本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「ブラバン」津原泰水
ブラバン
ブラバン
  • 発売元: バジリコ
  • 価格: ¥ 1,680
  • 発売日: 2006/09/20
  • 売上ランキング: 4018


津原泰水氏の本を読むのは三冊目です。
最初は「赤い竪琴」を読み、オトナな恋愛小説にうっとりし、次に「綺譚集」を読み、
その耽美的怪奇ホラー系の短編の嵐に酔いまくり、「津原さんは普段はこんなんです」と
聞いてますます驚き、・・・・と思っていたら、次に見つけた本が「ブラバン」。
ブラバンって、あのブラバン?吹奏楽部のこと?あの、津原さんが、ブラバン?
・・・これが読まずにいられますかいな。どれだけ引き出し多いねん。この作家。
なので、この作品から津原氏を知ったそこのあなた、他の作品は注意して手にとって下さいね。
面白いけど、ジャンル違いかもしれませんから。

「赤い竪琴」で、「この人絶対音楽やってるな」とは思ってたんですよ。うまく言えないけど、
すごく耳が良さそうな音の描写がいくつかあって。楽器にも詳しそうだし。
そしてその勘は当たった。ご自身が高校時代にブラスバンド部でコントラバスだったそうです。
どうやら自伝的小説なのかな。きっと、実際やった(やらかした?)ことも書かれてるのでしょう。

物語は40代のバーのマスター、他片(たひら)が主人公。
赤字続きの冴えないバー、冴えない人生、
でも彼は高校の時はブラバンでコントラバスをやっていた。
仲間の死、そして、憧れだった先輩の結婚披露宴での演奏を頼まれたことで、
彼はブラバン時代の思い出をどんどん思い出していく。
現在と思い出が絶妙に交錯した小説。

えーっと、読んでて全く違和感がなかったのです。
他の本だったら、例えば出版業界の本とか、医療関係とか、いろいろ知らない業界を知って、
「へえ」って外から読んでるところがあるんですけど、これは違った。
私、隠してませんけどブラバン経験者です。中学高校とずっとやってて、
だからこの本は全く他人事の感じがしなかった。全部、わかるんです、普通に。
あまりに違和感がないもんで、なんか中に入り込んで読んでしまって、
外からの視線で読めてないんだよな。私。
感想書くのもだからなんか厳しいのですよ。私はね、すっごく面白かったの、これ。
でも、「もしかして、内輪ネタ?」とか思っちゃって、誰か、例えば体育会系の、
楽器触ったことないって人に手放しに薦めて大丈夫かどうか、真剣にわからない。
困った。困ったモンです。

楽器とか、知ってるようで知らない人が多いです。
私はブラバン自体はやめたけど、今もトロンボーンって言う楽器を吹いてて、
これはなんとなくわかってくれる。「伸び縮みするやつです」といえば。
でもね、ユーフォニウムって楽器は知らないよね、普通。
ブラバンでしか使われない楽器で、チューバの縮小版で、マウスピースは
トロンボーンと同じ大きさで、指使いはトランペットとほぼ同じで、
楽譜はC譜で、って専門的に書き出すときりがないが、なんでこんな詳しいかというと
私がそのマニアックな楽器をやってたからなのですが、
これ、知らないんだよな、ほんまに。ま、仕方がないのですが。

唐木という、主人公の同級生が、とある事情があってチューバを投げ出し
(まさに文字通り「投げ出した」(傑作)のだが、これは本文参照のこと)
結局ユーフォニウムに変わって、誘ってくれた先輩にすごく感謝してるくだりが
あるんだけど、これ、普通わからんだろうな、と、そこだけつい外から
読んでしまって、あーもしかして内輪ネタなのか、と。あー。
でも楽器の説明は丁寧にされていたと思うし、ブラバンにおける弦バスの立場とか、
すごくわかるように何気なく説明されてたと思うし、えーっと。
あー。うまく伝わってたらいいんだけどなー。と、自分で書いたみたいに心配してしまう。
できたら同じように楽しんで読んでほしいな、なんて思うのです。
そんな本です、私にとって。

でも、部活動やってたら誰でも経験してそうな人間関係満載、
お付き合いしたり二股かけてみたり、先生と喧嘩してみたり、すごい悪戯してみたり、
文化祭の時の楽しい感じとか、そういうのは絶対伝わると思う。
あれ、傑作やったな。文化祭でのグレンミラージャック事件(←今名づけた)。
大笑いした。あんなことやらかす、すごい時代だったな、高校時代。
あれはもしかしたら実際あったことなのかも、なんて思った。やけに詳しかったし、
著者も楽しんで書いてるなあ、って気がすごくしたので。


