本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「猫のゆりかご」カート・ヴォネガット・ジュニア/伊藤典夫訳
猫のゆりかご
猫のゆりかご
  • 発売元: 早川書房
  • 価格: ¥ 630
  • 発売日: 1979/07
  • 売上ランキング: 3695
  • おすすめ度 4.5


著者はヴォガネットだと信じていたらヴォネガットだった。カタカナ弱くてすいません。
最近お亡くなりになってしまったこととか、yomyom vol.1で
爆笑問題の太田が推薦していたこととか、いろいろ小耳に挟んでいたら、
SNSの5月の読書会の課題になり、読むこととなったこの本。
余談だけど私、爆笑問題の太田のナンセンスギャグ好きなんだよね・・・。
最近ちょっと、芸風変わってきちゃったけど・・・。

読んですぐにヴォネガットの有名どころを買いあさりました。
「スローターハウス5」、「タイタンの妖女」、
「ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを」の3冊。代表作を。
なんかすごい面白かったんですよ、この本が。
で、はまりそうな予感がしたもんだから、つい。

でも困った。何がどう魅力的でどう私のツボにはまったのか、どうも説明しづらい。
村上春樹が影響を受けたと言われる作風だし、単に好みなんだろうけど、
この作品の魅力をどう説明したらいいのか、私の貧弱な語彙力からは全く思いつかない。
これは村上春樹作品の感想が非常に書きにくいのと似ているな、自分的には。
そんなこと言われてもなって感じだよな。困った。


わたしはジョーナ。「世界が終末を迎えた日」を執筆していたはずが、いつしか
サン・ロレンゾ島で、ボコノン教徒となっていた。シニカルな世界終末物語。
ってこの粗筋じゃ何がなんだか、ま、いいか。

主人公は原爆が落ちた日に、原爆を作り出した科学者が何をしていたのかを調べている。
そこで彼の息子や娘と知り合う。ボコノン教では「カラース」と呼ばれる人々だ。
カラースは、その人の人生を決定づける人々のこと。国とか宗教とか家族とか、
そういう枠では決まらない、そういう人たち。主人公は彼の息子達の消息を追い、
いつしかサン・ロレンゾ島にたどり着く。

章立ては非常に細かく、時には数行。それが独特のリズムを生み、読みやすく面白い。
章のタイトルがまたなるほどなんだよな。多分読み終わってから目次を読んだら
もう一回筋を具体的に辿れるだろうなと思う。
その面白さもさることながら、SFとして非常にしっかりしたつくりで、オチも鮮やかだし、
物語の骨格がしっかりしていて夢中で読めた。アイス・ナインとかの道具だても魅力的で。

と、表層的なところを読んでいくと愉快で面白いSF話になるのだけど、
それだけじゃあ全然ないところがこの本の魅力なんだよな・・・。深いんだよなあ。
皮肉や風刺に満ちたその軽快な物語の底に、すごく深いものが横たわっていて、
その深刻さと軽快さのギャップというか、そういうのも大きな魅力だったんだけど、
でもそれが全然うまく語れないの。ちょっと降参ってくらい。
つまりわかってないんだろうけど。
深いなあ、ってことだけわかって底に何があるか見えてないっていうか、そんな状態。

わかってもないのに語るのはちょっと違う気もするんだけど、
断片的に思ったことを書いてみる。

原爆を軽く扱っているという批判があったようだけど、私はその軽さがむしろ不気味だった。
原爆を作った人が原爆が落ちた日に普通に暮らしていて、そしてそのあと
アイス・ナインなんて新たな破壊の種を生み出している事実。
原爆もアイス・ナインも、科学者の興味、そういう個人的な部分で
できあがってしまうといったこと、それがすごく不気味で怖かった。
でも結局はそういう風に世界が動いていってるであろうから。
戦争だって、誰かの都合だ、いつも。

