本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「俳風三麗花」三田完
俳風三麗花
俳風三麗花
  • 発売元: 文藝春秋
  • 価格: ¥ 2,300
  • 発売日: 2007/04
  • 売上ランキング: 39156


直木賞候補になるまで全然知らなかった作家、作品。
候補発表日に図書館に行ったら普通に置いてあったのでとっとと借りてきた。
表紙もなんだかいい感じだし、受賞するとは思ってなかったけど、面白そうだし。

結果をみてみれば受賞はしなかったが、大本命だった北村氏の作品と並んでの
次点に挙がっていたようだ。そのニュースを知ったのはこれを読んだ後だったから、
さもあらんって感じではあった。だって面白かったんだもの。
きっと選考委員のおじさま達も好きだろうと思うし、若い人も好きだろう、
特に女子はまた別の意味で好きだろうと思う。案外万人受けする作品だ。地味だけどね。

前に千野帽子の「文藝ガーリッシュ」を読み、ガーリッシュと紹介されている本を
数冊読んでなんとなく「ガーリッシュ感」がわかった気になっている私だが、
この本はまさに「ガーリッシュ」、もう少し前に書かれていたら千野帽子も選んだに違いない一冊。
妙齢の女性の恋の恥じらいとか心の揺れとかその若さ故の美しさとかがきらきらしてて、
私の心の奥底に眠っている乙女心が重い腰を上げて出てきてしまった作品でした。
それが上品な文章とまだきなくさくない昭和初期の時代背景と、あと句会という独特の場所の
雰囲気と相まって、なんとも言えない上質な空気を醸し出していました。ステキです。
昭和初期。日本が緩やかに戦争に向かっている頃。父親を亡くしたばかりのちゑは、
父親の友人である俳人暮愁先生の句会に久々に参加すると、そこに20代前半、自分と
同年代の若い女性、壽子もきていた。先生の教え子で女医の卵という、洋装でモダンな
彼女が気になりつつ、ちゑは父を偲ぶ句を詠む。
翌月、舟で句会をしようという粋な催しがあり、舟で接待してくれた美しい芸者松太郎が
即興で詠んだ句に皆感嘆、松太郎も句会に入ることになるが、その後、松太郎と暮愁先生が
二人で歩いているのを見てしまったちゑは、心揺さぶられるのだが・・・。

ちゑ、松太郎、壽子、それぞれの視点での短編が3つ、残る2つは誰が主役でもない短編。
それぞれの女性が、自らの悩みや想いに揺れながらそれをどう俳句にするか試行錯誤して、
そして句会で俳句を詠む、その心理が細やかに描かれてるのがすごく良かったです。
なんていうか、想いが形になるってこういうことか、とも思ったし、
俳句っていう17文字の奥にここまで込められているのか、としみじみもして。
凄いのは、これ俳句は全部著者が書いてるのかなと思うのですが、それぞれなんとなく
それを詠んだ登場人物の性格がにじみ出てるところ。
松太郎は天才肌で奔放、ちゑはきまじめな感じ、といった風に違うし、
それぞれの句の詠み方にもとても個性が出てる。ちゑは一句を推敲していく人だし、
壽子は思いついた句を大量に書いてみて、絞っていくタイプだし。みんな違う。
それにね、門下生はその女性3人だけじゃないのです。博識な人、豪快な人、
それぞれなんとなくその人となりがわかる。
暮愁先生は飄々とした、とても優しそうで温かそうで好感が持てる句を詠むので、
ああ、いい人だなあ、って思うし。
句を詠む、それだけのことでこれだけの個性が描けるというのは本当に凄いし、面白い。

句会ってどうやるか知らなかったんだけど、そこでは、お題が2つほどあって、
皆がそのお題で2つ句を詠んで、それを一箇所に集めて一人が全部清書して、
誰がどれを書いたかわからないように一覧にして、それを今度は皆で選ぶ。
それぞれが選んだ句を読んで、選ばれた人が名乗りをあげる。そういうシステムらしい。
で、三人の女性が思いを込めて詠んだ句が案外選ばれなかったりもして、
どれだけ気持ちがこもっているか読者は知ってるだけに意外に思ったりもして、
私が「いいなあ」と思った句が案外選ばれなかったりもして、
俳句というのは奥が深いというか、まだまだわかってないんだなあと思う。

