本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「最後のウィネベーゴ」コニー・ウイリス/大森望訳
最後のウィネベーゴ
最後のウィネベーゴ
  • 発売元: 河出書房新社
  • 価格: ¥ 1,995
  • 発売日: 2006/12/08
  • 売上ランキング: 31047
  • おすすめ度 4.0


最近SFをよく読むようになった。SFって、作品世界に入り込むのに時間がかかる。
その世界は現実世界と少し違うんだろうけどどこが違うのか最初わからないから、
把握するのに戸惑うんだよなあ。だからちょっと苦手。だいぶ克服したけど。
でも、今回は短編だから、最初のうちにその世界にうまく潜り込めないと大変、
それに翻訳ものときた。うーん、苦手の二重構造。でもこの表紙はどうしても気になって、
手に取りたくてうずうず。犬には弱いのです。はい。

コニー・ウイリスは「犬は勘定に入れません」で面識があって、あれもSFだけど
タイムスリップSFですごく面白くて、大森望氏の訳も読みやすくて、
免疫があるしきっと大丈夫、と思ってたら、予想通り当たりでした。面白かったー

でも前作ではあまり思わなかったんですけど、
「コニー・ウイリスって女だったんだ」って今回しみじみと感じました。
知識としては知ってたんですけど。
冒頭はいかにも女視点!なぴりっとした短編からはじまり、
次の2作品は主婦SFとでもいいましょうか、生活感にじみまくりなのにちゃんとSF、
ちゃんと不思議、そしてキュートなラブコメにもなっていて、なんか目から鱗でした。
でもラストの短編ではしんみりと訴えかけるものがあり、一転してちょっと泣けてきたり・・。
自在に語り口調を変えていろんな風味を見せてくれる、著者の懐の深さがよくわかる、
盛りだくさんの短編集でした。
って、大森望氏も似たようなこと書いてたけど。許してね・・・

一編ずついきますか。

「女王様でも」
これ、しばらく話の展開についてけなかったんですけど、
ラストまでいくとやっとここがどんな世界か見えてきます。
あーSFってこういう楽しみ方もあるなーっていう新たな発見でした。
どんな世界だっていいんだから、その世界のあり方そのものを謎にしてしまって、
最後まで引っ張ることもできるんだなと。だからどんな世界かわからないからって
いらいらしちゃったりするのはちょっと早いよなあ、と。落ち着いて楽しもうと思ったり。
そういう意味ではちょっとしたミステリとしても読めるし、うまいですねえ。
タイトルも読んでからみてみるとにやりとしてしまいます。

つうか、こんな世の中来て欲しいような、来て欲しくないような。
あーでもやっぱり来て欲しいか?私らこんな大変な思いをしてるんだー、と
ふと実感してしまいました。割に合わんぞー。

「タイムアウト」
ちょっと新しい概念のタイムスリップもの。時間を粒子として考えてしまうところが
なんか新しくって、それで起こってしまう現象もなんか新しいというか、
へえ、そういう移動の仕方もあるかーみたいな。ま、普段SF読んでないだけやけど。

主婦が主役の1人なんですけど、彼女の家族が習い事とか進学とか会社とかで
本当に好き勝手に動いていて、それに振り回されている様はものすごくリアルでした。
主婦ってそうよね、聖徳太子みたいにたくさんの声が聞こえてて、
それに普通に同時に対応する。すごいよねえ。私にできるかねえ。
「お前ら黙れ、てめえで作れ、てめえでやれ」と怒ってしまいそう。
でもやってのけるんだよな、普通に。

そんな普通の生活にやってくるのがタイムマシン。小さな狭い音楽室で、
40代の男と主婦は実験のために出会い、そして男は初対面のはずの女を「知って」いた・・・
さて、彼らに何が起こるのか。中年の危機、と訳されるその状態で過ごす40代達が
まだまだ懲りずに恋をする様をおかしげにそしていとおしげに描いたラブコメ、
3作目には及びませんでしたが、面白かったです。

「スパイス・ポグロム」
これが何故か一番好きなんだよねー。
日本製?の宇宙都市に住む女性(すいません、さっきから登場人物の名前を
全部忘れてて・・。これだからカタカナ名は。あ、思い出した、クリスだっけ?)、
婚約者に頼まれて宇宙人を一人家に預かる羽目になるんだけど、彼女のマンションは
地球から来た人々で溢れかえっていた。だけど宇宙人はものをいっぱい買ってくるし、
今度は謎の男まで連れてきてしまい、彼にクリスの部屋で寝るように言うのだが・・

スピルバーグにスカウトされようとやってきた少女2人、見た目は天使なのに
中身は悪魔な彼女達やその他個性的な住人達がうろうろする中、
クリスはその男性(あー名前が出てこない。ピートかな?)と少しずつ話し、
打ち解けていくんだけど、いざ二人きりにって思ってもしっかり誰かの邪魔が入る。
でも宇宙人がくれた謎のペンダントで、お互いの心の声が聞こえだして、
二人の気持ちはぐっと近づいてくる。婚約者も邪魔だし住人はてんやわんや、
さて、二人の恋は?
ちょっとドタバタなSFで、でもやってくる宇宙人はキュートで何か企んでるし、
(彼の名前は覚えられなくて当然だからいいのです)、二人の恋がどうなるかに
目が離せない、ちょっと胸がキュンとなる王道ラブコメでした。好き、これは好き。