ちょっと知ったかぶると、
著者ヴォネガットは第二次大戦中、ドイツの首都圏への無差別爆撃に遭ったらしく、
その時の経験が著作に影響を与えているようだ。ここでは私は残念ながらそれを
読み取りきれなかったけど、確か「スローターハウス5」では色濃く出ているようだ。
彼のその経験が、彼の戦争に対する視線につながっているのかなという気がする。
それは今後、著作を読んで確かめてみたいなと思う。

ボコノン教の教え、さっきも言ったカラースだけど、そこでは国籍も家族も何も、
社会的な縛りは関係なくって、ただ、人にとって影響を与える人という定義がされていて、
それが目から鱗だった。
国とか地域とか会社とか、社会的な縛りにいかに縛られてるか、自分を省みると同時に、
国とか宗教とか関係なく、どこかで人は分かり合える筈なんだよな、と
そんなことを思ったりもした。

ボコノン教のスタンスも面白かった。ボコノン教は島では迫害されてるんだけど、
それは「迫害された方が宗教心が高まる」からわざとやってるんだよね。
宗教ってそういう一面あるよなあ、って思ってしまったわ。日本の歴史でもそうだし、
世界を見てもそうだろうと思う。人にとって宗教って、何だろうね。そんなことを考えたり。

この作品も、キリスト教的知識はいるような気がしたなあ。訳者解説でも
あったけれど、英語圏でないと笑えない部分とかあったりしたらしいし、
文化的差異でわからない部分もあった気はした。それは海外ものを読む上で
仕方ないことではあるけど、もっと私がいろいろ知っていたら、
感覚でわからなくても知識として知っていたらもっとおもしろいんだろうなって
ところはあったのが残念だった。ヴォネガットを何冊か読むことで、
それはすこしずつ染みてくるのだろうか?

でも私たちは日本人だから、原爆と書いてあったら読み流さない、
そこは他の国の人たちの読み方とは違うと思う。彼らにとっては遠い他国の爆撃、
でも私らにとっては、自らの犠牲だ。重みも実感も違うのだから。

とっかかりはエンターテインメント的SFで、小さな章立てとか文章とかも
おもしろみがあり、深刻に見えない。その中にこれでもかと深刻要素を詰め込んで、
些細な一文でふと立ち止まって考えてしまうようなものを書いてしまうってのは
凄いことだと思うし、それが魅力の一つとなって読まれ続けられるんじゃないかなと思う。
悲惨なことを悲惨に書いたって、深刻なことを深刻に書いたって、読む人は限られるし。
でも伝わらなかったら意味がないんじゃ?とも思うけど、でも結局は、
その伝えたいことはその人にゆだねられるのだ。
わからないなりに読んでいて、自分の何かを試されてるような気さえした。怖かった。

あー結局よさがなーんにも伝わってない感想だ。こんなことを言いたいんじゃないような、
でもいくら言葉を尽くしても多分もう、どうしようもない。とほほ。

とにかくこれから読みます。ヴォネガット。

| comments(2) | trackbacks(1) | 23:35 | category: 海外・作家別ア行(その他の作家) |
コメント
あ、すごく懐かしい表紙ですね。たぶん一番読みやすく、解りやすいのは「ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを」だと思います。ぼくの遠い記憶でも、ほかの作品は「わかったような、わからないような」といった感じでした。よほど同時期に読んだ「1984」ジョージ・オーウェルのほうが解りやすかったようなあやふやな記憶が・・。あ、20年くらい前だ。
| すの | 2007/06/05 10:05 PM |

すのさん
ローズウォーターさん、が一番わかりやすいんですね。じゃあ次はそれにしてみます。
わからないなりにもすごく面白くて、きっと好きな作家さんになりそうです。
| ざれこ | 2007/06/11 12:40 AM |

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『猫のゆりかご』
『猫のゆりかご』 カート・ヴォネガット・ジュニア 出版:ハヤカワ文庫 発行年月日
| Albrecht's Alternativity@ココログ | 2007/07/15 11:10 PM |
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