最近メディアでも吹奏楽ってわりと熱いよね。そうでもない?
「笑ってこらえて」の吹奏楽の旅ってコーナー、あるじゃないですか。
あれでまあちょっとたまに涙ぐんだりしてしまうけどさ、でもあれってやっぱり
高校生現役たちの若さが輝いてるじゃないですか。
なんていうかなあ、寂しくなるのよ。
絶対もう私、にきびとかできへんしなあ、あんな感じにはなあ、とか・・・。
自分がそこにはもう絶対入れない、拒絶されてる感じがしちゃって、寂しい。
わりと青春小説にはそういう部分があって、ノスタルジーというより疎外感、を
感じることもあるけど、この作品にはそれすらなくって。
テンション低い40歳のおっさんの視点で書かれてるのもよかったと思うのです。
今の私と同じ目線だからね。戻れないと知りつつ、昔を懐かしむ今の私と。

他片はわりと語り手に徹していて、各章でブラバンの誰かが主役になるような
語りなんだけど、ここのブラバンのメンバーがすごい個性的で、
また彼らのその後がわかるから、現役時代との落差とか、かなわなかった夢とか、
そういうのも同時にわかってしまって、人生輝いてるときだけじゃないな、
なんて思ってしまうのまで、なんか今の私と一緒な感じで。
あれだけテナーサックスとベースをがんがんやってた辻さんのこととか、
切なかったな。すごく。
でもまあね、個性的すぎるわ、って突っ込んだときもあったけどさ、
・・・・まあでもミュージシャンがいかに個性的かは私は良く知っている。
違和感なし、か。ここでも。

とにかく懐かしかった。私も昔の友達とか曲とかイベントとか思い出してしまって、
懐かしさに少し泣きそうになりつつ読んだ本でもありました。
昔やってた楽器を思い出したりしてね。曲を思い出して、その指使いを
思い出してみたり。案外、やれるもんで。
今、ブラバン復活するからユーフォニウム吹け、といわれたら、はせ参じるなあ。
ありえないけど、やるなあ。

津原さんにしては普通の文体で普通に書かれたんだと思うけど、
やっぱり文章がうまいし、青春の熱さが半減されるような落ち着いた文章、
これもすっとなじむ感じでした。古きよき青春と、過ぎ去った時間を思い起こさせる、
苦い青春小説だったと思います。津原さんらしい味付けですね、多分。

あーでも絶賛する自信がない。みんな、楽しんで読んでくれたらいいな。
楽器とか、わからないことは聞いてくれたら、わかる範囲で私が教えますから、
よろしくお願いします。(何様?)

最後に。
ラストに、作中で出て来た曲目紹介があったりします。
クラシックやらポップスやらジャズやら、ありとあらゆるジャンルを
とりあえず吹いてみる、っていう吹奏楽のスタンスらしく、
あらゆるジャンルの曲がそろえられていて、津原さんがかなり音楽好きと知れますが、
そこの最後に書かれているジャコ・パストリアスのライブアルバムが家にあって、
せっせと探し出して聴きました。こちら。

The Birthday Concert
アーチスト: Jaco Pastorius
posted with Socialtunes at 2006/11/02


ジャズやってたころにしょっちゅう聞いてた名盤ですが、今聴いても鳥肌。
やっぱりジャコパスはすごい。昔はホーンやってた関係でホーンしか聴いてなかったけど、
今回かけたらジャコパスのベースががんがん頭に入ってきて、
ちょっと頭おかしくなりそうになりました。いっちゃってるよねー。最高。
作中で紹介されている「Three Views of a Secret」って曲も収録されてます。

と、CDまで聴いてしまう本だったのです。はい。

ちなみにグレン・ミラーの曲もリストに入ってますが、
これ、「スウィングガールズ」でも演奏されてましたね。
やっぱ、メジャーやなあ。でも、案外難しいんですよー。
| comments(9) | trackbacks(9) | 02:14 | category: 作家別・た行(津原泰水) |
コメント
ざれこさん初めまして!
ざれこさんのブログ参考にさせていただいています。(^^)
 津原さんは初めて読みました。
図書館で新刊コーナーで見つけ、何だか私に「読んでよ!」と言ってるみたい…のような気がした。^_^;
面白かったです。私も吹奏楽をやっていましたから、とても懐かしくてイベントや定演のことを思い出したり…。
グレンミラージャック事件!(笑)
面白かったですね〜。
トロンボーン今でもやっているそうですね。
私はクラリネットでした。機会があればもう一度…なんて思います。
ちなみに、うちの子どもたちもなぜか吹奏楽部で息子はコンバスやってました。
ビバ、ブラバン!です。。
| はいびすかす | 2006/11/02 2:12 PM |

