本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「ハンニバル・ライジング」トマス・ハリス/高見浩訳
ハンニバル・ライジング 上巻ハンニバル・ライジング 下巻


翻訳は苦手といいながら、トマス・ハリスのハンニバルのシリーズはせっせと読んでいる。
トマス・ハリスの訳は私としては読みづらい翻訳が多いんだけど、でも躊躇せず読む。
それくらい、私とハンニバル・レクターとの出会いは強烈だった。

初めての出会いは映画「羊たちの沈黙」。高校生の時くらいに友達同士集まって、
ビデオレンタルして観たと思う。あんな怖い映画初めて見た。怖くて泣いた。
今見たらそこまで怖くないんだろうけど、当時あんな、人の深層心理にずけずけと踏み込むような
ものはなかったように思う。画期的だった。アンソニー・ホプキンズのアップは怖すぎた。
それで原作を買って読み、全シリーズ、映画も観て原作も読んでを繰り返してきた。
だいたい映画が先やったけど、映画を観てても原作はまた違うものがあって楽しめたし、
人食いの怪人であるハンニバル・レクター博士に私は確かに魅了されたのだった。
悪人だけどただの悪人ではない、何か深い魅力を感じるのだ。私は変なのか?
アンソニー・ホプキンズは怖すぎるけどね。やたら口の中が赤くて、いつも血の色に見えるけど。

そんな私だから、この本も躊躇なく買って躊躇なく読んだ。
どれだけ怖くても、ハンニバル・レクターの幼少、青春時代が読めるとなったら、
そりゃ飛びつく。映画にもなるし。映画を先にするかどうか迷ったけど、先に読んでしまった。

幼少期、リトアニアのレクター城で、両親と妹ミーシャと共に、幸せに暮らしていたハンニバル少年。
しかし、ナチスに追われ、山奥の狩猟ロッジに逃げ込む一家。3年は平穏に過ごしていたが、
ある日軍がやってきて、悲劇が訪れる。誰もいなくなったロッジで、ハンニバルとミーシャは
震えていたが、そこにナチの協力者の男どもがロッジを占拠し、兄妹を拘束する・・・

そこから逃げ切ったハンニバルはその時期の記憶を全て無くしていた。
ミーシャの行方はしれず、ハンニバルは父の兄夫婦に預けられることになる。
叔父の妻である日本人女性、紫夫人の知性と魅力に夢中になるハンニバル。
家にある鎧甲や甲冑、水墨画など、日本文化にも魅了されていく。
そんな中、ある事件を引き金に、ハンニバルの内なる凶暴性が露わになっていく・・

思った以上に単純明快な物語。今までの作品のように心理的圧迫感みたいなものが
みしみしと迫ってくる、という感じは少なく、図式は非常に単純で、
悪役(ん?どっちが悪役なんだろう、ハンニバル側じゃない方)の動きとかは
ちょっと典型的な悪人過ぎて単純すぎないか、とつっこみたくなるところもありましたけど。
このシンプルさ、映画化したら面白いんだろうな、というのを特に感じた作品でした。
まあ、少年ハンニバルはまだまだ青いし、最初から老獪やったらそれこそ怖いから、
この直情さはありなんですけど、でももっと複雑怪奇なストーリー展開を
自分は望んでいたかもなあ。読み終わってから少し拍子抜けした気がしました。
でもこれは今までハンニバルシリーズを読んでいたから思うことで、十分手に汗握ったし、
面白かったですが。

紫夫人との関係も複雑で、彼の理解者である年上女性への憧れ、彼女の彼への思い、
その関係が悲惨な事件をきっかけにどこにたどり着くのか、そこは興味深く読みました。
トンデモ日本女性が出てくるんだろうなと思っていて、まあ実際、どうよ、って
思うところもあったけど、あきらかに間違った日本文化とか、
そういう意味で気になるところは少なかったかな、と。
でも結局、日本刀ってこういうイメージよな、とか、なんで伊達政宗なん、とか、
水墨画を授業中に教室の後で書くのは無理やろ、とか、いろいろ突っ込みつつ読んでたけど・・。
で、結局どうして日本なのかと言われたら原作者の趣味?とか思ったりもして、
(訳者あとがきで理由付けがされてたけど、私はそこまで深読みできなかったので)
ま、ちぐはぐな感じはするけども。舞台が日本ならより面白かったのにな。それは贅沢か。

