本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「Self-Reference ENGINE」円城塔
Self-Reference ENGINE (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)
Self-Reference ENGINE (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)
  • 発売元: 早川書房
  • 発売日: 2007/05
  • 売上ランキング: 105763


さて、本を読む人々。SNSでちょっと前にやたら流行っていたこの黄色い本。
黄色いし円城塔って変な著者名だしタイトル英語だし流行ってるしSFだし、
はてにはこの人芥川賞候補にまでなるし大森望も褒めてるし
これはもう読むしかないんだろう、と意を決して図書館に買わせた。
忘れた頃に図書館から届き、読み始める。

わはは・・・全然わからん。なんじゃこりゃ。
わからないのに夢中で読んだ。かなり面白かった。
どうしてわからないのに面白いのか。それすらわからないような。

舞台は、とあるイベントによって時間が破壊され、無数の時間軸、
無数の多元宇宙が乱立するようになってしまった世界。
宇宙にはそれぞれ巨大知性体がいて、彼らが時間を整理しようと演算を繰り広げ、
各知性体同士で争いを繰り返している。過去改変が当たり前の世界で、
ジェイムス、リタ、リチャードといった様々な人々や変な箱、
いろんな個性を持つ知性体達が絡み、断片のような物語が散乱している。

多次元って何、まあつまり四次元以上ってことやけど、と彼氏に聞いてみた(一応理系)
「ないわそんなもん」とけんもほろろ。くだらない男だ。
仕方なく無数の時間軸とかについてこんな風に聞いてみる。
「例えば私が朝駅前でこけて電車乗り遅れたとするやん、するとこけたその時点で
世界が分かれて、こけた私の世界とこけてない私の世界ができて、
こけてない方の私がそのあと電車の事故で死んだとするやん、こけた世界では
私は膝から血い流して生きてて、一方の世界では私は死んでて親が私の賠償金を
鉄道会社からもらったりしてる。そういうのが無数にあるって考えたらええんかな」
必死で聞いたにもかかわらず、「そんなのはどうせないんやからそのSF作家が
好きなように作ってるんやん、俺は知らん」とあしらわれる。まあそれはそうだ。

まあ多分そういう世界でもある(全然それだけではなさそうなんだけど)世界だから、
前の方の章に出てきたジェイムスと後から出てきたジェイムス、
普通の小説なら同じジェイムスなんだけどここで同じジェイムスかと言われたら
全然わからないし、きっと違うんじゃないか、見た目は全く同じでも
別の軸にいて別の人生歩んでるジェイムスじゃないか、
そんな感じで読み進めていくわけで。もう大混乱。

私の想像力の限界の遙か彼方にこの物語があるという印象。
巨大知性体はあまりに発達しすぎて自然と同化してしまってるし、空から話しかけてくるし、
もうそれって神様とどう違うの、とついオカルトじみた感想を持ってしまうし。
知性体が何で戦争してるのかも結局わからないような・・・時間軸一本化して元に戻すため?
それって日本を統一しようって戦国武将が戦うようなものなのかしらん?
・・・・こんなたとえしか出来ない私は到底SF者ではないのだった。

にもかかわらず面白いのはこの語り口。難しすぎる話はあれだったけど、
この人の文章ならいつまででも読んでていいや、って思わせる絶妙のリズム感とセンス、
それが私にどうやら合っていたのか、読むのは苦じゃなく、むしろ楽しかった。

だってさあ、巨大知性体「八丁堀」が出てきたり。彼は知性体には「笑い」がないということで
自分の中にサブキャラ作って実験したりしてるんだけど、「姑キャラを作らなくて良かった」とか
思ってみたりして。つい吹き出してしまう。婿殿!とか言われたかないもんね。

それから一番面白かったのはお祖母さんが亡くなった家の床下から
フロイトが20体出てきたやつかなあ。フロイトってジークムント・フロイトよ。
強面(って本文に書いてあった)の死体。
それを見ながら困ったなあ困ったなあと言っている遺族達。
その絵を想像するだけでいまだに笑えます。フロイト20体がある理由は、
さっきのパラレルワールド説でいいのかなあ。
フロイトだから無意識やら夢やらについて思わず考えたりしてしまった。
流れに関わったりしているのかな?わからなかったが・・・・。

こんな風に各断片が小ネタ満載で読ませる。ディテールがとても面白くて、
だから全然読めた。次々と違う世界が出てくるのも面白い。

最初に出てくるジェイムスとかリタとかが最後にも出てきたので、
「あーやっと同じ世界だ」とかなり安心できたんだけど、ジェイムスとリタを
第三者的立場で見ていた友達の視点が、なんか外からなんですよね。
本の全部を見渡しているというか、メタな視点というか。
それが不思議でもあり、自然なまとまりのようにも思え。
彼は傍観者ということでしょうか、二人の男女に関しても、全部に関しても。
そういえば発掘された日本文書のくだりもそういう外から俯瞰した視線が
あったような気がしたりして、登場人物、登場知性体の視点とともに、
神の視点(つまり小説であれば著者や読者の視点だ)が加わって、
それが本全体を一つにつなげているような、奥行きを増しているような、
不思議な心地がしました。

ジェイムスとかリタを見ていると、どんな時間軸でどんな場所にいても自分は自分、という
しっかりした核があるように感じました。どこにいても「個」は生きている、
そんな登場人物達の気概が、またこの作品の読後感をいいものにしていたのかなと。

ほんま、感覚でしかない感想ですいません。もっと賢そうな感想書きたかったが、私にゃ無理だ。
SF、大変だなあ。奥が深いなあ。そしてこの無限の想像力。人間ってすごいわ。
| comments(2) | trackbacks(2) | 23:08 | category: 作家別・あ行(円城塔) |
コメント
面白かった。
面白かったことは感覚としてよう分かるんやけど、ざれこさんの言わはるとおり、うまいこと感想がかけへん、扱いにくい小説でした。
一緒におんなじ小松左京賞落選本の『虐殺器官』も面白かったですよ。これは感想を言葉にできる本でしたが、おばちゃんはの『Self-Reference ENGINE』のほうが、馬鹿らしくて楽しかったです。
| ナカムラのおばちゃん | 2007/09/01 12:48 PM |

ナカムラのおばちゃんさん
こちらに返事しそびれてました。ごめんなさい。
「虐殺器官」凄いタイトルなんで気にはなってるんですけど。SFって大変ってこの本で思っちゃったので・・・(笑)でもこの本おもしろかったですね。わけわかりませんでしたけど面白い、不思議な魅力です。
| ざれこ | 2007/09/12 1:03 AM |

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