ざれこさん、こんにちは。
コメント&TBさせていただくのは、久しぶりです。
吹奏楽をやっていない私にも楽しい本でした。
でも娘たちが吹奏楽部なので、半関係者というところでしょうか。
次女は中学時代にざれこさんと同じユーフォニウムでした。初めて聞いたときはどんな楽器?と思いました。
そして高校では人数の関係でコントラバスに。少しずつ弾けるようになってはいるようですが、ユーフォにも少し未練があるみたい。この本を読んで弦バスがより好きになれたんじゃないかなと思います。
| 小葉 | 2006/11/02 3:53 PM |

はいびすかすさん
はじめまして。ブラバン経験者さんですね。面白かったですよねー。これ。
トロンボーンは細々と続けてます。クラリネット、いいですね、小さくて羨ましい(笑)市民吹奏楽団とかに復帰されては?周りにもそういう人もけっこういますよー。
息子さん弦バスですか。将来はベーシストですかねえ。かっこいいなあ。

小葉さん
こちらこそご無沙汰しています。
娘さんユーフォニウムですか。マニアックですねー。(笑。って私に言われたかあないって)
ユーフォって、トロンボーンにもトランペットにもチューバにもあっさり変われるんで、実は応用の利く楽器ですよね。大学とかに進まれてまた金管楽器に戻るのもありでしょうが、コントラバスはジャズをやるなら主役ですよ、絶対かっこいいです。私ならそっちを薦めるなあ。って人の娘さんに勝手にすいません。(苦笑)でも絶対カッコいいですよ、ベース。頑張ってくださいね。
| ざれこ | 2006/11/04 3:20 AM |

ざれこさん、おはようございます。
なるほど。私もブラバン経験者なので、感情移入も三割増しで読めましたけど、
他の人が読んだ感想はどうなのか。気になるところですね。

おー!ジャコパのアルバムが!!!
今、ブラバンコレクションアルバムを作ろうと思ってます。
アルバム聞きながら、愛すべきブラバンの登場人物に思いを馳せようかと。
しかし、時が経った時に、自分自身のリアルブラバン経験と、作中のブラバンとが交錯しそうです。
さすが、液体作家ヤスミン!すごいですよね。
| pico | 2006/11/04 7:32 AM |

ざれこさん、こんにちは。

私などは小学生の時に3年間やっていただけなのですが、「笑ってこらえて」の吹奏楽の旅で熱い高校生たちの姿を見ると、続ければ良かったなぁなんて思ったりします。
『ブラバン』の中の登場人物たちのように大人になっても部活仲間を想うところとか、なかなかないと思うのですが、ちょっと羨ましいです。

ジャコ・パストリアス、知りませんでしたが、鳥肌ものなのですね。これもチェックしてみたいです〜。
| みらくる | 2006/11/05 1:26 PM |

ざれこさんこんにちは。
ブラバンで使う楽器は未経験でしたが、十分楽しいお話でした(*^_^*)
ブラバン経験者はもっと楽しめるだろうなーと思っていたのですが、やはり!という感じです。

そしてざれこさんも書かれていたとおり、このテンション低い語り口がまた味があってよいですよね(笑)。大人になってから振り返る当時の様子という雰囲気がよくでていたと思います。
| まみみ | 2006/11/11 7:38 PM |

ざれこさん、こんにちは。
ブラバン経験者ではなかったのですが、高校時代のことを思い出しました。
ちなみに私は、この物語では敵役(?)の放送部でした。
レビュー読ませていただいて、ブラバン経験者にはこたえられない作品、と実感しました。
| 藍色 | 2006/12/09 4:01 PM |

いまさらになってしまう時期ですが、読みました。ちょっと「?」な作品なのは、ぼくが作品の登場人物たちと同じように、結局何者にもなれず、くたびれた、その辺に転がっている中年男になってしまったせいでしょうか?それでも、作品でもう一度夢や、希望が見れたらよかったのにというところです。勿論、それを読み取ろうとすれば読めないこともないのですが・・。
| すの | 2007/03/11 9:27 AM |

いまさらですけど・・・

picoさん
ブラバン経験者さんですか。やっぱり感情移入しちゃいますよねー。
「ブラバン」アルバムコレクション、いいですねー。
クラシックからジャズまで幅広く揃いそうですよね。

みらくるさん
ジャコパスは鳥肌ですけど相当刺激的なので、クラシカルな音楽に慣れてる人にはびっくりかも。
「笑ってこらえて」の吹奏楽特集は私も涙ながらに見ちゃいました・・・。
あんな、熱くなかったけど(苦笑)

まみみさん
ブラバン未経験でも楽しめましたか。よかったです。(何様)
でも、青春!というよりはテンション低めで、その感じも私にはあっていました。

藍色さん
放送部って敵なんですかねえ。私はそんな実感なかったけどな・・・

すのさん
確かにちょっとくたびれた?お話でしたけど、中年なりの希望みたいなのは見えた気がしますけど、私は。
まあ、私はまだ現役で音楽やってるんで、そこまでの境地にはたってないかもしれませんが。
| ざれこ | 2007/03/11 11:19 PM |

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