本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
<< May 2018 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>
<< 2007年02月に読んだ本 | main | 「図書館危機」有川浩 >>
# 「チョコレートコスモス」恩田陸
チョコレートコスモス
チョコレートコスモス
  • 発売元: 毎日新聞社
  • 価格: ¥ 1,680
  • 発売日: 2006/03/15
  • 売上ランキング: 56286
  • おすすめ度 4.0


高校3年の時に、クラスの文化祭の劇の脚本を書いたことがある。
別に認められたとかじゃなくて、受験前にそんなことをしたがるのは私だけだった、
ってなことで、書いたものも映画の焼き直しでオリジナルではない。
でも女数人泣かせてやったわ、くはは。(単にぱくった映画が泣ける映画だった)

脚本を書くのはすごく面白かった。限られた舞台スペース、限られた小道具大道具、
限られた音響、限られた役者。その制約で何かを工夫してやることが、
すごく面白かったのだ。舞台を想定して、この位置に何を置いてどう使うか、
舞台左にひいた彼を次どうやって出すか、そういう細かい制約をいちいちクリアして、
舞台を面白く見せるということ。結局大した脚本でもなかったけど、
素人役者達が素人学生なりに演技してくれて、けっこう見栄えのする劇だったと思う(自画自賛)。
ちなみに音響も担当して、ギャングが登場した時の(つうか、どんな話や)音楽の候補を
みんなの前で流したら、「昔の刑事ドラマみたい」と却下されたのはご愛嬌。
刑事ドラマ好きな高校生で何が悪いよ。ちなみに、流した曲はスカパラだった。

大学の時には演劇部に入って脚本を書くか、軽音楽部に入るか本気で悩んだ。
一応最初はどっちにも所属していて掛け持つ気満々だったが、軽音楽部の方が忙しく、
やはりずっとやってる音楽は居心地が良く、結局演劇部は辞めてしまった。
あそこでずっと脚本書いてたら、今頃本谷有希子みたいになってたかもしれないのに
(やってないことは何とでも言える)、惜しいぞ私。
ま、音楽を捨てて現在趣味は読書だけ、だけどやたら個性的な人物になってただけだろうな。
(演劇業界はやたら個性的な人が多かった気がするんだけど、気のせい・・・?)

と、演劇業界に片足だけつっこんで、さくっと戻ってきてしまった私でしたが、
この本を読んでいたら、あー、隅っこの方ででもいいから残ってればよかった、なんて思いました。

こちらは裏方ではなく役者が主役。大学の演劇部に入った天才肌の佐々木飛鳥、
芸能人一家に育ち、20歳そこそこで演技派女優の貫禄をつけている東響子、
その親戚で最近頭角を現してきた宗像葉月、東響子と競演しているアイドルの安積あおい、
様々なタイプの女優が登場して、それぞれのエピソードが並行して描かれるが、
やがて、大物映画監督芹沢が企画する女優2人の舞台のオーディションの噂がたち、
彼女たち女優、そして脚本家の神谷も巻き込まれて事態は動いていく・・・。

恩田陸作品でも1,2を争う素直な作品(変な言い方だけど)で、「夜ピク」同様
大変人に薦めやすい面白さです。恩田陸の作品はものによっては人には薦めづらいので。
薦めづらいと言っても面白くないというわけではなくて、独特なので。
終わり方も曖昧模糊としたものが多いし。
でもこれは万人にお薦め。特に「ガラスの仮面」が好きなら絶対好きだ。

佐々木飛鳥を北島マヤに、東響子を姫川亜弓に比べてつい読んでしまった私です。
だから逆に、共通点より違いばかりが目につきました。
物語の進み方は全然違うし、飛鳥のキャラとマヤのキャラはあきらかに違いますけど、
でも影響を受けて書いたんだろうな、とは思いますね。

一番違うなと思ったのはこの二人の関係。
むきだしのライバル意識があるわけではないんですよね。
舞台で同じ境地に立つことのできる、本当の舞台の世界に行くことが出来る、
演劇という世界で演じること、誰かになりきること、その神秘、そしてその演技の先に見えるもの。
それを共有する仲間というか同志というか。そういう認識で二人は対峙します。
それがすごく印象的でした。マヤと亜弓も認め合ってますけどね。それとは違う形で。

しかし、もっとどろどろしたものがあるんじゃないの、特に東響子、とかは思うんですけど・・・。
ライバル同士が火花を散らす過程を期待していた私にはちょっとあれ、って気もしたけど、
そこは安積あおいとかの雑魚(失礼)が東響子にライバル心むき出しで、わりとベタな展開で
面白かったからいいんですけど。つうか、そもそも何を期待してるんだ・・・。

