本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「中庭の出来事」恩田陸
  • 著:恩田 陸
  • 出版社:新潮社
  • 定価:1785円(税込み)
中庭の出来事
livedoor BOOKSで購入
書評データ

恩田陸の作品はどれも好きだが、特に私はミステリが好きだ。
「夜のピクニック」とか、少年少女を描いた作品も素直に好きなんだけど、
恩田作品のミステリの中途半端さというか、ミステリらしからぬ感じというか、
余韻というか残響というか、そういうのが好きだ。
普通ミステリって「あー終わった」って感じがするけど、恩田ミステリは
すっきりしないことの方が多いのだ。残響がわんわんと響いていて、
それが物悲しかったり妙に美しかったりする。その感じが好きなので、
別にすっきりしなくてもいいとさえ思ってしまう。
逆に余韻を味わいたくて読んでいたりする。
短編集「象と耳鳴り」でその魅力にやられたが、「ユージニア」もすごかった。
そして今回「中庭の出来事」。またやられちゃいましたわ。
脚本家が中庭で衆人環視の中殺された。
女優は同じ中庭で犯人を追い詰め、犯人は毒殺される。
旅人二人は何かを探して旅をしながら、同じ脚本家の話題を振る。
そして次は脚本家が、中庭で死んだ別の女性を目撃している。
脚本家は、女優が本人役で「告白」するという舞台のオーディションをしていた。
犯人は女優の中にいるのか?

これは舞台なのか?どれが本当に起こったことなのか?
わからないままに、恩田マジックに幻惑される私。

最初は、ばらばらなジグソーパズルが一つにまとまっていくのかな、
そんなイメージで読み進めていったのだが、だんだんそのイメージは消え、
次思いついたのはマトリョーシカだった。
ロシアの人形。大きな人形の中に、小さな人形が入っている。
入れ子の中の入れ子構造、今読んでいるのは「中」なのか「外」なのか、
更に「外」なのか?一体人形はいくつあるのか?私に全貌がわかる日は来るのか?
そんなことを思いながらも、無我夢中で読み進めた。

あれだけこんがらがったものを、ちゃんとまとめきったのはさすがというべきか。
もう恩田さんのことだから、このまま放置しちゃうのかな、
今回はとんでもない余韻にちょっと困っちゃうだろうな、と思ったけど、
そんなことはなかった、かな。
理解しきれてないところもあったけど、メモを取りながら再読すれば、
なんとかつながると思う。メモは円になるだろうな。中に円を書き込んで行くような・・・。
謎が謎として残されたままの部分は、ま、それは余韻ということで。
逆に全部解決されたら私のキャパを超えたと思うから、あのくらいでいいですわ。

いや、でも今回は余韻や残響云々より、とても奇妙な心地がしました。
普通読書って、その本の中に自分が入り込んだような気になって読んでるけど、
でもそれってまあただの幻影であって、作中人物達は私の存在なんて気にせずに
いろいろやってるわけですよ。メタ小説でもない限り。
私はただ、ぼんやりとそこにいる。それこそ幽霊みたいに。

でも今回は、私自身が彼らを「見る側」に立って、きっちり作品に参加しているような、
そんな錯覚さえ抱かせてしまうラストでした。それに驚いた。
こんな読後感はちょっと始めてかもしれません。
その奇妙な感覚がすごく残りました。

読み終わってすぐに寝たら夢を見た。
私と男性一人が、「更に外側」にいたという夢。
そして、この「中庭の出来事」のページが、私ともう一人によって続いていき、
私はそこでは当事者になっていた。
それはすごく不思議な体験で、朝起きてつい、本のラストを確認してしまったくらい。
なんちゅう余韻だ。しばらく作品世界が染みこんでた感じ。やられましたわ。

最近恩田さんは演劇ものが続いてるみたいですね。「チョコレートコスモス」は
まだ読めていないけれど、正統派っぽいですよね。楽しみです。
そうそう、入れ子といえば「三月は深き紅の淵を」でかなり複雑な入れ子構造を
やらかしてくれたんでしたっけ。あれいまだに理解しきれてないもんなあ。
「三月は・・・」の中の「入れ子作品」が独立して本になってますから。
(「麦の海に沈む果実」、「黒と茶の幻想」、入れ子小説と思って間違いないですよね?)
今回、得意分野が集結、なんだな。すごいわけです。

