本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「螺鈿迷宮」海堂尊
螺鈿迷宮
螺鈿迷宮
  • 発売元: 角川書店
  • 価格: ¥ 1,680
  • 発売日: 2006/11/30
  • 売上ランキング: 38417
  • おすすめ度 3.5


東城大学医学部で留年を繰り返している天馬大吉。麻雀でおっさんをカモにしたら
逆にカモられ、100万の借金を背負わされた。裏稼業のその男に、借金の代償に、
桜宮病院のボランティアに潜入して、行方不明の男を探ってこいと言われる。
幼なじみの記者、葉子にも言われたその依頼、引き受ける羽目になったが、
行った先では姫宮というドジな看護師に当たり、骨折してその病院に入院する羽目に。
その病院は終末医療に力を入れていたが、それにしても人が死にすぎていた。
謎の双子の医師、小百合とすみれ、そして食わせ物の院長、違う世界に生きている院長の妻、
一筋縄ではいかない桜宮一族の思惑に、天馬大吉は呑み込まれていく・・

「ジェネラル・ルージュの凱旋」がとっても面白いらしいので読む気満々なんだけど、
その前に読んでおいた方がいいのかな?と思って図書館から借りてきた。久々の海堂尊。

「ナイチンゲールの沈黙」と対になる作品みたいで、確か「ナイチンゲール」の方に
今回の舞台の桜宮病院についてもいっぱい書いてた気がするんだけどさ、
ちょっと前に読んでいたものだから細かいことを忘れていて、すんごいストレス溜まった・・・
「ナイチンゲール・・」の自分の感想を読んでいると、えらくこの「螺鈿迷宮」を
楽しみにしているのよねー・・・。当時の自分が何を考えていたかを知りたいわー・・
つうか記憶力なさ過ぎ。覚えてるうちにとっとと読め自分。

これ1冊で話は独立しているしいいんだけど、手元に「ナイチンゲールの沈黙」があると、
関連がわかって楽しいんじゃないかなー。と思う・・・。
あっちにはすみれさんは出てきてたっけな。覚えてないんだよな。

「ナイチンゲール・・」を先に読んでいるから、姫宮の正体は知ってるし、
途中から登場する破天荒な皮膚科医についてももちろん知っている、のだが、
知ってるからこそ楽しめる部分もあり、でも知らなくてもあとで「おおっ」ってなって
面白く読めるだろうな、というのもわかるし、どっちに転んでも面白いのがいいなあ。

なんかでも、ちょっと文章が読みづらくって入りづらかったんだけど。今回急に思った。
文体変えたのかな。いろんな意味で過渡期なのかな。
ストーリー展開も全体的に荒い感じがしたし、テーマも前2作に比べると重い気がした。

桜宮病院では、末期患者と雇用契約を結ぶ。彼らは死ぬ間際まで病院で働く。
そのやり方は結局は褒められたものではなかったけれど、でも病院側の主張、
「人は死ぬまで必要とされたがっている」、
それから時折思い出される、チューブにつながれた天馬くんの祖母の最期。
そんなことを提示して、終末期の医療について考えさせられる展開なんだよね。
なんか考えてしまったわ。私が末期患者でも、それでも動けるんだったら、
私はただ寝てるだけの治療を望むだろうか?
家に帰りたいとか、働きたいとか、思うんじゃないかな。
ただベッドで死を待つなんて怖すぎるし、人って一人じゃ生きてけないし、
誰かに必要とされてなんぼなんじゃないのかな。

著者は作家でもあるけどあくまでも医者であって、現代の医療についてずっと考え続けて、
こんな形で問題提起してるのかも知れない。今回そういう姿勢を強く感じました。
天馬くんが、今までだらだらと医者を目指してきたけど、桜宮病院の院長や
すみれさんから影響を受けて、本格的に医療を志すという、成長物語にも読めたし。
彼の思うことを見続けていくことで、一患者(になる可能性もある)にすぎない私でも、
現代医療の問題点とかを追うことができるってのが、すごく面白く思います。
こうやってフィクションの形で問題を示してくれるとわかりやすいし、いろいろと
気づかせてもらえるよね。フィクションの力ですよね。こういうのは、ほんま。

