本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「ナイチンゲールの沈黙」海堂尊
ナイチンゲールの沈黙
ナイチンゲールの沈黙
  • 発売元: 宝島社
  • 価格: ¥ 1,680
  • 発売日: 2006/10/06
  • 売上ランキング: 5718
  • おすすめ度 3.0


バチスタスキャンダルから時がたち、東城大学医学部付属病院の田口公平も
不定愁訴外来でマイペースで仕事中。隠し芸大会も夜勤だ。
隠し芸大会では看護師の浜田小夜が美しい声を響かせ優勝、その帰りに彼女と翔子は、
蓮っ葉通りで怪しい男にナンパされ、ライブハウスへ。そこでは伝説の歌姫、
水落冴子のライブが行われていた。彼女の曲「ラプソディ」に激しく揺さぶられる小夜、
しかし冴子は突然倒れ、東城大学医学部病院に収容されることに・・・。
小夜は冴子のマネージャーに言い寄られつつ、小児科での担当患者、眼球の癌に罹っている
瑞人やアツシにも気を配るが・・・。

前作「チーム・バチスタの栄光」がヒットを放ち、読書ブログに黄色が踊った。
そして立て続けに出されたこの本で、今度は読書ブログが青く染まった。
ただ、青には黄色ほどのパワーはないらしい。という噂も聞くに至ったが、
やっぱり手に取ってみる。
これを図書館で予約中に「螺鈿迷宮」が刊行されたのを本屋でみかけて、
すごい刊行ペースやな、とびびる。
どうやら、同じく青い表紙の「螺鈿迷宮」とこの「ナイチンゲールの沈黙」はセットというか、
表裏一体というか、そんな感じらしい。という情報も既に入っている。

そういう情報を得てから読んだので、「前作と比べてどうよ、これ」って怒ることもなく、
「これって消化不良なんとちゃうん」って怒ることもなく、冷静に読んでる自分がいた。
前作と比べていまいちと聞いていたから、どういまいちなのか冷静に分析できたりしたし、
消化不良も、表裏一体なもう一作があるんだったら、逆に楽しみだったりするしね。

個人的には、三人称だったのがまず残念。前作の田口公平のやる気のない語りが
私は相当気に入っていたのだな、とこれを読んで改めて知ることになった。
三人称でしか描けない事件だし、これで全然いいのだけれど、あの怠惰な魅力(何それ)が
ワタシ的には半減しちゃった。田口にそこまで肩入れしてない人にとっては
全く気にならないところでしょうが。

そして登場人物多すぎでしょう、と思わずツッコミを入れたが、これは長所でもあり短所でもある。
人物全員キャラが濃すぎやねん。個性的すぎ。今回は白鳥圭輔ですらかすんでたように思う。
警視正の加納だって白鳥とお友達だから、類は友を呼ぶですごく個性的やし、
猫田師長の得体の知れなさもすごいし、脇役まで全員血肉が通っててどんな人かすぐ想像がつく。
普通の小説やったら、数人にポイントがあたって他のメンバーはモノクロ、みたいな
扱いが多い気がするけど、ここでは全員が極彩色カラーで動き回ってるから、そりゃあ、濃いです。
全員、モデルがいるんじゃないか?著者の病院にさ。
そして水落冴子のイメージは中島みゆきです、ワタシ的に。

あまり濃いのも視点がばらけるし、おなかいっぱいになるけど、これはこれでいいんじゃないか。
東城大学医学部シリーズであと5つくらい話が作れそうやし、
そして警察庁と厚生労働省と医学界が絡んだ諸々でもどんどん話をでかくできるし、
シリーズとしての広がりがすごく感じられるので、期待大です。

この著者の欠点として、一つ気になったのが、全体の盛り上げどころがずれちゃうんだよな。
前作では事件が解決するのが少し早かったし、今回は事件が起こるまでが長かった。
ちょっとだれてしまったな。もっとコンパクトにまとまったはずと思う。

事件そのものもなあ、死んでも全然支障のない駄目な人が死んで、犯人達にもなんか、
殺したっていう罪悪感みたいなのが全然なくって、・・・なんかなあ、別に殺人事件が
なくてもよかったんじゃ?眼球の癌患者との闘病とかをテーマにしててもそれだけで
読み応えあったんじゃないかなあ。とか思ったりもしたけど、それをいっちゃあおしまいですか。

小夜の歌声の効用も気になったな。非科学的すぎないか、と。
ああいうことって科学的にあり得るのかなあ。冴子の歌の効用についてはわからなくもないけど。
それに、小夜の歌、耳を鍛えたらよりわかるようになるってのも・・・・。なんか納得いかんです。

って、けっこうけなしちゃいましたけど、でも面白かったですよ、それなりに。
これがデビュー作だったら「おおっ」って言ってたと思うし。
細部が面白いんだよねえ。ハイパーマン・バッカスってテレビ番組がやたら気になった人、
多いんじゃないかなあ。酒呑みのスーパーヒーローが子どもに大人気だなんて。
説教好きな星人と酒呑みでダメダメなヒーローとの対決。見てみたいわあ。

