本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
<< March 2018 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>
<< 南の島で一週間、どの本を読もう。 | main | 「絲的メイソウ」絲山秋子 >>
# 「ぼくのメジャースプーン」辻村深月
ぼくのメジャースプーン
ぼくのメジャースプーン
  • 発売元: 講談社
  • 価格: ¥ 1,019
  • 発売日: 2006/04/07
  • 売上ランキング: 34439
  • おすすめ度 5.0


読者大賞blogで2006年の新刊本で面白かった本を挙げてもらってるんですけど、
そこで上がってきた本です。眠り猫さんが教えてくれました。
私は講談社ノベルスとか光文社ノベルスとか、新書サイズのミステリとかを
あまりチェックしていない人なので、新刊とか気づかないことが多いんだけど、
辻村深月という作家は知っていて、気になってはいたのです。読めて良かった。
著者近影載ってましたけど、まだ若くてかわいい感じの方です。

でもこのお話はけっしてかわいいとは言えなかったです。
小学4年生が主人公だというのに。でも、何度も涙がにじみました。
ミステリだと思っていたけど、ただのミステリじゃない、深いです。

ぼくは、幼なじみのふみちゃんのことを誇りに思っている。
ふみちゃんは優しくて明るくて頭が良くて人気者で、でもいつもクラスでは
一人でいるようなそんな女の子。大きなめがねをかけていて、歯の矯正をしてる。
ある時、オトナの残酷な悪戯で、ふみちゃんがかわいがっていたウサギたちが
無惨に殺され、ふみちゃんはそれから喋らなくなってしまった。
ふみちゃんは、ぼくを見ない。・・・オトナの悪意に対してぼくは何ができるのだろうか。
ぼくは、自分の特殊な能力を利用してその悪意と戦おうとする・・・

まずね、動物モノには弱いんですよ、私は。
もう動物が殺されちゃったり死んじゃったりしたら、もうダメなんです。泣いちゃうんです。
それもひどい殺され方。ハサミでばらばらに切られる。あり得ない。
動機がまたひどい。おもしろがってるだけ。小学校で大事にされている動物を殺して、
やってくる小学生を観察してるんです。で、一番にやってきたふみちゃんは
「萌えねー」と笑われている。・・・・もう、怒りと悔しさでまず泣きそうでした。

最近、こういうどうしようもない悪意が起こす事件が頻発してます。
動機のない殺人、動物虐待、なんていうか、憎いからやるとか殺すとか、そういう時代じゃ
なくなってしまった。面白いから人を殺す。その悪意はもう、化け物の悪意です。
まっとうな小学4年生のぼくからみたら、一番遠いところにないといけない、
そんなものです。32歳の私だって、そんなものには出会いたくないし、意味がわからない。
でもぼくとふみちゃんは出会ってしまった。その悪意に。

ぼくには能力がある。条件提示能力。言葉で人を縛ることができる。
それを使えば罰を与えることができる。でも、ぼくはそれをどう使ったらいいかわからない。
ぼくは同じ能力を持つ先生に習いに行く。犯人と会う手はずを整え、
そしてぼくは考えます。罪とは何か、罰とは何か、
その犯人にどんな罰を与えれば彼は心底おびえるのか。

ところで、動物を殺したら器物破損なんですよね。法的には動物は命ではないの。
昔、愛犬が17歳で大往生を遂げて、荼毘に付してもらおうと思って市役所に
行ったんだけど、そこで「器物」と書いた書類にいろいろ書かされて、
焼却するところに遺体を連れていったら、「あ、そこに置いておいて」と軽くあしらわれ、
すごい哀しい思いをしました。17年連れ添った愛犬も、野良犬も、世間的にはただの犬です。
でもね、器物破損じゃ罪は軽すぎると思うんですよね。猫を殺していた少年が、
結局人間を殺したりする訳じゃないですか。なのに器物破損なんて軽い罪で、
そいつを執行猶予付で放置しててはいけないと思うんです。
じゃあ、猫はダメでネズミはOK?蛇は?蚊は?・・・となると、もう私には答えられない。
猫の命は重くて、蛇の命は軽いのか?

