本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「聖なる黒夜」柴田よしき
聖なる黒夜
聖なる黒夜
  • 発売元: 角川書店
  • 価格: ¥ 2,100
  • 発売日: 2002/10
  • 売上ランキング: 173971
  • おすすめ度 4.5


私は単行本で読みましたが、文庫が出ています(上下巻)。

暴力団春日組の大物、韮崎が殺害された。ホテルの一室で浴槽で首を切られて。
警視庁の殺人課の麻生龍太郎は現場に出向き、暴力団担当の捜査四課の及川と
二人で現場を検分する。抗争か、怨恨か?
そして捜査線上に韮崎の舎弟でイースト興業という会社を任されている男、
山内練の名前があがってきて、麻生は彼に会いに行くが、そこで麻生はその山内が、
10年前に自分が逮捕した男だと気づく。
しかし、彼を聴取した際の記憶は麻生の中で遠くかすんでいた・・・。

麻生と山内、韮崎、及川、彼らの愛憎を描いたサスペンス長編。
昨年読んだ、保育士探偵花咲慎一郎シリーズにインテリヤクザ山内練が登場していて、
シリーズを貸してくれてた職場の人が、「聖なる黒夜」がいかに面白いかを力説、
私も花咲シリーズで一番気になるキャラが山内だったため、それを読まんがために
保育士シリーズを頑張って読破した。

実はあのシリーズは、借りたから読んだもののあまり乗れなかった。
山内の悪人ぶりは気に入ったが、主役の花ちゃんがいい人過ぎたりとかして
私にはちょっと物足りなかったんだよね・・・。
私ってどちらかというと爽やか系より、過去にトラウマを持ってたり、
ずっと一途に誰かを愛しちゃってたりして、影を背負ってる男が好きなのよ。
(もちろんフィクションの話)
で、今回はそういう私好みのトラウマ男達がうようよ出てきて影だらけ。
見事すっかりはまっちゃったのでした。
今、麻生と山内が出てる「RIKOシリーズ」をせっせと読破中ですから、なんせ。

正直、今までBLとか、そこまで興味なかったし、この作品もBLな要素が読みたいから
手に取ったわけではなかったんだけど、BLが好きな人の気持ち(三浦しをんとか)が
この本を読んでわかってしまった。いや、ボーイズラブなんて可愛いもんじゃないけどね、彼ら。
「ボーイズ」とかカタカナの「ラブ」とかいう語感とは一番縁遠い物語でしたが、
他にどう呼んだらいいもんだかわからず。
愛と憎しみにまみれた熟年男達やし・・・・。濃すぎる・・・。
しかもハードな性描写も満載、ちょっと18歳未満にはオススメできない感じ。

しかし、男女の恋愛でこれだけ自分が夢中になって読むかどうかは微妙かもしれん。
男って思いこんだら熱いし女みたいに駆け引きしたりはないけど、
執念深いからこじれるときはとことんこじれるというか、こんなにどろどろしたものが次々と
露呈されていくのにもう目が離せないというか、もう・・・!(興奮しすぎ)

現在の韮崎殺人事件と、山内の過去が交互に描かれる構成で、
その緻密かつ計算され尽くした構成がまずこの作品の魅力でもある。
山内と麻生が初めて出会った10年前から、彼らの運命の歯車は狂いはじめて、
大学院生だった彼が刑務所に入り、男達に毎晩のように犯され、出所してからも結局は
身体を売るしか道がなくなり、そして絶望の底で出会ったのが韮崎だった。

そして麻生は、山内を捕まえた経緯をほとんど忘れていたが、それでも山内が気になってしまう。
麻生は及川の大学の後輩だが、及川とも複雑な関係で、妻には数年前に逃げられ、
今は小料理屋の槇という女将と、ささやかな幸せを作りつつある。
しかし山内の存在が彼の中でどんどん大きくなっていく。

人との出会いが人の運命を決め、翻弄していく。山内を見ているとそう思う。
麻生や韮崎との出会いが彼を決定的に変えていってしまう。
そして麻生も、彼との再会によって、自分の原罪を知り、真面目な彼はそれを許せない。
贖罪なのか、それとも愛なのか、憎しみなのか・・・。彼らの関係は刻一刻と動いていく。

彼らの心理はすごく複雑で、愛してるんだか憎んでるんだかわからないようなことも
特に山内はやってしまったりするんだけど、山内にもわからないのだ、自分が麻生を
愛しているのか憎んでいるのかすら。それでもその想いは暴走し、二人の人生を狂わせる。
その狂おしいまでの二人の関係を見てると、男とか女とかどうでもいい、人が人を
真摯に憎んだり愛したりする、その熱情を切なく思ってしまう。
こんなに誰かを思ったことがあっただろうか、私に。こんなに熱く激しく。
これは見事な恋愛小説なのだ。