以下、ネタバレしてないつもりだけど、読んでない人にはさっぱりわからんことを書きます。
どうしても書きたい。ご容赦下さい。

私の記憶の宮殿はレクター博士のと比べるとただのあばら屋、中はとっちらかっていて、
読んだ本は本棚に乱雑に詰め込まれ、中を見たらほとんど白紙、つまり全然覚えてない、
まあそんな状態なので、数年前に読んだ「ハンニバル」もほとんど覚えていない。
そりゃ、映画のラスト付近のあのシーン(テレビ放映ではカットされた、凄すぎて)とかは
いまだに脳裏に焼き付いてるし、クラリスとレクター博士になんかとんでもないことが
あったような、ってところまでは記憶しているが。
あとは、妹ミーシャの思い出が、レクター博士の過去をひもとく重要ファクターだということを、
漠然と覚えているに過ぎない。

だから、幼少期の思い出も、妹ミーシャがキーだということはわかるんだけど、
なんか、ハンニバルの記憶が消えたあたりから、すんごい嫌なオチ、真相を想像してしまい、
ほんまにこんなオチやったら嫌やなーってずーっと思いながら読んでたんだけど・・・。
その予感は見事に当たってしまう。別に自慢ではない。
訳者あとがき曰く、「ハンニバル自身、そして読者すらも誰も予想がつかないこと」
らしいんだけど、気づいちゃう自分ってどれだけ性根腐ってるのか・・・。

ハンニバルがどうしてあんな人になってしまったのか、その過去で説明はつく。
記憶の宮殿の深層心理に刻み込まれたその記憶は、表面に出てこなくても、
彼のその後を決定づけたであろうことは想像がつく。その過去の自分を正当化するために、
彼にはそれが必要だったと思うのだ。・・・・あ、ほんまに何の話かわからんなあ、すんません。

おぞましい真実は明らかになったが、その後はあっさり流れてしまって、ちょっと物足りなかった。
ハンニバルが真実を知った時の驚愕、人格崩壊、そんなものがもっと描かれてたら
すごく読み応えあったんだろうなと思う。そこを掘り下げて欲しかった。

結局は戦争が彼を作ったという話かなあ。戦争の悲惨さはいまさら私が言うまでもないけど、
ハンニバル・レクターほどの怪物を作った理由にしては、平凡に過ぎる、と言っては
人間としてどうかって感じかもしれないけれど、そんな気はしました。

映画は見に行きます。これを読んでから予告編をまじまじ見ましたが、
やっぱり面白そうでした。原作を読んでなお引きつける何かがある。すごいことです。



| comments(2) | trackbacks(2) | 17:01 | category: 海外・作家別ハ行(トマス・ハリス) |
コメント
『レッドドラゴン』からの付き合いのレクター博士ですが、僕は今回は小説はパスして、映画だけ観ました。
ま、トマス・ハリスが脚本書いてるから、同じようなもんやろ、と(笑)。

んで、思ったんですけど、これっていわば人気のあるキャラクターの過去を描く、シリーズもの、特にキャラクターメインのラノベなんかではお馴染みの、いわゆる“外伝”ってやつですな。
つまり、レクター博士萌えのファン向けのためのものであって、これ単体では成立してない。

そういう意味で、どう考えてもこれ(ギャスパー・ウリエル)があれ(アンソニー・ホプキンス)にはならんやろ、というような突っ込みは無用なわけですが、それにしても、映画作るほどのもんでもないなあテレビシリーズとかで十分ちゃうかなあ、と思いつつ、なかなか丁寧に作られてることもあり、結構楽しんでるのは…ま、僕もレクター博士ファンの一人なんでしょうな、とどのつまり(笑)。
| ふゆき | 2007/04/29 2:54 AM |

ふゆきさん
そうそう、ハリス自身が脚本なんですよね、同じやったなあと私も思っちゃいました。ま、映画も見ますけど。

そっかあ、私もレクター博士にキャラ萌えしてるのかあ、と客観的になれてしまいましたわ。変態?でもそういう人もたくさんいるでしょうし、レクターの魅力とはなんとも計り知れないですね・・。恐いですね、ある意味。
| ざれこ | 2007/04/29 12:58 PM |

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