本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「ペンギンの憂鬱」アンドレイ・クルコフ/沼田恭子訳
ペンギンの憂鬱
ペンギンの憂鬱
  • 発売元: 新潮社
  • 価格: ¥ 2,100
  • 発売日: 2004/09/29
  • 売上ランキング: 76240
  • おすすめ度 4.5


売れない小説家ヴィクトルは、動物園からもらってきたペンギンのミーシャと
二人で暮らしている。そんな彼に奇妙な仕事の依頼が来た。まだ生きている有名人の、
追悼文を書く仕事だ。新聞記事を見ながらめぼしい人々を追悼する詩的な文章を
綴っていたら、ある時ミーシャという男(<ペンギンじゃないミーシャ>)が訪ねてきて、
友達の追悼文を書いてくれと言う。彼は何度か家にくるようになり、
ペンギンがいるからと4歳の娘のソーニャも連れてくる。
ある頃から、追悼文に書かれた人達が本当に何人か死んでしまい、文章は日の目を見るが、
<ペンギンじゃないミーシャ>は行方をくらました。娘のソーニャをヴィクトルに預けたまま。
少女と男とペンギンの奇妙な生活が始まる。
そしてヴィクトルの周辺では何かが起こっているのだが・・・

新潮クレストブックス、装丁がオシャレだし前から気になってて、特に一番かわいいと
思ったのがこの「ペンギンの憂鬱」。タイトルもかわいいし、とそんな動機で
前から気になってた本。やっと読むことができました。

私ペンギン好きなんですよ。突然だけど。特にペンギンが歩いてるのが好きで、
「○時から ペンギンのお散歩」とか水族館とかで書いてたら、その時間まで絶対待つ。
そして一緒に歩く。子どももいない32歳女がはしゃいで一緒に歩く。
はたから見ていたら涙が出るくらい痛々しい光景だろうが、かまうもんか。
ペンギンって、泳ぐときはすいすいとスムーズに泳ぐのに、歩くとすごくよちよちしてて不器用。
それがすごくけなげでかわいいのよねー。

で、この本もよりによってペンギンを飼ってるあたりでこの本の雰囲気がいい方に転んだと思う。
よちよち歩きのペンギンがずっと主人公やソーニャについてまわってるわけで、
それがすごく雰囲気を作っている。
猫や犬じゃこうはいかない、魚でもこうはいかない、ペンギンだからこそ、
この物語は成立するわけで。
実際ただのペットだと思っていたペンギンのミーシャが、主役級の存在感を示し始める
ストーリーの流れも面白く読みました。

ペンギンと共にいるだけでもすごく飄々としてるんだけど、ヴィクトル周辺で
すごくきなくさいことが起こっているのがわかるのに、彼は本当に他人事みたいに
飄々としていて、彼と現実との間になんだか薄い膜がはられてるようなそんな空気が
ずっと流れていた気がする。それがすごくシュールな雰囲気を醸し出しているような気がする。
だって調べたりとかしないし。普通やばいと思ったらなんとかして調べようとする
(特に小説の主人公なら)、それに警官の友達もいるんだし、彼に調べてもらうとか、
見張ってもらうとか、なんかできるんじゃないか、でもそんな気配すら見せず、
ヴィクトルは警官の友達とペンギンのミーシャと一緒に氷上ピクニックを楽しみ、
ミーシャが氷の下に潜って泳ぐのを眺めたりしている。
別荘に行っても平和にクリスマスとかしたりしている。きな臭さとその平穏さが
絶妙なバランスで、そして更にペンギンもいるのだ。とても飄々とした不思議な物語。

ヴィクトルは家族に慣れてないし、人にも慣れてない。ずっと一人で生きてきて、
最近はペンギンのミーシャと生きてるけど一人だし、いきなり家族が、ソーニャが増えて、
そして友達が増えたりベビーシッターとしてニーナが来たり、ヴィクトルはすごく不器用に、
彼らと疑似家族を作ろうとしている。周りは多分自らの追悼記事が引き金で人が死にまくり、
ものすごくきなくさいのに、彼は普通に孤独に生きている。
むしろ彼の孤独が周りの喧噪を寄せ付けないんだろうか?
ひとりぼっちの男が、よちよち歩きのペンギンみたいに不器用に、
だれかと家族になったり友達になったりしていく姿に、私はそこはかとなく寂しくなった。
飄々としてるけれど、とても寂しい。
だから彼はひとりぼっちのペンギンを思いやれるのだ。
仲間から離され、一人で鏡を見ているペンギンと彼の姿が重なる。

孤独な老人との交流もまた、その寂しさに拍車をかける気がした。

飄々と寂しさが漂うこの作品、でも不思議なことにブラックユーモアにも溢れていて、
ラストに向けて彼の周辺の異常事態がどんどん見えてくるくだりでは
なんだか笑い出したくなってしまう。なんてシュールなんだろう。
読んでみたら、なんだか予想できたお約束的結末ではあるけれどやっぱり笑ってしまった。
笑いの中で、結局彼は孤独に追いやられる。なんてブラックで寂しい結末。

でもそんな漠然とした寂しさを抱えつつ、何故か読み終わっても寂寞とした感じはしなかった。
なんでだろう。結局、孤独ってのは普通に、ただそこにあるのかもしれない。
私たちはそれといかに上手につきあっていくかなんだろう。だからこれは、
案外普通の物語なのかもしれない。

ちょっと寂しいひとりぼっちのペンギンみたいな物語、私は案外大好きでした。

ミーシャはどうなったんだろう?私の家で飼ってあげたい。あんなに暑かったら無理か。
(クーラーが壊れています。ははは・・・)
| comments(0) | trackbacks(2) | 17:27 | category: 海外・シリーズ別(クレストブックス) |
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アンドレイ・クルコフ【ペンギンの憂鬱】
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