本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「ふたりジャネット」テリー・ビッスン/中村融編訳
ふたりジャネット
ふたりジャネット
  • 発売元: 河出書房新社
  • 価格: ¥ 1,995
  • 発売日: 2004/02/07
  • 売上ランキング: 188748
  • おすすめ度 4.0


「奇想コレクション」、装丁がすんごいかわいいのです。どれもこれも。
だからついつい気になって、全部ジャケ読みしようかと思ってます。
(買わないからジャケ買いとは言わない。)
で、どれがいいかなーと調べてたら、この「ふたりジャネット」では
「<万能中国人ウィルスン・ウー>シリーズ」なるものが含まれてるらしい。
万能中国人??名前もなんとなく怪しい。ウィルスン・ウーって。
それで、SNSでもお薦めに挙がってたし、ってなことで迷わず読むことに。

いやー期待通りよウィルスン・ウー。面白かったー。
すごいなと思ったのは、「万能中国人」って肩書きも、
例えば「熊が火を発見する」っていう冒頭の短編もね、全然例えじゃないってこと。
隠喩でも暗喩でも、比喩ですらない。まんまなの。
「熊が火を発見する」のよ?何事かと思わないですか?気にならないですか?
冒頭の短編でいきなり「そのまんまやん」と突っ込んだ私は、
もうこの短編集にしてやられてるわけでした。つかみOK。

小粋なほら話が9編収録されています。
SFって言っていいんだろうか、まんまSFって話もあるけれど、
なんというか大人の寓話というか。むちゃくちゃなことが普通に成り立ってて、
でも全然無理を感じないというか、普通にあり得ると思ってしまうというか、
「なんじゃそりゃ」とにやにやしながら楽しめるというか。粋ですわー。

いろんな味わいでどれもこれも面白かったんで、一つ一つ感想書きます。

「熊が火を発見する」
そのまんまです。熊が火を発見してます。それでちょっとした騒ぎになってます。
ある男とその家族、病気の母親や弟や息子の日常と、熊たちのちょっとした交流が
いきがった男の一人称で描かれて。すごく不思議だけどなんかすごくいい話で、
シュールな短編だと思い込んでいた私は最後に少しうっとなりました。
熊たちと過ごすシーンがすごくいいです。温かく、切なくて。

「アンを押してください」
喋りだすキャッシュディスペンサーの話。シュールだ。選択肢が面白い。
台詞だけで進むのも面白い。アンって結局誰なんだよ!?

「未来からきた二人組」
私の好きなタイプのタイムトラベルラブロマンスもの。
同じく奇想コレクションのコニー・ウイリスと似た感じ。
未来から名画を回収にした男と、どうやらこれから名画を描くらしい「あたし」の物語。
そう聞いただけでステキでしょう?

「英国航行中」
なんとイギリスが航海を始めてしまったという奇想天外なお話。
この発想すごいわ。すごすぎる。
英国の片隅で毎日毎日同じ生活を繰り返していた男が、イギリスが動いたことで
アメリカにいる家族が気になりだす・・、そんな物語。
またもやいい話に落ち着いてちょっとうっとなる。
シュールなだけじゃなくて読後感がすごくいいんだよね、この人の話は。
そして、この男がね、イギリスが動いてるのにそれでも毎日同じ生活を
してるところがとっても好き。ずっと本を読んでるのよね。
婦人のダイヤが盗まれたとかそんな本を。その本の中身が交錯するのが
とても面白く感じた。こういう味付けいいなあ。しかも実在の本らしい。
でも、イギリス人だったらもっともっと楽しめるんだろうなとか思う。
政治的なこととかがあまりぴんとこなくて残念。
北方領土を置いたまま日本列島が動き出してしまった、みたいな感じかも。

「ふたりジャネット」
表題作は中身のないほら話。自分の故郷になんと作家が大量に移住してくるという話。
それだけなんだけど、そしてふたりのジャネットに意味があるのかといわれたら
実はそんなにないんだけど、でもなんかすごく面白かった。
翻訳読まないせいで向こうの作家は知らないんだけど、さすがにサリンジャーとか
アーヴィングとかは知ってるからさ、彼らが出て来た時は面白かったな。
「え、サリンジャーも越してきたの?」みたいな。そしてやっと私は、
ここに出てくる作家が全員実在することに気づいたという次第。おもしろ。

「冥界飛行士」
唯一というか真面目な物語で、あーこういうのも書ける人なんだという発見。
目が見えなくなった画家が、怪しげな人物に誘われて、死の世界を体験するようになる。
画家はその間だけ目が見えて、現実に戻ったらそれを見えない目で絵にすることができた。
そして画家はそこの助手の女性とともに、冥界に行くのが習慣になり、そして・・
ブラックなラストが意表をついた(今まで読後感は良かったので)、でも
主人公にしたらこれが最良の結果なのかも知れず。
これまでになく、ひりひりとした孤独、誰かとつながりたい切なさが身に染みた
短編でした。でもどの短編も、シュールな中にヒューマニティ溢れてるよな、
とまた改めて発見したりして。

「穴の中の穴」
さて、この短編集のページ数の半分は万能中国人ウィルスン・ウーシリーズ。
弁護士の俺は車の修理のために(そうそう、この作家は車好きみたいで、
よくタイヤ修理したりしています)、非合法っぽいスクラップ工場に行って
部品を調達するんだけど、そこに最高の友人ウィルスン・ウーが欲しがってた
車の部品を発見。早速彼と車を見に行く。するとウーは他の事が気になって、
スクラップ経営者の小屋を覗くとそこにはとんでもない世界が広がっていた。

