本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「エスケイプ/アブセント」絲山秋子
エスケイプ/アブセント
エスケイプ/アブセント
  • 発売元: 新潮社
  • 価格: ¥ 1,260
  • 発売日: 2006/12
  • 売上ランキング: 17703
  • おすすめ度 4.5



うわ、感想書きづらい。ほぼギブアップ気味。

絲山さん、今度は「俺」の一人称。
40歳になるまで「活動」をしていて、働いたこともない、
無駄な人生を歩んできた男、正臣。
妹の託児所を手伝うことになって、その直前の旅で、京都に行く。
そしてそこで日本語の達者な西洋坊主の神父に出会い、神に祈る。
彼の片割れは京都にいたようだ。片割れを思い、自分の人生を思い、祈る。

いや、何が感想書きづらいって、よさが説明できないので。
なんかすごい心地よいんですよ。絲山さんの文章がいかに小気味良くて
心地いいかは、エッセイ「絲的メイソウ」で体感済みだったんですけど、
この作品はその文章の心地よさが全て、というか。なんかそんな感じで。

男一人称で、しかも40歳にもなって今から人生やり直しましょうかといった風の
どうしようもないおっさんが主人公にも関わらず、このあっけらかんとした、
突き抜けた明るさは何だろう。これは本当、絲山さんの文章のなせる業で。
そもそもどうしようもない男を描かせたらこの人すごいんだったな。
「袋小路の男」の小田切(だっけ)も相当ダメだったけど、あれはそのダメ男にほれちまう
女の話だったから共感できたのだけど、この人は本当にダメじゃない?
だけどこのからっとした感覚。湿気がない。

でも時折、
「おれさあ、ここで悔い改めちゃったりすると人生ゼロになっちゃうみたいで、それはちょっと都合が悪いんだよな」
なんて神に祈ったりしていて、はっとさせられる。

無駄じゃない人生なんてあるのかな。私の人生だって無駄じゃないのかな。
結婚して子ども二人作って健全に生きてたら、本当に無駄じゃないのかな。
なんかそんなことをふと考えた。
私だって今まで全てを悔い改めさせられたら、確かにゼロになるな。

ダメな男は不遜な態度で神に祈る。横で歌子さんが笑う。神も仏もあるものか。
神の不在、そして片割れの不在、自分の今までいた場所での不在、そんなものを感じながら、
手にひとかけらの自由を持って、京都で男は過ごす。
たったそれだけの物語。
でもなんだか、陳腐な表現だけど、かめばかむほど味が出る、何度も読みたいような、
この小気味いい文章に漂うあっけらかんとした絶望にたゆたっていたいような、
そんな気がする、物語。

神父がいいよね。適当に神父やってて、誰も愛せない神父。
彼もからっとした孤独に住んでいる。

そして、片割れ。「アブセント」では正臣の片割れが出てくる。
彼の正臣への感情を読むと、意外にも感じるし、ああやっぱりとも感じた。
お互いが、お互いの不在、しいては自分の不在を、自然な感覚として持っている、
その不思議。そのつながりの確かさと不思議さを思う。

やっぱり絲山作品は評価も難しいし感想も書きづらいけど、
やっぱりコンプリートしてしまった。この魅力は何だろうなあ。相変わらず、わからない。
でも、だからこそ読む。
| comments(2) | trackbacks(5) | 22:13 | category: 作家別・あ行(絲山秋子) |
コメント
こんばんは。
私もこの作品、感想書きづらいです。
けちょんけちょんにも出来るし、褒めることも出来る。
でもどっちもぴんとこないような・・・
多分再読はしないだろうけど、したらきっとまた違う味がしそう。また、出会うことがあったらね。
ホントに、絲山秋子は難しいです。
| 奈美 | 2007/02/11 12:27 AM |

ああっわかります。絲山さんの本ってすーっと入ってきて、ビタッと填まるんですけど、何がいいかと聞かれると『いや、それはね、うーん』となってしまいます。
| たまねぎ | 2007/02/11 4:51 PM |

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エスケイプ/アブセント/絲山 秋子
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