そういうテーマ設定もあったせいか、過渡期な感じが強くしました。
今後、エンタメとそういう重めの医療がらみのテーマとがうまく融合された作品群が
生まれてくる予感というかそんなものがあって。なんか偉そうですみません。
最後にいくに従って、「罪とは?」って考えちゃうような重いテーマも出てきて、なんつうか、
荒唐無稽なストーリー展開なのにけっこうあちこち重いなあ、と思ったりもしたし。
重心はある一点に置いた方が良かったんじゃないかとは思うけど・・。
ま、だからこそ過渡期なんですが。

それでも姫宮及び皮膚科医の強烈なキャラ設定、桜宮病院の曲者医者達
(すみれさんもやけど、院長がたいがいやなと思った)、もちろん主役の大吉くんも、と、
個性豊かな面々が活き活きしていて、それが作品をひっぱってってます。
相変わらず、強烈なキャラ立ち小説だ。つうか今回は姫宮。あんなに鈍くさいっておかしいし。
ターミネーターとか呼ばれてるし(この著者が、渾名を付けるのがうまいのも相変わらず)。

そして、主役の影が一番薄いのも相変わらずというか・・・。
大吉くんは、いまいちつかみどころのない青年だったなしかし。両親がいないことが
しょっちゅう出てきたけれど、その悲壮感もあまりなく、天真爛漫というか。
が、強烈な個性があって、ものすごく運が悪いという個性を背負わされてるところ。
まあ、あれだけ運が悪いのに生き残れてるってことは・・・?ですがね。
幼なじみの葉子さんとの微妙な関係は気になるところでした。

ラストの1頁がいいわ。どっち?どっちなんだ?いやーな後味が残っちゃいました。
うまいなあ。
| comments(2) | trackbacks(3) | 16:48 | category: 作家別・か行(海堂尊) |
コメント
はじめまして。
いつも楽しく拝見させていただいてます。

何かのインタビュー記事で読んだのですが、『螺鈿迷宮』のほうが『ナイチンゲールの沈黙』よりも先に構想が出来上がっていたようです。
ただ、そこに大きな修正が入ったので、刊行がナイチンゲールよりも後になってしまったらしいです。

版元と編集者がちがうと、こんなにも変わるものかと思いました。
私自身、出版社で働いているので、作品を生かすも殺すも、編集者の腕(だけではないけれど)にかかっているのかなぁと思った次第です。

これからもちょくちょくお邪魔させていただきますね。
| まひこ | 2007/07/04 1:44 PM |

まひこさん
出版社の方ですか。はじめまして。
へえ、こちらが先に出来ていたのですね。
ナイチンゲールの沈黙とあまりにリンクしてるので気づきませんでしたがそういやこれだけ出版社が違うのですね。あの例のシリーズに比べて少し落ちる気がするのはワタシ的には田口公平がいないからだと思っていましたが・・・、まあ素人がこれ以上語るのはやめます。(苦笑)

また遊びに来てくださいね。
| ざれこ | 2007/07/11 1:53 AM |

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『螺鈿迷宮』海堂尊
シェアブログ1152に投稿 終末医療に関して筆者の思うところが、これでもかーーーーっと詰め込まれた感が否めません。 ちょっとおなかいっぱいでゲップが出てきそう…デス… 「死者の言葉に耳を傾けないと、医療は傲慢
| 道草読書のススメ | 2007/07/10 12:36 AM |
「螺鈿迷宮」海堂尊
「螺鈿迷宮」海堂尊(2006)☆☆☆★★ ※[913]、国内、現代、ミステリー、医療 「チームバチスタ」「ナイチンゲールの沈黙」に続く海堂尊のロジカルモンスター、あるいはコードネーム「火喰い鳥」白鳥のシリーズ第三弾。今回は舞台を東城大学医学部付属病院から、
| 図書館で本を借りよう!〜小説・物語〜 | 2007/07/12 12:46 PM |
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