本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「所轄刑事・麻生龍太郎」柴田よしき
所轄刑事・麻生龍太郎
所轄刑事・麻生龍太郎
  • 発売元: 新潮社
  • 価格: ¥ 1,575
  • 発売日: 2007/01/30
  • 売上ランキング: 72435
  • おすすめ度 3.0


RIKOシリーズ、そして「聖なる黒夜」で圧倒的な存在感を見せ付けた麻生龍太郎。
RIKOシリーズでは探偵になっていたが、彼は優秀な刑事であった。
そんな彼の入省1年目、所轄刑事時代に出会った事件の数々を描いた連作短編集。

「聖なる黒夜」で登場した、麻生の大学時代の先輩であり同じく刑事でもある及川、
彼と麻生との愛憎渦巻く過去は「聖なる黒夜」でさんざんにおわされていたから、
私はこの短編集に過剰な期待を持って挑んだ。
同性愛の地獄にはまり込む男二人の濃い関係・・・、それをドロドロと描いて
くれるのかと思っていたのだ。いいのかしらそんなの読んで深みにはまって、
ただでさえ「聖なる黒夜」には徹底的にはまってしまってえらいことだったというのに、
どうしよう私ったら・・・。と一抹の恥じらいと多大な好奇心から鼻息荒く
手に取ったこの本だったが。

あら?普通に連作短編。普通にミステリ。それもかなり質の高い。
私はものすごーく気が抜けて、しかしレベルは高いので、拳を振り上げたが
降ろすところがなかった、みたいな拍子抜け感を味わいつつ、一編一編をじっくり楽しんだ。

及川も登場するんだけど、男同士のどろどろ愛憎にはまだ至っていない二人なので、
不器用に愛を模索しているというか(なんか照れるが)そんな感じで、
その後の彼らの運命を知ってる私からしたら侘しくはなるのだが、
二人にも平穏な時期もあったんだな、と寂しくも温かい気持ちになったりして。
及川は麻生のよき相談相手として、心の支えとしてそこにいた。

人の気持ちがわからない、喜怒哀楽がない、そんなことを気にしている麻生だけれど、
おのおのの事件への解決姿勢はとても人情味あるというか、下町の事件の
人情ある解決がなんだか心に染みるような、そんな事件が5つ。
短いページ数で、でも凝った事件で、麻生の天性の勘が冴える。
麻生は人の心がわからないというけれど、人の心がわかっていないと
その事件は解けなかったんじゃないかな、っていう展開で、それが悲しい事件でも
少しの希望というか温かみというか、そういう後味を残していて、
「大きな靴」とかはほんまにやりきれないようなラストだけど、麻生の感想で
こっちも救われたりとかして。
ああ、きっとこういう優しくて不器用な刑事の像を、麻生を通して描きたかったんだな、
別に同性愛とかドロドロとかきっとどうでも良かったんだな、
そんなことを思って、だから私は気が済んだのだった。麻生、いいな。やっぱり。

柴田さんのミステリは長編だと凝りすぎていっぱいいっぱいになるけれど、
短編だと伏線もちょうどよく張っていて、解決もすっきりしている。
短編の方が読みやすいし、うまさを存分に発揮してると思った。

動物がよく出てくるんだよね。猫とか、犬とか。
「割れた爪」では猫を殺された男の思い出話が出てきて、重大なエピソードだけど
本筋とは違うところなのに、私はつい泣いてしまったし、
犬ネタには弱いので最初の短編でも泣きそうだったし、
最後の短編「大きな靴」では、飼い犬がいきなり人間の手首を運んできちゃうので、
あーうちの犬がこんなの持ってきたら困るな、と苦笑したり。
こちらの喜怒哀楽が揺さぶられて困りました。柴田さんは相当の動物好きだと見た。
それがまた私には非常に好感度が高かったです。

「聖なる黒夜」のドロドロを想定すると拍子抜けだけど、
あそこに至る麻生の優しさ、業の深さが少し垣間見える短編集。
もちろん、ドロドロ好きではないただのミステリ好きにも普通にお薦めです。
| comments(6) | trackbacks(1) | 22:19 | category: 作家別・さ行(柴田よしき) |
コメント
ざれこさん、こんにちはっ♪
>私はこの短編集に過剰な期待を持って挑んだ。

私もそのクチです(*^_^*)
そうか、こんな若き日を送っていたのか…と感慨深かったりもしました。

柴田さん、言われてみれば、動物もよく出てきますね。
気がつかなかった私(^_^;)
| そら | 2007/05/29 9:00 AM |

そらさん
お互い過剰な期待を(笑)。でも、期待は外れてもおもしろかったです、うまいですよね。
犬猫登場しまくってましたよね。私は犬派なのですが、猫話に泣けました。
| ざれこ | 2007/06/02 12:01 AM |

前回は書き込めなかったので再挑戦です。

何ですか、ざれこさん。
私はグっと我慢して一ヶ月一冊方式を守ろうとしていたのに、本家本元が禁を犯してしまうなんて……。(笑)

>柴田さんは相当の動物好きだと見た
日記にもそれを窺わせる記述がありますね。
というか、日記を拝見する限りでは、眩しいぐらいに健全な方で驚かされます。
作家という職業の人はどこかの箍が外れているものと思い込みを、柴田さんが粉砕してくれました。

『聖なる黒夜』への期待が大きくなり過ぎて、それはそれで困ったものだと思っている今日このごろです。^^
| nemuri_neco | 2007/06/11 9:05 AM |

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「所轄刑事・麻生龍太郎」柴田よしき
ちょっと興味を示した次女に、「ディープな世界だから18禁!」と言ったのですが、全然ディープじゃありませんでした(笑) とてもまっとうな(?)ミステリー小説。 ★★★★☆ 麻生龍太郎25歳。 切れのある推
| 日だまりで読書 | 2007/05/29 9:02 AM |
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