本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「映画篇」金城一紀
映画篇
映画篇
  • 発売元: 集英社
  • 価格: ¥ 1,470
  • 発売日: 2007/07
  • 売上ランキング: 513
  • おすすめ度 5.0


待ちに待った、金城一紀の新刊。真っ白で手に取るのがためらわれるほどの綺麗な本。
読むのもったいなかったけど購入と同時に読んじゃいました。
あーすごく良かった。とにかくものすごく良かった。金城さんやっぱり大好きだー。
すごく深い内容をはらんでるのに、面白いエンタメに仕上げて読ませる読ませる。
これだけとっつきやすくて深くって、誰にでも薦められる作家さんってなかなかいません。
絶対誰が読んでも面白いと思うので是非読んで!とにかく読んで!

ネットで派手に特集組まれてますねえ。シネマナイト気になるー。大阪にもきてー。

特設サイト
TSUTAYA特集(「映画篇」収録映画一覧つき)
映画をテーマにした短編が5つ、いろんな味わいで揃っています。
各短編に共通するのは8月31日に区民会館で開催する「ローマの休日」上映会。
各短編でその上映会の話題が出てくるのですが、最後の短編でその由来が明らかになる、
そういう凝った構成で、ほんま最後まで楽しめます。

宣伝文句、「現実よ、物語の力にひれ伏せ」まさにその通りの作品で、
映画、そしてフィクションというものがどれだけ私たちに力を与えてくれるか、が
すごく伝わるんです。でもただの現実逃避としてのフィクションではない、
本当に力をくれる。希望をくれる。そして現実のつらさを後押ししてくれる。
それをすごくすごく感じました。普段本ばかり読んで映画ばかり見てる私なので、
こういう作品に出会えると本当に嬉しくなる。そう、私だってこの本とかで、
たくさんパワーをもらえましたから。

最初の短編でその姿勢ががつんと示されます。
主人公は最近作家になった男。自分の作品が映画化されることになり、撮影現場に行ったら
そこで朝鮮人学校の同級生の女性に会う。彼女から、中学時代の同級生、
龍一の消息を聞いた彼は、龍一との思い出を少しずつ思い出していく。
龍一と彼は映画が好きで、二人でよく映画を観た。
ブルース・リー、ジャッキー・チェン。現実を忘れさせてくれる、
ぱーっと楽しめるアクション映画を。
そして父のいない二人は、「かっこいい主人公には父親はいないもんだ」と言いながら、
二人で想像して映画を作る。徹夜して、いつまでも。

結局違う道を歩み始めた龍一のために、男は物語を書く。希望溢れる物語を。
その物語の明るさに泣けた。現実がつらくても、物語は何にも負けず、そこにある。
短編の最初からどしんと泣かされてしまった。
金城さんご自身の物語もそこにはあるんだろうか、そんなことも思いながら読んだ。


イントロと、次の短編が一番好きだった。
次のは、いきなり夫に自殺された女性の物語。女性は外に出られなくなっているが、
夫が借りっぱなしにしていたレンタルビデオをやっとの思いで返しに行ったら、
若い男の店員に映画を薦められる。それが大笑いできるおバカ映画。
毎日彼の薦めるおバカ映画を観ているうち、彼女は少しずつ現実に向き合っていく。

彼の作ったおバカな自主映画、それからブルース・リーの戦いに見事後押しされて、
彼女が前に進む様子がすごく良かった。
一見中身の薄そうなドタバタエンタメ映画にも、いやそんな映画だからこそ、
人を元気にすることができる。フィクションの力が身に染みました。

次の短編は犯罪を企む女子高生と巻き込まれる同級生の男の話。
「トゥルーロマンス」はそういえば昔見たような気がするけど、疾走感とかは
その映画によく似た物語だったような。
同級生というだけでつながりのなかった孤独な二人が、少しずつ心を通い合わせていく、
恋愛とも言えるしそれだけでもない二人の関係がすごく良かった。

