本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「冷たい校舎の時は止まる」辻村深月
冷たい校舎の時は止まる (上)冷たい校舎の時は止まる (中)冷たい校舎の時は止まる  (下)

「ぼくのメジャースプーン」を読んで、この作家の本は全部読もうと決めてましたが、
しんちゃんさんにお貸しいただいてさくさく読めることとなりました。ありがとうございます。
そして早速デビュー作から。

そういやこの人メフィスト賞受賞作家でしたね。メフィスト賞って、舞城王太郎とか
その他とんでもない作家(いや、個性的な作家)の巣窟、というイメージがあったけど、
メジャースプーンではそういう印象はなかったので、ちょっと驚きました。
でも、この作品を読むと、メフィスト賞でもわかる気がしました。なるほど。

ある雪の日。高校三年生の辻村深月やクラスメイトの鷹野博嗣は、いつもどおり高校にやってくる。
しかし学校に行っても、深月のクラスの学級委員達8人以外通学してこなくて、
どこの教室も職員室もがらんと空いている。雪で休みになったのに、
担任の榊が連絡ミスをしたのかと生徒達は最初のんびり構えていたが、
学校から出られないことがわかり、彼らは焦りはじめる。
そして彼らは気づく。学園祭で自殺したクラスメイトの名を、
彼らがどうしても思い出せないことに。
自殺したクラスメイトがこの状況に関わっているのか。
この8人のうち、実は一人死んでいるのでは・・・?
疑心暗鬼はどんどんふくらみ、彼らは追いつめられていく。

長い話だが、あまり長さを感じさせないのは、8人それぞれにきちんとスポットが当てられ、
その人間像を丁寧に描いているからだろう。
追いつめられた彼らのそれぞれの悩みや心の闇があらわになっていく様子はとても痛々しい。
特にこの世代に特有の追いつめられ方のような気がして、それがまた痛々しかった。

片瀬充という人物の場面が特に私には痛くて。彼は優しいのが長所なんだけれど、
怒らない、誰にでも優しいというのは結局自己主張がなくて、人とぶつかるのが怖い、
そう彼は思っていて、それを悩んでいる。
私も穏和なイメージで通っているし、ほとんど怒ったことがない。
内心ではよく怒っているから、怒りという感情がないわけではないんだが、
それを外に出してもめるのが嫌だから、あえて隠している節がある。
そして、誰にでもとりあえず愛想良くして、波風を立てずに過ごしている。
今となってはそれがどうした、偽善者で何が悪い、そうやって世の中過ごして何が悪い、
そんな気になっている。でも高校の頃に自分が偽善者だと気づいてしまったら。
自分の欠点が許せないようなそんな世代にそんなことを思ってしまったら、
それはとても痛手だったと思うのだ。

でも私が高校生の頃って、こんなこと考えたことなかったなーとか思ったり。
いろいろ悩みはあったけど、たわいもないものばかりで、
自分の存在を極限まで考えたこととかあったかなあ。
まあ、もちろんこんな状況に追い込まれることはなかったわけだけどさ。
ここに出てくる彼らは、進学校でとても頭がいいという前提もあって、
ちょっといろいろ考えすぎていて、本当痛々しいなと思った。
(つうか、うちも一応進学校だったが、私は浮いていた。それも痛いわ)

この、全体に漂う真面目な気質は、辻村さん本人のものなんだろうな、と思ったりもした。
繊細で感受性豊かできまじめ。そして若い。
若いからこそ書けるもろさ、危うさなのかもしれないなあ。

ちょっと余談ですけど、自分より若い女性がこうやって才能を開花させてると
嫉妬に近いうらやみを覚えます。三浦しをん然り、辻村深月然り。
しかし三浦しをんさんはお友達感覚で応援できるからそんなにわだかまりないけど、
辻村さんはなんつうか、同じクラスでも別の(いろんな意味でレベルの高い)グループに
いそうな気がして、ますます羨ましいというか。
しかし私ってひがみ根性徹底してるな・・・。