ケータイ文庫で配信されてたと最後に書いてあってびびった。
携帯でちょっとずつ読まされた人は、たまりませんなあ。
一気に読んでも大混乱だったのに・・・・。気の毒に。
きっと買っちゃったんでしょうね。私だったら耐えられない。
| comments(7) | trackbacks(11) | 02:34 | category: 作家別・あ行(恩田陸) |
コメント
ざれこさん、こんばんは!
どれが現実なんだ?と混乱しながら読み進めて、すっかり中庭の世界に入り込んでしまいました。入り込むといっても、観客として入り込んでる感じですね。
マトリョーシカの喩え上手いですね。
中なのか、外なのか曖昧になっちゃう構造の複雑さ、堪能しました。
| エビノート | 2006/12/24 8:45 PM |

ざれこさん、こんにちはー。
ほんと、マトリョーシカでしたね。
でも普通のマトリョーシカは中の人形がどんどん小さくなるけど
この作品の場合は、中身が逆に大きくなったりもする!
タチが悪いマトリョーシカですねー。(笑)
いや、そこがまたいいんですが♪
「チョコレート・コスモス」もぜひぜひ読んでくださいませ!
作品に参加してる感覚といえば、私はコレが一番でした。

そうそう入れ子といえば。
「まひるの月を追いかけて」も「三月は〜」の入れ子か?
という話もあるんですけど、ざれこさんはどう思われます?
「黒茶」とかに比べると、ちょっと弱いですけどね。
| 四季 | 2006/12/25 5:50 AM |

エビノートさん
そうですよね、すっかり自分が観客になった気分でした。不思議な感触でしたね。これだから恩田ミステリはやめられませんわー

四季さん
そう、いきなりでかい人形がかぶさってくるマトリョーシカ(笑)びっくりさせられましたね。そこがまたいいんですよね。
「チョコレートコスモス」も読みますとも。とても楽しみになってきました。神谷問題も検証してみます。

「まひる・・・」はまだ未読なのですが、女性二人が寝台特急に乗る話で合ってますか?話の内容をきいてもしかしてと思っていましたが、やはりくさいのですね(笑)早速読めないとです。いやはや、恩田さん、作品が多くて嬉しい悲鳴ですよ。
| ざれこ | 2006/12/26 1:04 AM |

ざれこさんこんばんは。すいませんバタバタしているうちに先を越されてしまいましたようで。
それにしても携帯で少しづつ読まされたらたまらないでしょうね確かに。自由に読み返せる本でも参っちゃうのですから。

読者大賞のおかげで、今年の後半はかなり楽しませていただきました。ありがとうございます。ではよいお年を。
| たまねぎ | 2006/12/31 11:35 PM |

ざれこさん、こんにちは。
夢か現か、迷宮に迷い込んだような幻想的な香りのミステリ劇でしたね。
歓声と拍手しか反応できないはずの観客(読者)に向かって、参加を呼びかけてくる臨場感もすごかったです。
「三月は深き紅の淵を」が好きなので、同様な入れ子構造ともに、とても気に入りました。
でも私も、理解しきれてないのですけど。

トラバさせていただきました(「ブラバン」も)。
今年もどうぞよろしくお願いします。
| 藍色 | 2007/01/07 2:26 PM |

ざれこさん、遅すぎますが明けましておめでとうございます。
今年もお邪魔し続けますので、ヨロシクお願いします。
中庭の出来事ですが、最近の恩田さんには幻惑され迷路に押し込まれ、放置プレイされ、というのが多かったようにも思うのですが、今回はとっても楽しく引きずり込まれました。
| きつね | 2007/01/08 6:36 PM |

こんばんは。
なるほど、自分も参加しているような気分になる・・言われてみればそんな感じでした。参加はしてるけど、混乱させられまくってる、みたいな(笑)
でもそれが快感でもありました。恩田さんのこういう作品、とても好きです。
TBさせていただきました。
| EKKO | 2007/02/20 12:13 AM |

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