次はうってかわってハードボイルド復讐劇、と思うんだけど、でかいバイクに乗った
パンチパーマのおばちゃんと、男の子が出会い、バイクで旅をするお話なので、
緊迫感はあまりなくて、微笑ましい雰囲気だったんだけど、でもやっぱりハードボイルド復讐劇。
そのギャップが面白く読めた作品。元になってる映画を知らないのがなあ・・・

で、ラスト。これはまたうってかわって爆笑家族小説でした。
大家族、おじいちゃんが亡くなり意気消沈しているおばあちゃんに、おじいちゃんとの
「思い出の映画」を見せようと、たくさんいる孫達が悪戦苦闘する物語。
孫達、まあつまり従姉妹同士に当たるわけだけど、彼らの会話が子供じみてて
すごく面白くって。レベルが低くってさあ。ぷぷっ。特に主人公の大学生と同年代の
カオルくんとの会話が面白いのよねー。お互い素直じゃなくって。
なんていうか、すごく頭のいい男性が主人公になってる話、理屈っぽいことを考える主人公の話、
で、今回の主人公の大学生みたいに明るく単純な男の話、いろんな主人公の物語を
見事に書き分けていてそれもすごいなーと感心しながら読んでいた。
映画上映で奔走していて出会った女子大生に一目惚れした主人公、さてどうなる、
そして映画は上映できるのか?

これまで哀しい物語がフィクションに助けられるような物語がほとんどだったけど、
今回もそういう要素もありつつまた違って、現実の明るさに助けられるというか、
すこーんと明るい家族もので、最後にこれを持ってきて後味を完璧にしたその構成にも脱帽。
そんな明るい話だけど、最後は何故かしみじみ泣けたりするんだよねえ。

この物語の主人公達のように、私も、冴えない人生送ってて何も良いことないような
気がしている私も、この本でちょっと救われたような気がしました。
現実逃避だと思っていた読書だって、きっと私を後押ししてくれてる、
読んでるだけでパワーが溜まってきてるんだ、きっと。そう信じられる。

ここに出てくる映画は全部観たくなりますね。最近暑くてDVDも観れてない感じですけど、
がんがん観てみたい。古い映画はあまり観てないんだけど、いっぱい観たくなった。
あまり観たいと思わなかったカンフー映画とか気になってきたなあ。
金城さんがブルース・リーが好きなら私だって・・・。(惚れてる?)

| comments(4) | trackbacks(8) | 16:47 | category: 作家別・か行(金城一紀) |
コメント
こんにちは。
金城さんの映画への愛が詰まってましたね。
男は必ずと言っていいほど、カンフー映画を観ています。
ブルース・リーにジャッキー、最近ではジェット・リー。
ざれこさんも、アチョーの世界へいらっしゃい(笑)
| しんちゃん | 2007/08/16 2:17 PM |

こんばんは。
金城さんの新作、待っていた甲斐がありました♪
ローマの休日。家にあるから明日観なおそうかな。
| kazumi | 2007/08/17 9:54 PM |

しんちゃん
ほほうカンフー映画ですか。私はあまり見てないのですが(少林サッカーとカンフーハッスル以外は。笑)この本を読んで見たくなりました。落ち込んだら借りてきて観て、力もらおうと思いますー。

kazumiさん
ほんとう、待っていた甲斐があった、期待を裏切らない素晴らしい作品でしたねー。やっぱり大好きだーと思いました。
ローマの休日は観られましたか?私もまた見たくなりました。
| ざれこ | 2007/08/20 12:53 AM |

ざれこさん、お久しぶりです!
よかったですよね〜。読んでいる私まで物語の力をしっかりもらった気がします。映画っていいなぁ、物語ってすごいなぁ、そしてそれをしっかり伝えるこの本もいいなぁと、しみじみ思いました。
とりあえず、笑えるという「フライングハイ」が気になってます。
| june | 2007/12/13 9:12 PM |

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