で、少し物足りなかったのが、佐々木飛鳥という人物。演技の天才だけど、自意識がない。
そのあまりの自意識のなさ、自覚のなさがちょっと違和感。こんな人本当にいるかな。
でも人の命ずるままに動いてるってわけでもなく、自分の意思でちゃんと生きてる。
確かに自意識がないと演技をするには最も適してるんだろう。
自分がないんだから、誰にでもなれる。
でも本当にこんな天才はいないと思う。それは恩田さんもわかってると思う。
これは続編があるんだろうか?あるんだったら、飛鳥が自意識に目覚め、
それでも演技をしていく、その葛藤と成功とちょっとした挫折を読みたいと私は思った。
性悪だろうか。

演技をするということの不思議さと魅力がふんだんにつまった一冊、
そして体育会系な熱い展開も魅力です。
やっぱりオーディションとか絡むと読者も燃えますよね。ついね。
手に汗握って、舞台を見ているように読みました。
そして、演劇って面白い。と再認識させてもらった一冊でした。
何か見に行きたいな。舞台。ちょっと重い腰を上げてみようかな。

余談かもしれないが、先に「中庭の出来事」を読んでしまっていたのだが、
仮にこれを読んでから「中庭の出来事」を読んでいたら、恩田さんの罠にはまって、
「中庭の出来事」の中にもしかしたら佐々木飛鳥がいるんじゃないか、
東響子がいるんじゃないか、そんな落ち着かない気分にさせられたんじゃないかと思います。
だって「中庭の出来事」には神谷が出てきてるんですもん・・・。
同じ世界軸の話だったらどうしよう、まさかこんな形で続編だったらどうしよう、
そんな危惧も抱いてしまいます。
お願いだから、普通に続編書いて下さいね?とついお願いしたくなります。
響子と飛鳥の心境がどう動くのか、二人でどんな舞台を作るのか。
それを是非読んでみたいのです。お願いしますよー。ってここで書いてもなあ。

今「ガラスの仮面」を読み返したくなる衝動にうずうずと悶絶。
何回読んでも徹夜してしまうやんか私・・・・。と激しく自粛。
でもね、この作品には速水真澄(にあたる人)は出てこなかったので、
それが非常に物足りなくて・・・。真澄様・・・・・(病気)。
これもいいけど、やっぱり「ガラスの仮面」ですよね。とか思ってしまいました。
| comments(7) | trackbacks(8) | 01:13 | category: 作家別・あ行(恩田陸) |
コメント
高校時代、ぼくも掛け持ち演劇部員で、何度か舞台に出させてもらいました(苦笑)。もっとも、新聞部、文化祭実行委員のほうがメインで(いわゆる生徒会仲間ですね)、あと混声合唱とかもあったので、よくまぁそんななか主役のひとりをやらせてもらったなぁと、いまさら驚きです。文化祭二日目に、疲労のあまりまったく声が出なくなってしまったのに、演劇部と合唱部の舞台だけは声が出たというのも、小説のような思い出です。さておもしろかったこの作品ですが、やはりぼくも主人公に人間味が不足していることは否めない事実だと思いました。でも、おもしろかったですよね。それでよし、の作品だと思います。
| すの | 2007/03/15 9:41 AM |

ざれこ様

私はこの本を「マヤ… 恐ろしい子」と呟きながら読んでいました。

“ガラスの仮面”への素晴らしいオマージュ作品ですよね。
映画版“夜のピクニック”で“ガラスの仮面”のセルフが使われており、のSPECIAL THANKSに美内すずえ先生の名前が入っていたのですが、よほど好きなんでしょう。

続編を期待したいです。
| kazumi | 2007/03/15 9:13 PM |

すのさん
経験者さんですかー。本番はなんとかなるもんです。どれだけ風邪ひいても本番で楽器は吹けるのと同じ原理ですかね(笑)
飛鳥が人間としてもう少しどろどろしてたらもっと面白かったかな、と思いますが、だからこそ続編があるかな、って気がします。

kazumiさん
ざれこ様はやめてくださいね、照れるので(笑)
やはり恩田さんはガラスの仮面好きなんでしょうねー。私も好きだからもう夢中で読みました。映画「夜のピクニック」も気になりますー。
| ざれこ | 2007/03/15 10:48 PM |

ざれこさん、こんにちは、、。
これは、めちゃめちゃ面白かったです。
恩田版「ガラスの仮面」といってしまえば、それまででしょうが。
 オーディション場面のテンションといい
緊張感が凄かったです。
| indi-book | 2007/03/18 12:59 AM |

こんにちは。この本はまだ読んでいないのですが、気になったことがあったので・・・

私のいた演劇サークルは軽音系のサークルとの兼部がとても多かったのを思い出しました。役者とミュージシャン、ステージに立ちたいというタイプが似てるんでしょうかね?もしくはただの目立ちたがり・・・?(笑)
| momo | 2007/03/18 9:53 PM |