しかしオチがいまいちわからんかった。悔しい。

「最後のウィネベーゴ」
一転してしんみりと描かれるこの短編。動物愛護協会が狂信的になっている世界、
道路でジャッカルの死体を見ては昔死んだ犬に想いをはせつつ、
カメラマンの彼は車を走らせる。たどり着いたのは最後のウィネベーゴ。
現代と思い出を行きつ戻りつする彼の思考を追いながら、いなくなった犬達への
哀しみが身に染みていく。

滅んでいくものたちへの哀悼、切なさやりきれなさ、そんなものがしみじみと
伝わってくる作品でした。犬が好きだったら涙なしに読めない。
最後にケイティが言った言葉を何度も読み返してしまいました。
もう戻れない時にやっぱり戻ってしまう、そしてなくしたものを見つめて
言葉を失ってしまう、そんな悲しみが迫ってきました。
あうう、最後に読むにはちょっと切なかったけど、
切なさだけではないなんかしんみりとした柔らかい雪のような感触が、
私を包んだ気がしました。読んでよかった。
| comments(8) | trackbacks(6) | 22:14 | category: 海外・作家別ア行(コニー・ウイリス) |
コメント
私も「スパイス〜」が一番好きです。
でも、確かにオチがわかりづらいですよね。

「最後の〜」は文字通り最後だから、余計にしんみりしちゃいますよね。
これだけが1冊になってても良い感じがするくらい良いお話ですよね。
| chiro | 2007/03/16 10:07 PM |

読まれましたか、読みましたよ。
私あんまりコニー・ウィリスは、得意ではないのですが、
(なんか、あまりにも女性っぽ過ぎて、、。)
この短編集は、割と楽しめました。
表題にもなっているラストの作品が、じんわりと色んなものが感じられて良かったです。 
| indi-book | 2007/03/18 1:02 AM |

はじめまして、いつも楽しくざれこさんの書評を読ませて頂いてます。
あの、相談なんですけど、私も本を読むのが好きで好きで仕方ないのですが、どうも好き嫌いが激しくて、特に女性の作家さんはあまり読んでないことに最近気づきました。
で、今まではミステリなどが中心で、恋愛モノはヘドが出そうなくらい嫌いだったんですけど、最近心境の変化で、「心がキュンとするような恋愛モノ」と呼ばれるものを読みたいと思うようになってきまして、
ざれこさんのオススメを教えてください!
| songben | 2007/03/19 5:06 PM |

chiroさん
どの短編も、長編にでもできるネタを惜しげもなく短編にしているという充実ぶりでしたね。特に最後の表題作なんかそう思いました。もったいないけど、短いからこそいいのかもしれないし難しいところです。
「ポグロム」のオチ、わからんのは私だけかと思ってました、よかった・・・。

indi-bookさん
私はコニー・ウイリスを女性と思ってなかったんですけど、普通は女性っぽすぎると思ったりするんですね。そうなんだ。確かにこれは女性っぽいですよね。
ラストのは良かったですね、じんわりしました。

songbenさん
はじめまして。songbenさんが男性か女性か、おいくつかもわからない中で返事をするので(ぱっと読み男性かと思っていましたが「私」ですね。女性・・・?でも書いてる内容は男性っぽいですよね)、普段読まない人が読めそうな恋愛小説をSNSで検討した結果、
「夜は短し歩けよ乙女」森見登美彦、
「エバー・グリーン」豊島ミホ、
こちら2冊が恋愛恋愛してないけどキュンとする感じでオススメかと。
よりオトナなものを、ってことでしたら、個人的には「赤い竪琴」津原泰水をオススメします。
もちろん、このコニー・ウイリスもSFだけどキュンとするラブコメで、オススメです。
お気に召していただければいいのですが。
| ざれこ | 2007/03/19 9:25 PM |

ざれこさん、オススメありがとうございました。さっそく読んでみます。
男性か女性かも分からない私(笑)に、丁寧に教えて頂き感謝です。
私も関西在住で、たぶんざれこさんと同じ歳か、1コ上かぐらいかもしれません。
またちょくちょく遊びにこさせていただきます♪
| songben | 2007/03/22 6:00 PM |

ざれこさんも、犬によわいくちなんですね。
私も、「犬」につられて読みました。

でも1番おもしろかったのは、「女王さまでも」。サイクリストっていうネーミングや、いかにも、そのうち渋谷あたりに出現しそうな、「自然食レストラン」がおもしろかったです。最後にあっさり、サイクリストを断念してしまう若者も、いかにもいそうでしたね。
| くまま | 2007/03/25 8:59 AM |

ざれこさんこんばんは。外文読みに参考にさせてもらってます。スパイス・ポグロムのラストはやはりみんな?となるのですね。
ちなみにクリスとハッチンズです。私もカタカナ名前に四苦八苦してますが、今ならまだ本が手元にあるので宇宙人の名前も言えます。えーとミスターオオギヒ…すいませんかみました。
| たまねぎ | 2007/12/13 11:29 PM |

くままさん
「女王様でも」、おもしろかったですよね。女性には切実な悩みなんですけどねー

たまねぎさん
かんでますね(笑)何度読んでも覚えられないあたりも笑いを誘いましたね。
| ざれこ | 2007/12/22 11:12 PM |

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