でね、小児科での子ども達と医者や看護師とのやりとりが、すごく微笑ましいのです。
「勇者アツシ、今から悪い奴を退治するから我慢するように」なんて言って検査を我慢させたり、
医者の子どもの扱いがすごく温かく、かつリアリティがあるというか、こういうのって
やっぱり実際のお医者さんでないと書けない部分じゃないかと。そういう細部がすごく
活き活きしてて、眼球の癌で目を失う危険がある少年達の治療の難しさ、彼らの恐れや悲しみ、
そんなのも臨場感あったと思う。目を失うなんて・・・。死ぬよりまし、生きれるだけいいじゃん、
なんて白血病の子に言われたりするけど、やっぱりすごく覚悟はいるし、読んでるのもつらかった。

けなすのも覚悟しながら冷静に読むつもりだったけど、結局は夢中になって読んじゃったので、
前作よりはちょっと・・・、ってだけで、おもしろいことには違いないです。
「螺鈿迷宮」で次は桜宮病院の謎が明らかになるのかな?
その前振りとしては大成功な本ですよ。すごく楽しみだもん。
この著者、立て続けに続編出したところといい、更に次につなげたところといい、
個性的なキャラでいくらでも病院ネタが書けそうな布石を敷いてあるところといい、
とっても商売上手やと思います。感心。
してやられながらも、次回作を図書館予約するワタシでした(買えよって)
| comments(6) | trackbacks(10) | 11:22 | category: 作家別・か行(海堂尊) |
コメント
こんにちは。
こちらの記事にTBさせていただきました。
私も田口センセファンです。
前作がインパクト大!!だっただけに、色々思うところもあるのですが、
結局はがーーーっと読んでしまうほどおもしろかったと思いました。
次回はいよいよ氷姫も登場ということで、ますます期待してしまいます♪

またよらせていただきますね(^o^)丿
| Rutile | 2006/12/23 7:10 PM |

ぼくは、逆に前作に冗長を覚えた口(くち)なので、本作が普通におもしろく、評価を変えた作家でした。
ただ、ミステリーはなってませんね。
歌の力は白鳥の台詞で解決ということにしませんか?だめ?
でもデジタル・ムービー・アナリシスは、アイディアはいいと思うのですが、パソコンでぱっぱとたられちゃうと、ちょっとリアリティーに乏しすぎるように感じられました。
科研辺りに、データを持っていって解析とかだと、もう少しリアリティーが感じられたと思います。
| すの | 2006/12/23 9:37 PM |

Rutileさん
お、グッチーファンですね。私もです。今回は出番少な目で残念でしたけど、これはこれで面白かったですね。私も三作目が楽しみです。

すのさん
おお、すのさんとはたまに意見が180度分かれて面白いです(笑)
前作は、2回ある聞き込みを冗長と捉えるか面白がるか、でだいぶ印象がかわりますものね。田口贔屓かどうかでも(笑)今回もでも前回のトーンでいってたらそれこそこの作家は打ち止めでしたよね。作風の拡がりは嬉しいです。
歌の力はダメですよ、音楽やってる私から言わせてもらえばありえないです(笑)。耳を鍛えたら更にいいだなんて、おかしいですって。こんな風に歌える人が世に出たら、サブリミナルで宣伝し放題どころか、軍事目的の洗脳にでも使えちゃいますよ、怖すぎですよ。まあそのネタで一本書いてくれるなら読みますけどねー。
それに加納がやる「紙芝居」も確かにまあおっしゃるとおりですね。あれもありえなかった。次回からも出てきそうな技術だけに、もちょっとリアリティ求めたいところですね。
ああ、けっこう書いちゃった。すいませんです。
| ざれこ | 2006/12/24 3:31 AM |

>ざれこさん サブリミナル効果・・・。うっ。確かに。でも、ぼくは「歌」や「絵」にすごい力があるっていう物語は好きなんですよね。自分にそれを読み取る力がないので、。音楽をしてればこそ、ざれこさんはリアリティーの欠如を感じるわけですが、あまりパソコンとか詳しくないと電子紙芝居も、とてもできた設定なのかもしれませんね。
でも、映画のように映像が浮かぶでなく、絵が浮かぶ程度にしておけば。・・・・あ、少しネタバレが過ぎましたか?
| すの | 2006/12/24 7:13 AM |

トラックバックさせてもらいました。

私も今作は消化不良でした。。。
「螺鈿迷宮」を読まないと気持ち悪いくらい(−−;)
作者(出版社?)の策略にはまってますかね?ww
| もりちえ | 2006/12/28 4:11 PM |

すのさん
歌にすごい力、・・なんかそういう意味ではファンタジー?SF?ミステリにファンタジー要素ってどうなんだろう。はは。ま、いっか、ですけど。
すのさんとこにもかかれてましたけどハイパーマンバッカスが話に関係なかったけどすごい面白かったんで、よしとします(笑)

もりちえさん
そうですよね。桜宮病院はどうした!ですよね。続編が更にあると知ってたから楽しみですけど、知らなかったらキレるところでしたよ。ええ、策略にはまってますよ(笑)商売上手ですよねー、作家も出版社も。
| ざれこ | 2006/12/28 8:26 PM |

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