
更に幻惑されて振り回されて、それが不安で心地よい。

真っ白い髪をして産まれてきた少年、ある日母親の足元に男が倒れているのを
見た日から、家に帰らずに船で生活するようになる。いつしか船乗りになった彼だが、
青いドレスの少女をみかけ、彼女を探しに数十年ぶりに陸に降り立つ。
そして母親と再会し、その後母親の命が尽きようかと言う時、また再会、
彼らは思い出の時を遡る。そして、あの日母親のもとで倒れていた男が語り始める・・・

これは、おれとお前の物語だ。

おれは巨人として産まれた。家族からも疎まれていた。そしてある事件をきっかけに、
おれは家族を失いさまよい歩く。身体にある暴力衝動に時折突き動かされながら、
おれは小説を書き、世界を旅し、そして、お前に出会うのだ・・・。

パラレルな世界が交錯し、でもそれは彼の作ったメタ世界なのかなんなのか
わからないままその独特の語りに引き込まれ幻惑されているうちに
物語はぐいぐいと進む。私を世界に巻き込んで進んでいく。
おれの語りは流暢でドラマティックで、思っていた堅苦しい本では全然なく、
吸引力に溢れる文章、とにかく引き込まれる。これは訳も相当すごいと思う。

ヒトラーの時代のその後とか、老いたヒトラーの描写とかとても興味深いし、
複雑に交錯する世界のすばらしさは、もう説明のしようがない、読んでくれとしかいえない。
わからないことばかりだし、全部の謎を解明してこの物語をはっきりさせる意味も感じない。
ただ読んで巻き込まれて酔いしれていたい、そんな本だ。凄まじさをびしびし感じる。

でも一番魅力に感じたのは、これだけ凝りに凝った世界だけど、
すごく単純なラブストーリーでもあったことだ。何もかもを超えて存在する、
強烈な思い。時空も世界も超えていけるそんな思いが全編を貫いていて、
それにとても心揺さぶられた。こんな強い思いを私は知らない。

もうあとは読んで欲しい。これだけ書いてから言うのもなんだけど、
先入観のないまっさらな状態で読んだ方がいいんじゃないかと思う。
| comments(2) | trackbacks(0) | 22:45 | category: 海外・作家別ア行(その他の作家) |
コメント
おお、お読みになったのですね♪
これはホント衝撃でした。訳者の勝利でもあるでしょうが。

でもこれ以外のエリクソンは読みづらい&あまり面白くない、なのですよ。残念です〜。
| multivac | 2007/09/21 1:17 PM |

multivacさん
お久しぶりです。元検証プロジェクトの方々にはお礼に行かないと!と思っていたところでした。これすごく良かったです。衝撃でしたね。
あーでも他の作品は微妙なのですか・・・。たくさん読もうと思ってたんですが・・。ちょっと残念です。
| ざれこ | 2007/09/24 11:30 PM |

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