本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「わが悲しき娼婦たちの思い出」ガブリエル・ガルシア=マルケス/木村 榮一訳
わが悲しき娼婦たちの思い出
わが悲しき娼婦たちの思い出
  • 発売元: 新潮社
  • 価格: ¥ 1,890
  • 発売日: 2006/09/28
  • 売上ランキング: 1972
  • おすすめ度 4.5


川端康成「眠れる美女」を読んだ勢いで手にとってみました。
G・ガルシア=マルケスは「百年の孤独」が新装版になったりして、本ブログでも
よく読まれている作家さんですが、私はろくに知らなくて、コロンビアの作家ってのも、
ノーベル文学賞を受賞したというのも本当につい最近知ったところです。お恥ずかしい限り。
で、そのコロンビアの作家のマルケスが、同じくノーベル文学賞受賞の日本の川端康成の
「眠れる美女」に触発されて書いたのが、この「わが悲しき娼婦たちの思い出」のようです。
冒頭には「眠れる美女」の冒頭が引用されています。
「満九十歳の誕生日に、うら若い処女を狂ったように愛して、自分の誕生祝いにしようと考えた」

冒頭の一文だけでもう勝ったようなものですよね、これ。やられたと思いました。
「はい?」とツッコミながら、続きを読まずにいられなくなります。
なんかこの冒頭文だけでもなんとなくユーモラスな感じが漂っていて、
全体として笑わすつもりはないんだろうけどなんか笑ってしまうというか微笑ましいというか・・・。

そして90歳の老人は、なじみの娼館のマダム(確か70代)に頼んで、うら若い処女を
調達してもらいます。娼館に行くと14歳の、胸も膨らんでいない少女はぐっすり眠り、
その横で老人も眠り、そしてその少女に勝手に名前を付け、狂ったように愛し始めます。
少女の面影が彼の部屋を歩き回り、夢に出てきて彼に優しくする、
そんな日々に落ち着かない彼でしたが・・

川端康成作品のオマージュだけあって状況はよく似てるんだが、雰囲気が全然違う。
湿気が違う、湿気が。川端のはじっとりしたなまめかしい感じがすごくしたんだけど、
これは、あっけらかんというか、からっとしてるというか・・。ラテンやねえ。
川端作品を読んだときに感じたいやらしさや不快感、嫌悪感はほとんどなくって、
元気な老人のお茶目な徘徊、とまで言うと言い過ぎかなあ、それくらい違った。
一番違うなあと思ったのが、川端作品は裸体の美女の横で過去ばかり思い出して、
常に後ろ向きで、死が間近に迫った老人の哀切が描かれてたのに対して、
この本では生きる歓びに溢れていたことかなあ。90歳にしてなお女性に恋焦がれて、
そして未来を予感させる終わり、それがもういっそ清々しくて。

老人の立場があまりに日本と違いすぎるのもびっくりしました。
新聞社の物書きという特殊な職業ってのもあるけれど、90歳老人が引退しようと職場を訪れたら、
社内でたくさんの人に引き留められるのです。
引退が許されない90歳!そして引退を許さない社会!
で、彼はそれからも当然のように精力的に仕事をし(ラブレター形式の記事を投稿し続ける)、
彼だけが特別に、べらぼうに長いこと仕事してる、ってわけではなさそうなんですよね・・・。
日本なんて、定年制が伸びてきてるみたいだけど、やっぱり60歳で引退であとは余生って
イメージはまだまだ強いじゃないですか。だからまあ、川端康成の描く老人も、
60代後半でもう諦観しまくりなんだけどさ。根っこの常識から違うんだろうな。
人生観も死生観も全然違うんだろうな。なんかそんなことを思いました。
こんなに老人が元気な国ならいいですね。希望が持てていいなあ。

老境を迎えてもラテンな老人でいたいなあと思いました。
身体はついてかないかもしれないけど、気持ちだけでも。
ま、私は90歳になってうら若き童貞を狂ったように愛したりするつもりはないですが・・・。
(え、生々しすぎ?)

と、なんか日本とコロンビアの違いばかりを思ってしまいましたが、
川端「眠れる美女」を読んだ方も読んでない方も、一度いかがですか、
眠っている美女に恋焦がれる90歳男の気持ちになるのも、悪くはないです。
一世紀もの人生を生きてまだ生きようとする彼に、少し元気をもらいました。
こんな軽い読み方で良かったのかどうかはわかりませんが。
(もっと、高尚な本やと思います。)
| comments(0) | trackbacks(0) | 11:02 | category: 海外・作家別マ行(その他の作家) |
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