ウィルスン・ウーはね、このときは弁護士なんだけど、昔は物理学者だったし
そのあと気象学者にもなるし東洋の漢方にも通じてるしとにかく何でもできる。
そのスケールのでかさだけでもう面白すぎる。
もう理屈じゃなく何でも知ってて、そして何でもかんでも謎の数式で理解しちゃう。
どんなとんでもない状況にあっても、弁護士の俺にその数式をみせて、
「この数式が示してるとおりだよ!」と説明してしまう。
このわけわからん数式がツボでさあ。手書きでのせてくれてるんだけど、
時々漢字とか英単語とかが混じってるの(数式に!)
でもウーからしたらぜーんぶ数式で説明できちゃって、計算があってたら
何でも出来ちゃうのですよ。その数式をしったかぶっちゃう俺とのやりとりもツボで。
にやにや笑いが止まらなかった。

さて、穴の中には何が?これはまた別の話で。(俺の口癖)

「宇宙のはずれ」
「穴の中の穴」の続きで、俺は離婚して今は別の女に夢中なんだけどね、
今度はウーが「宇宙のはずれを発見したぞ」とまた謎の数式をファックスしてきて、
それが俺世界にも影響を及ぼすって話。
今度はウーはなんだっけ、隕石だっけ気象だっけ、なんかそんなのの権威になってます。
地球規模の大変なことが俺周辺で解決するそのおかしさ。

「時間どおりに教会へ」
今度は俺は再婚しようとしてるんだけど、ハネムーン先のニューヨークで、
飛行機は遅れないし電車もバスも遅れないし列も出来ないし店でも待たされない、
という「異常事態」に遭遇する。これが異常事態だってことがまず笑えるんだけど。
そんな中ウーから連絡があって、ウーは今気象学的昆虫学者で、
ハリケーンを止めるために蛾を飼ってたりするんだけど、計算が合わないから
結婚式にいけないとか言ってくる。どうやら時間が狂ってるらしい?
って粗筋紹介するだけで笑えるし。なんじゃそりゃ。
電波ジャックしまくり、電話回線乱しまくりのウーににやにやしまくった。

ということで私としては、
ウィルスン・ウーのシリーズはずーっと読み続けてもいいくらいツボだったし面白かったし、
この温かいユーモアとシュールさに溢れるこの人の短編ならいくらでも読める、
ってくらい気に入りました。
ちょっと訳が読みづらかったかな?でも最後は慣れたのか気にならなかった。

あーでもあんまり出てないんだよね。残念。
きっと「奇想コレクション」って、この手の話がてんこもりだろうから、
いろいろ読んでみようと思います。楽しめそうだ。粋なほら話を期待してます。
| comments(6) | trackbacks(1) | 02:19 | category: 海外・シリーズ別(奇想コレクション) |
コメント
こんにちは。
ウィルソン・ウー、楽しいですよね。
ドラえもんみたいだなと思いました。
身長186cmですけど。
| 木曽のあばら屋 | 2007/07/09 10:57 PM |

木曽のあばら屋さん
わはは、ドラえもんみたいでしたね!何でも出てくるみたいな。でも出してるのは数式だけでしたが。(笑)
そうそう、身長も186センチもあるんですよね。ステキ。
| ざれこ | 2007/07/11 2:02 AM |

こんにちは〜。
私も奇想コレクション好きです!
つい見かけると買ってしまいます。
まだ3冊ですが、全部面白かったですよ。
今度、これ読んでみます!
| momo | 2007/07/12 5:00 PM |

おおー。「ふたりジャネット」、奇想コレクションの中でも1,2を争うぐらい好きです。
表題作は翻訳本好きにはほんとにたまりません〜。

ざれこさんにぜひにとおすすめしたいのは「ページをめくれば」です♪
| りつこ | 2007/07/14 10:22 PM |

momoさん
ですよね、奇想コレクションかわいいですよねー。これが文庫だったら私も迷わず集めているのですが(笑)
これ、面白かったですよ。ウーが最高。

りつこさん
実はりつこさんがオススメしていたから読んだのですよ。ありがとうございましたです。面白かったです〜
表題作は、あまり作家名を知らない私は最初架空の作家かと・・・すいませんです。サリンジャーとかアーヴィングはさすがにわかるのだ。

「ページをめくれば」、是非読んでみますわ。ありがとうです。
| ざれこ | 2007/07/19 10:38 PM |

ざれこさんこんばんは。ウーいいですよね。
最初は普通に面白いなあって程度だったんですが、
シリーズなんだと分かって読み進めるうちに
いつの間にか大好きになっちゃいました。

私はもう最近、奇想コレクションにぞっこんです。
本当に表紙もよくて、読み終わった後に
改めて眺めてなるほどーっとなったり。
不思議のひと触れの表紙が今の所一番好きです。
| たまねぎ | 2008/06/22 10:58 PM |

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ふたりジャネット  テリー・ビッスン
みなさんこんばんは。背中から忍び寄る(もしくは足の裏へと張り付く)じめじめに戦々恐々のたまねぎです。本が湿気を吸わないように小まめに換気しなくては。 さて今月の奇想コレクションはオレンジ色の表紙も鮮やかなテリー・ビッスン著『ふたりジャネット』になります
| 今更なんですがの本の話 | 2008/06/23 12:02 AM |
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