不思議な状況で続く、緊迫した心理劇。自殺したのは誰なのか?
ラストは予想もつかない展開で驚かされました。きっちり伏線がはられてるので、
霧が晴れたような気になりました。
自殺した人はなんとなく予想ついたんだけど、まさかあれがあれとは・・・!
(わかる人だけわかって下さい)完全にやられたわ。

心が痛い展開なんだけど、後味は悪くなくて、ミステリやSF的仕掛けより、
彼らの繊細な心理を追い、彼らの友情(恋愛と言うより友情だなあ)に感じ入る、
そういう青春群像劇として評価したいな、と思いました。
| comments(6) | trackbacks(7) | 09:42 | category: 作家別・た行(辻村深月) |
コメント
はじめまして。
ざれこさんの「ぼくのメジャースプーン」の感想を読んだのがきっかけで辻村さんにはまったので、これは報告せねば!と勝手に思い初コメントです。メジャースプーンは未読ですが。
夢中で読んで、世界に浸って、清々しい倦怠感にやられました。ドラマティックな出来事のなかった自分の高校時代の思い出すら懐かしく思い出しました。個人的には恩田陸さんの「夜のピクニック」を読んでる時感覚に似ているかな。読み終わりたいような、まだその空間に浸っていたいような。ジャンルは全然違うんですけどね。

これからもざれこさんの感想楽しみにしています。

ちなみにわたしも若竹ファンです。
| ひろ | 2007/02/22 11:55 AM |

私もこれは睡眠を削って読みましたー!!
途中でやめられなかったんです。

痛々しくて、痛々しくて
でも作者の「優しさ」も伝わってくる作品ですよね。
私はラストまで、まったく伏線にも気付きませんでした^^;
| のりぞう | 2007/02/25 7:48 AM |

はじめまして、こんばんわ。ざれこさんにまず、お礼を言いたいです。ありがとうございました。ざれこさんの【僕のメジャースプーン】の感想をたまたま見て、寝る前の読書習慣がつきました。
今秋山先生つながり3作品目【こどもたちは夜とあそぶ(下)】を読んでます。メジャースプーン、凍りのくじらは途中涙がとまりませんでした。ざれこさんがおっしゃるように辻村さんは(若いのに、若くして)頭がキレる人だなと思ってました。ミステリーなんだろうけどちょっと違う。登場人物の心理的な色付けがヒキツケラレル感じです。今読んでる作品はなぜか前に映画で見たブラット・ピットやケビン・ベーコンがでてた【スリーパーズ】だったかな?それを思い出してしまい、読んでいて痛いです。きっとどんでん返しがあるのでしょうか??結末が楽しみです。
| ゆき | 2007/03/07 5:57 AM |

あれがあれとはであれれとやられました。
ところでざれこさん、一つ教えてほしいことが
左からヘビ、ウシ、ブタ、ヒヨコ?、クマ
青だけがなんだか分からないのです
てっぺんのヌイグルミたち
| たまねぎ | 2007/09/24 2:46 AM |

皆さん
コメント返しそびれてましたーーごめんなさい・・・。
ありがとうございます・・・

たまねぎさん
青いのはぞうさんじゃないかと思います。
で、私にはヘビじゃなくてネズミにみえますが・・・一番左は。耳、ありますよね・・?
| ざれこ | 2007/09/24 11:18 PM |

はじめまして。まーちゃんです。
私は、辻村さん大好きで何冊かは読んでいます。(子供たちは夜と遊ぶ、冷たい校舎の時は止まる、ぼくのメジャースプーン、凍りのくじら)なんだか、好きな本のコメントを探してつらつらと書いては他のブログにいき、またつらつらと・・・

なんだか、自己紹介みたいになってしまいましたが;怪しいものではございません・・・

私の初めてのミステリは辻村さんで、最初は自殺した人が誰か。なんて考えながら読めませんでした。何か、アクションがあるたびにドキドキしながら読んでいて、2回目に読み返したとき最初と違った形で読めました。この本の中にいろいろ詰め込まれていて、私の大好きな1冊です。

| まーちゃん | 2009/10/26 12:14 PM |

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