物語は、ちょっとした日常ミステリ仕立てっぽくなっていて、
各短編ごとにラストでぴりっと締まっている。
壽子が主役になる第三話が特にその傾向が強くて、面白かったな。
壽子がラブレターをもらって、その相手が同級生の女性じゃないかと思って心乱れる話なんだけど、
ちょっと官能的に展開、でもラストには笑ってしまった。
昔は恋文とかでやりとりするから、匿名だと相手もわからないし、文面も趣があるし、
恋文で返歌とかしちゃうわけです、俳句詠みですから。ガーリッシュだなあ、ステキだなあと。
今はメールで誰が送ったかわかっちゃうから、そういうドキドキはないなあ、
情緒もないなあ、と思ったりしました。

第4話では突然句会にやってきたセクハラ野郎をみんなでこらしめたり、と痛快な展開で、
でもその中で暮愁先生が詠んだ句が第5話でじわじわ効いてくる。
最終話ではちゑに縁談が持ち上がる。暮愁先生への気持ちで揺れるちゑ、
そしてラストの句を読んで私はちゑと一緒に動揺し、感動してしまったわ。思わず突っ伏したよ。
暮愁先生・・・・。お慕い申しております・・・(いや私に好かれても)
ちょっと泣いちゃいました。くすん。

少女から女性へ成熟しようとしている、そのほんの一瞬のきらめいてる時を
見事に切りとった切ない物語。ガーリッシュな時は短いけど、
女は妻になっても母になってもきっとその時代は忘れないでしょう、いつまでもね。

俳句好きな男性にも、乙女にも元乙女にも、皆さんにオススメしたい一冊です。是非。

ドラマ化するならね、暮愁先生はね、メッタ斬りのお二人は役所広司と言ってて、彼も悪くないけど、
もうちょっとだけ若くてもいけると思うんだ。
椎名桔平とか、佐々木蔵之介とかどうかな・・・(今悶絶中。どっちが先生でも惚れる!)
| comments(5) | trackbacks(3) | 13:53 | category: 作家別・ま行(その他の作家) |
コメント
こんにちは。
今日読みました。
私も直木賞候補になるまで全く知らない作家さんでしたが、
爽やかで楽しい一冊でした。
全体的に前向きで明るいところが良いですね。
私もヴィジュアル向きの作品だなと思いましたが、
TVの仕事をなさっていた方とのことで納得。
母、祖母ともに俳人だったとのことで、
作中の見事な句もこれまた納得。
| 木曽のあばら屋 | 2007/07/29 10:16 PM |

木曽のあばら屋さん
あ、テレビのお仕事なさってた方なんですか。プロフとか全然読んでなくて知らなかったです。そして俳人一家、全て納得ですわー。なるほど。俳句に性格が出ていて本当見事でしたよね。上手な句は詠めても、いろんな句を詠むのは大変だと思うのです。
最後の句に泣けましたー。そうですね、トーンが明るいのがいいですね。
| ざれこ | 2007/08/01 8:59 PM |

暮愁先生の天に選ばれるか選ばれないかで、一喜一憂してしまうちゑ達の姿にちょっとキュンとしてしまいました。こういう直接的に行かないゆっくりとした恋愛は、かえっていいもんだなあと思ってしまう昨今でした。
暮愁先生は誰がいいですかね。私はうっすら白髪交じりで、丸眼鏡。飄々としたイメージができています。日本のリチャード・ギア…ってなると小泉さん?いや冗談です。
| たまねぎ | 2007/08/15 10:17 AM |

たまねぎさん
私も彼女達が天に選ばれるかどうかどきどきしたりして、選ばれなかったら「あれだけ考えたいい句なのにな」と残念だったりもして、同じくやきもきさせられました。
そうですね、今こういう情緒溢れる恋愛って少なくなっちゃってる気がしますよね。携帯のせいもあって。なんとなく。また別の情緒があるのかもしれませんが。「この絵文字を使うってことは私に気があるってことかしら?」とか・・・(笑)

あーやっぱり丸めがねですかねえ。小泉さんはやだなー・・・(笑)
| ざれこ | 2007/08/20 12:13 AM |

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| - | 2007/08/20 12:46 PM |
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