本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「その街の今は」柴崎友香
その街の今は
その街の今は
  • 発売元: 新潮社
  • 価格: ¥ 1,260
  • 発売日: 2006/09/28
  • 売上ランキング: 73097
  • おすすめ度 4.5


会社が倒産し、心斎橋界隈のカフェでバイトする28歳の歌ちゃん。
友達と行った初めての合コンで覇気のない男達と過ごしてキレて、飲み直そうと出向いたクラブで
良太郎に出会って酔っていちゃいちゃしてしまうが、本人は覚えていない。
大阪の古い写真を見るのが好きな歌ちゃんが、良太郎やカフェの人達とゆるゆると過ごす
日常を、優しく繊細に描いた物語。

私は大阪生まれ大阪育ちで今も大阪、主人公とも同年代(4つ上って同年代って言わない?)、
そして、著者の柴崎さんとはまさに同年代。
歌ちゃん達の喋ってる大阪弁はそのまま私の大阪弁でほとんど違和感なしで、
ひょっとして柴崎さんって学年一つ上やけど実は同じ高校やったとか、同じ電車乗って
通学してたとかそんなんで、どこかで会ったりとかしてへんかな、と思って
じいっと著者近影を見てみたけど知らん人やった。残念。
同年代な会話がとてもリアルで、歌ちゃんたちが最初の合コンで出会った男達を
「何が楽しくて生きてるかわからへん」とか言ってたけど、
「まさにこんな会話を合コン後にしたことがあるなあ」とか思いつつ読んでました。
しかも多分合コンやってる場所まで似たようなところやったと思う・・・。心斎橋・・。
無口男3人衆と合コン。まあ、大阪の人が全員面白いというのは幻想で、
むしろ、プロ級に面白い人々が一部いるために、面白くない人が目立ってしまうという現象があって、
でも私らもいつもいつもボケツッコミをしてるわけでもないし、別に面白くなくても
普通に話ができたらいいだけなんやけど、それでも喋らない無口な人達やった。
「生きてて何が面白いのん、あの人ら」、確かそんなようなことを終わってから言ってたなあ。
残酷よなあ、私ら。彼らはただ口べたなだけかもしれんし、
私だって何が面白くて生きてるんかようわからんのに。

話は横にそれまくってるけど、
ま、そういうリアルな日常を過ごす歌ちゃんだけど、会社は倒産してて、
カフェで働いてるけど他に仕事を探さなあかん状態で、でもなんとなくだらだらと続けている。
地元の会社で働いているおっちゃんらがやってきていろいろ昔の話をしていく中で、
歌ちゃんは大阪の古い写真を何枚か見る機会があって、それを良太郎と一緒に見たりする。
そういう日常をゆるゆると描いていく。
昔の男がカフェに来たり、良太郎がふらっと来たり、とか、たまに波風はたつけれど、
日常が延々と続いていくだけ。
でも私はなんかすごくじんわりと感動してしまったのです。

このじんわりを伝えるのはすごく難しいんやけど。
大阪の街はすぐに景色が変わる。心斎橋のあたりもすぐに変わる。
いきなり店がつぶれて工事中になって新しい店ができる。そして前にどんな店があったか、
私たちはすぐに忘れてしまう。
でもその時そこにその店があって、その店に通った人達がいて、
そして街を歩いていく人達も時代を経て変わっていくけど、その時確かにその人はいて、
そういう当たり前のことに改めて気づかされて、それがすごく染みたんだよねえ、なんか。
何年も前から私はここを歩いていて、そしてこれからもきっとこの街に来る。
昔は母だって大丸心斎橋店にオシャレして行ってた時代もある、そこからずっとずっと、
大阪の街は変わらずにあって、変わっていく私たちを見ている。
瞬時に消えていくはずの一瞬一瞬が、記録されててもされなくてもどこかで残っている、
そんな感じがして、それは私にはとても嬉しいというか、じんわりくるというか。
・・やっぱりうまくは言えなかったけど。

歌ちゃんは会社が倒産してしまって、失われていくものについて、
そういう感覚を持ったんだと思う。なんとなく、わかる気がする。

でもやっぱり私が地元やからそういうことを思うんかなあ。
例えば、歌ちゃんたちがお茶をしていたソニータワー2階のスタバは、今はもうない。
ソニータワーが消えた時はそりゃあ驚いた。今までがつーんと存在してて、
待ち合わせにいつも利用してたそのタワーが、今は全部工事中。
でも、今はもうないソニータワーで、歌ちゃん達はお茶をしていろいろ話をしていて、
その瞬間は確かにあって、私は彼女たちが写真として撮られてそこにいるような、
不思議な感じがした。もちろん、フィクションってのはわかってるんだけど。
あまりに知ってる場所だから、そういう風に感覚してしまうのでした。

歌ちゃんがふと「あ、今日は阪神が優勝したんやな」と思った日、
私も同じように御堂筋を車で走っていて、「あ、今頃道頓堀に飛び込んでるんかな」と、
渋滞の車からひっかけ橋を覗こうとしてみたことがあった。
同じ瞬間同じ場所で同じようなことを思う、その一体感が嬉しかったりもして。

やっぱりでもこれは、大阪に住んでる私だからこそ思う感想だと思う。
でも、どこの街でも、失われていくもの、新しく出来ていくもの、でも街は変わらずに
そこにある、・・・その感覚は同じだと思う。
たまたま舞台が大阪だっただけで、他の街でも、それは同じことだろうと思う。
| comments(3) | trackbacks(3) | 17:07 | category: 作家別・さ行(柴崎友香) |
コメント
ソニータワー近くに、とんねるずの店がありましたよね。
知らない間に潰れましたが、中学時代に何度か行きました。
そんな事をこの本を読んで思い出しました。
| しんちゃん | 2007/04/09 5:36 PM |

しんちゃん
とんねるずのお店ですか?うわ。覚えてないなあ。
そういえば、私は中学の頃は岸和田あたりまでしか出歩いていませんでした・・(笑)
私もこれを読みつつ、昔の建物をたくさん思い出しましたけど、今のツタヤの場所にあったのはなんだろう、とか、思い出せないところばかりです。寂しいもんですね。確かにあったはずですのに。
| ざれこ | 2007/04/09 11:15 PM |

ざれこさんがおっしゃる通り、じんわりと沁みました。
移り変わる街への思い入れ、分かるなぁ。
子どもの参観日に、学校の廊下に40年前の航空写真が貼ってあって
すっかり色あせたそれを食い入るように見てしまった私です。
だから歌ちゃんの気持ちは分かるけれど、悲しいかな大阪には疎いもので、
もう一つ最後まで入り込むことは出来ませんでした。
東京だったら、完璧だったのに。。。。。

ちなみに歌ちゃんっていう名前、可愛いですねー。
| つつつ | 2008/03/13 9:58 PM |

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