こんにちは。
「ガラスの仮面」を全く知りませんが、それでも十分楽しめました。
臨場感と緊迫感がたまらなかった。本物のお芝居が見に行きたくなりました。
| あおちゃん | 2007/05/08 6:41 PM |

今更ですが

indi-bookさん
そですね、緊張感溢れて面白かったですね。恩田さんにしてはストレートなストーリー展開で、すいすい読めました。

momoさん
私もじゃあ目立ちたがりなのかなあ・・・?どちらかというと影に隠れていたいタイプで、演劇部でも裏方希望でした(笑)軽音楽部ではステージに立たざるを得ない感じでしたけど。はは。

あおちゃん
「ガラスの仮面」はまだ未完ですしむっちゃ長いですけど面白いですよ!お暇があれば(ないか・・・)是非。
本物のお芝居、私も観たくなりました。
| ざれこ | 2007/05/22 4:59 PM |

コメントする









この記事のトラックバックURL
http://blog.zare.boo.jp/trackback/653753
トラックバック
「チョコレートコスモス」恩田陸
「チョコレートコスモス」恩田陸(2006)☆☆☆☆★ ※[913]、国内、現代、小説、演劇、ガラスの仮面、読み物 恩田陸という今をときめく作家、実はどうも合わない。何が悪いのか判らないのだが、読んだ幾つかの作品。最初は「このミス」で見かけた「月の裏側」だっ
| 図書館で本を借りよう!〜小説・物語〜 | 2007/03/15 9:29 AM |
恩田陸【チョコレートコスモス】
森山良子のアルバム【あなたが好きで】に収録されている『30年を2時間半で……』という曲をご存じだろうか? あなたが好きで森山良子 (2004/12/29)ドリーミュージックこの商品の詳細を見る 厳密に考えて、これを
| ぱんどら日記 | 2007/03/15 9:53 AM |
チョコレートコスモス [恩田陸]
チョコレートコスモス恩田 陸 毎日新聞社 2006-03-15 無名の学生劇団に入団した、一人の少女・佐々木飛鳥。演技経験などない、まったくの素人の彼女は、しかしその天才的な演技で周囲の人々を圧倒していく。一方、幼い時から舞台に立ち、多大な人気と評価を手にしてい
| + ChiekoaLibrary + | 2007/03/15 11:23 AM |
恩田陸 チョコレートコスモス
チョコレートコスモス 恩田 陸 中堅脚本家の神谷は、ある劇場の&#26478;落とし公演の脚本の筆が進まず煮詰まっていた。そんな時、ふと窓から見た少女が目に留まる。彼女は、いとも簡単に他人を演ずる事ができてしまうのだった。その少女 佐々木飛鳥は、大学
| マロンカフェ 〜のんびり読書〜 | 2007/03/15 4:33 PM |
チョコレートコスモス  恩田陸
昨年刊行された恩田さんの新作は年末に紹介した『中庭の出来事』と、この『チョコレートコスモス』の2作品になります。そしてその両方に共通するテーマが演劇です。 『木曜組曲』の映画で浅丘ルリ子演じる小説家が「私は時代に名を刻みたいのではない。余韻を、重松
| 今更なんですがの本の話 | 2007/03/15 8:20 PM |
「チョコレートコスモス」恩田陸
チョコレートコスモス 恩田 陸 伝説的なプロデューサー芹澤泰治郎が10年の空白を経て新作舞台を手がけるらしい。内容は女優二人の芝居。芹澤が指名したベテランから新人までが受けるオーディションで試される女優たち。 うわー面白かったです。最近の恩田
| ナナメモ | 2007/03/15 9:34 PM |
チョコレートコスモス
恩田 陸 チョコレートコスモス 「チョコレートコスモス」 恩田陸・著 毎日新聞社・出版 『天才演劇少女あらわるあらわる。』  本書は、本の雑誌の、2006の上半期のベスト本にもエントリーされていて 面白い、面白いって、噂は聞いていましたが、 評
| 個人的読書 | 2007/03/18 12:14 AM |
「チョコレートコスモス」恩田陸
タイトル:チョコレートコスモス 著者  :恩田陸 出版社 :毎日新聞社 読書期間:2007/03/27 - 2007/03/29 お勧め度:★★★★★ [ Amazon | bk1 | 楽天ブックス ] 舞台の上の、暗がりの向こう。そこには何かが隠されている。どこまで行けばいいのか? どこま
| AOCHAN-Blog | 2007/05/07 5:22 PM |
NOW READING
ざれこの今読んでる本
Categories
Comments
Trackback
Mobile
qrcode
Profile
Search this site
Sponsored Links