本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「周公旦」酒見賢一
周公旦
周公旦
  • 発売元: 文藝春秋
  • 発売日: 1999/11
  • 売上ランキング: 685352
  • おすすめ度 4.0


※読んだのは文庫版ですが画像がなかったのでこっち貼りました。

高校の頃には東洋史の授業があったのだが、日本史専攻の私はほぼどの授業も
寝ていたのか、記憶がない。先生も子守歌みたいなぼそぼそ喋りの人で、
欠片も面白いと感じなかったのだ。テストで30点取れる程度に一夜漬けした程度。

だから中国史は、社会に出て本を読み始めてからの方が詳しいかも知れない。
文化大革命の頃を描いた「ワイルド・スワン」(内容忘れたが)、
清の衰亡を描いた「蒼穹の昴」、中国と言うのはちょっと微妙だけど
元を描いた「地果て海尽きるまで 小説チンギスハン」、などなど。
中国とは本当に歴史の長い国だなあ、とその度遠い目をしてしまうのだが、
その中でも一番中国史を「面白い!」と思えたのは、
我らが(?)酒見賢一の「泣き虫弱虫諸葛孔明」だ。
三国志は知らないんだけど、あれは私にとって画期的1冊だった。
面白いぞ中国。笑えるぞ中国。

斬新な新解釈で三国時代を描いて笑いを誘う。ふんだんな解説が小説らしくないけど、
でも荒唐無稽な小説でもある。面白いんだよなー。
もしも酒見さんが東洋史の先生だったら、もちろん寝ないで授業聞いたし、
大学で東洋史とか専攻しちゃってたかもしれないなあ。
そういう先生だったら良かったな。

あ、微妙に話がそれてるな。
今回の「周公旦」、人物の名前なんですがそういうわけで私は何も知らず、
「地名?」とか素で思っていました。
ちょっと読んでみたら周という国の武王の弟のこと。
周の「礼」を形作った偉大な人で、後に孔子が影響を受けた人だということでした。
へー。って感じ。あ、でも周ならわかる、多分授業の最初の方だけ
起きてたんでしょう、殷の次が周、この程度は覚えてました。
殷が最初でいいのかな?夏があるのかな。
私は中国2番目の国が周だと覚えていましたが。
ま、いっか、とにかく最初の方、古代ですわ。(ええかげん)

殷を滅ぼした周の武王も偉大な人だったんですが、
その弟の周公旦はどちらかというと文官で、でも武王が早く亡くなり、
次の王が成長するまで周公旦は摂政として政務を行うことになる。
そんな中、身内による乱が起こり、立場が悪くなった周公旦は結局楚に旅立つ。

この著者は小説だけど注釈入りまくりの文体が特色だが、
著者が周公旦に何故興味を持ったか、が最初に記されている。
孔子に影響を与えたからではなくて、楚に逃げたからだと著者は言う。
当時周にとって楚は敵というより、完全に未開の地で、
何もわかってないうえに、伝も全くなかった。
逃げる場所なら他にあるだろう。でも何故楚なのか、と著者は不思議に思う。
この疑問が最初に提示されていたので、それがわかったときには私も一緒に
「おお、そうだったのか」と思うことが出来た。何もなかったら知識もない私は、
疑問もなく素通りしてたに違いない。
そしてこの「楚に行った」ってことが、周公旦の本当のすごさでもあり、
人間的魅力でもあり、酒見氏が描きたかった周公旦の姿なのだった。
その構成には説得力がある。
酒見氏の、一見まどろっこしい解説が入った文章は、
しかしとてもかゆいところに手が届くもので、しかも絶妙なタイミングに
載せてくれるから、読み飛ばせない威力がある。

野蛮で言葉もろくに通じないような楚の国と周の国、そしてひいては広大な
中国大陸一帯をいつしか統一国家として治め得たのは、周公旦が模索した
「礼」の力もあるのだろう。
祀るやり方は違っても、天や地や自然を畏れ敬って祀る、その本質は変わりないからだ。
そのどこででも通じるはずの「礼」を後に体系化した孔子の影響も大だろうと思うけど、
「礼」を整えた功績は中国の歴史の上では大きかったんだろうな、と勝手に推測している。

時代があまりに古すぎて、登場人物の太公望が、計算では120歳くらいまで生きていて、
80歳以上になっても現役でばりばり軍隊を率いていたとか、
(当時寿命って短いはず・・)神話かよ?ってなことも多くあるのだが、
少ない資料をもとに物語にまで持っていってその人物像を浮き上がらせてくれる、
それがすごくロマンだし、面白く思った。

この作品は、同じ酒見賢一の「陋巷に在り」を読む前に読むと、
「陋巷に在り」がわかりやすくなるとたまねぎさんに教えてもらって、それで先に読みました。
今「陋巷に在り」を読んでいますが、直接時代は被ってはいないにしろ、
周公旦の知識があるととっつきやすいところが多いですね。
ありがとうございました。
| comments(2) | trackbacks(0) | 00:50 | category: 作家別・さ行(酒見賢一) |
コメント
ざれこさんがこれほど勧める酒見賢一さん、一度、読んでみます。

よければ、またトラックバックしていただければ・・・。なんか、変な営業のコメントで申し訳ない。
| papas | 2007/06/13 8:26 PM |

ざれこさんこんばんは
私も歴史は弱いのですが酒見さんは大丈夫なのです
陋巷は顔回の魔術的ファンタジーとか
ヨの変化に引き付けられてしまうのですが
孔子の唱える礼というのも意味が大きいんですよね

ところですいません、一つお伺いしたいのですが
もしかしてトラックバックの受信設定を
記事内リンク無しは不可とかに変えられました?

実は赤朽葉とかメロスが送れなくて
おかしいなあと思っていたのですが
メロスはTB頂いたら送れたので
| たまねぎ | 2007/06/13 11:18 PM |

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