及川がまた濃くて、山内と麻生だけでいっぱいいっぱいな私に追い打ちをかけるが、
彼の存在がまた作品に色濃い影を落とし、深みを増している。濃すぎる・・・・。

事件の方は、韮崎に愛人が男女問わず何人もいて(山内もその1人)、
更にあちこちでやたら恨まれているので、容疑者は山ほどいて、それぞれの事情が錯綜する。
事件は相当に複雑な様相を見せ、一見関係のない事件が次々につながっていく様は、
さすが柴田よしき、とうならされるものがあり、
ミステリ部分は正直どうでもよくって、人間模様とか、熱い恋愛模様が読みたいねん。
と思っていた私でも、引っ張られて読めるほどでした。
でも、全部つながるからいいねんけど、あれやこれやと要素が多すぎて、
私の小さな脳みそはパンク寸前でしたわ。保育士探偵の時からちょっと思ってましたが、
柴田さん、ちょっと凝りすぎなんだよな・・・。もう一要素くらい減らしても、
読み応えは十分じゃないかと思いました。
犯人、途中で見当がついてしまって、「あ、可哀想に」とは思ったな・・・。ついてないよね・・

今「RIKO」のシリーズを読んでますけど、保育士探偵シリーズもそうやけどさ、
ミステリとして小説としてうまいけど、私は最近火曜サスペンス系のミステリには
もうあまりおもしろみを感じない人なんで、そこまで思い入れはないんだけど、
それでもこれだけ夢中で読むってのは、ひとえに山内と麻生のキャラが
魅力的だったからなんだよね。
山内と麻生を生みだしてくれてありがとうといいたいです。

こんな感想を熱心に書いて、今これ読んでる人で引いてる人もおるんやろうなー。
私もこの歳になってキャラ萌えするとは思ってもなかったですよ、しかもこのジャンルで。
はあ、やられたわ。
多分女性向けなのかもしれないけど、ミステリ的読み応えや人間ドラマの濃さ、
人間の原罪とは何か、人の運命とは何か、といった重いテーマ設定を考えると、
男性でも薦められるかな、と思います。ハード性描写でひかなければ・・・。

ところで、高橋克典主演で保育士探偵がドラマ化されたとき、山内を演じていたのは
なんと吹越満でした。
あの役者さんは嫌いじゃないし、むしろあの小悪党っぷり、いいよねー、と思ってるが、
山内はあかんやろー。もう全然あかん。もう、別人で別設定と考えるしかないね。
シリーズちゃんと読まずにドラマ作りやがったな。ドラマ制作部。
映像が想像力を縛ること、そして読者の私らのイメージを壊すことについて
彼らはもっと責任を感じやがれよ、と思います。

あ、でもこの小説は実写化はやめてほしいねんな。どんな役者でも困るねん、実写は・・・。うう。
| comments(3) | trackbacks(2) | 11:58 | category: 作家別・さ行(柴田よしき) |
コメント
はじめまして。
以前からおじゃまさせていただいていました。
山内練のことが書かれていて、思わずコメントせずにはいられなくなって
しまいました。
私も彼の大ファンなんです。

私もこの作品は映像化して欲しくないです。
誰がやっても違う!と思ってしまいそうで・・・。
吹越さんも好きな役者さんですが、どう考えても彼じゃないですよね。(^^;

「RIKOシリーズ」も過激な描写が多いので、あまり人には薦められませんが
実は大好きな作品です。
ストーリーそのものより、人物にすごく惹かれてしまいます。
| hitori | 2007/04/06 5:41 PM |

ざれこさん、お久しぶりです♪
そうそう、この作品、やっぱり18禁だよね〜と思ったのでした(*^_^*)
だけど山内練はなぜか気になる人物なのです。

『RIKO』…すごく懐かしい気持ちになります。いや〜、これを読んだときも、ど〜しようかと思ったよ(*^_^*)
| そら | 2007/04/07 10:11 PM |

hitoriさん
はじめまして。そちらの記事を読んで「文庫版には番外編の短編が!!」と憤ってる私です・・・。ち、文庫買えばよかった・・・。
山内は、保育士探偵読んでるときのイメージは伊勢谷友介でしたが、これの実写版は想像を絶するので封印しました(苦笑)

「RIKO」シリーズも読みました。私は緑子にあまりはまれなかったですけど、麻生と山内のその後にはもう・・・!(興奮中)

そらさん
18禁ですよね・・・。私ですら刺激が強かったですよ。はは・・。
山内練気になりますよね。RIKOシリーズを読んで更に好きになってしまいました・・。RIKOシリーズもしっかり18禁でしたね。いやはや(笑)
| ざれこ | 2007/04/09 11:27 PM |

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「聖なる黒夜」上・下 柴田よしき
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| 日だまりで読書 | 2007/04/07 10:13 PM |
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| 時間とお金があったら本が読みたい | 2007/08/24 10:21 AM |
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