罪とは何か、罰とは何か。すごく難しい問題です。
罪を犯しても、本人がそれを罪だと自覚していないと、罰をいくら与えても
彼らは反省すらしないし、もちろん更生しない。でも社会的には許される。
今、少年法がどうとか、ロリコン性癖のある人の犯罪がどうとか、
いろいろ言われていて、オトナ達が必死になって考えているけど、
それと全く同じようなことを、ぼくは自分の次元で考える。当事者として。
ぼくの先生に導かれて。その過程で思うことはまたとても辛くて、
オトナの私も一緒に導かれて考えてしまいました。
命の重さ、罪の重さ。罰について。そして、ふみちゃんは一体、
何を望んでるだろう。どうしたら、ふみちゃんが内なる世界から戻ってきたときに、
喜ぶんだろうか。いや、これは自分自身の問題だ、ふみちゃんが壊れて、
ぼくが悔しい、だからやるのだ。・・・ぼくの自問自答は苦しく続く。

そして、ぼくが出した結論とは?

ぼくの下した結論には驚かされました。どんでん返し。
そしてその結末が見えると、これがいかに美しい恋愛小説であったか、
私は気づくことになったのでした。ラストまで読んで様相ががらっと変わる、
これがどんでん返しの醍醐味だと思うけれど、
このどんでん返しの深さはすごいです。正直、やられました。
で、今まで痛々しくて涙にじんでたのが、あまりの深い愛にまた涙がにじむことに。
よく、頑張ったね。辛かったね。と言ってやりたいです。ほんま。

人は自分のためにしか泣けないんだ、とぼくは言います。
誰かのためになんか泣けないんだ、と。誰かがかわいそうだと思っていても、
それは誰かがかわいそうな自分がかわいそうなんだ、と。
・・・自分自身の痛みになるくらい、誰かが大事なら、その方が、すごいよね。

ちょっと美しいくらいのハッピーエンドが、逆に救いでした。
辛いけどステキな小説です。目をそむけずに読んでほしいな。
ミステリの枠には収まりきらない、深い本だったと思います。

※他の作品で出ている人がここにも出ているって話でしたが、
どの作品か、どなたかご存知ですか。
| comments(9) | trackbacks(10) | 11:01 | category: 作家別・た行(辻村深月) |
コメント
ざれこさん、こんにちはー。
偶然!私もついこのあいだ、この本読んだばかりなんです。
そして私も辻村さんが気になりつつこれが初読み・・。
そしてそして、私も32歳なの・・・って、これはどうでもいいですね^^;

このお話、実は私にはちょっと先生との対話ぶぶんが長すぎて、
途中で少し飽きてしまったんですよね。
でもざれこさんの言うようにラスト(どんでん返しも含め)がとてもよかったので
最後まで読んでよかったな〜と思いました。

そうそう。
これは、「子どもたちは夜と遊ぶ」という本で起こった事件の2年後、という設定らしいですよ。
そちらにも秋山教授が出ているんですって!
| ゆか | 2006/10/15 3:05 PM |

ざれこ様、初めまして!恋華と申します。

私も『ぼくのメジャースプーン』大好きです!

良いお話ですよね。

私もざれこ様と同じように最後のぼくの決断には驚いてしまいました。

罪について色々と考えてしまいました。

私の中で今年のNo.1と言っても差し支えないかもしれません。

それぐらい大好きです。

なので初めてなのにコメントを書かせていただいてしまいました。

乱分で申し訳ありません。好きすぎて上手く言葉になりませんでした。本当に申し訳ありません。これにて失礼させていただきます。


追伸:ぼくに力の使い方を教えてくれた秋山教授は『子供たちは夜と遊ぶ』という本に登場しております。

『子供たちは夜と遊ぶ』で起きた事件が秋山教授が力を使わなくなった経緯と関係しております。

他にも『子供たちは夜と遊ぶ』に出てきた人が二人『ぼくのメジャースプーン』には出ております。

『ぼくのメジャースプーン』にはその二人の名前は載ってないのですが…。


『子供たちは夜と遊ぶ』も私的に本当に大好きな作品です。

もし、お読みになられる機会があらましたら是非お読みになってみてくださいね。

『子供たちは夜と遊ぶ』上下
| 恋華 | 2006/10/15 10:33 PM |

皆さんも書いていらっしゃるように
「子供たちは夜と遊ぶ」で 残されていた謎が 本書を読むと納得できる・・・という部分があります。でも 「子供たち・・」を後から読まれても 違和感はないと思います。
それとメジャースプーンのふみちゃんも「子供たち・・・」に登場しているらしいのですが 今本が 息子のところに行っているので 確認出来ていません。

辻村さん 最近お気に入りの作家さんです。
「凍りのくじら」もぜひ。
| ゆーらっぷ | 2006/10/16 4:11 PM |

ざれこさん、はじめまして!
「ぼくのメジャースプーン」が大好きだという感想文を読むと自分のことのようにうれしくなり、コメントしました。
この本のラストを読んだ時は、通勤電車の中で涙が出てきてしかたがなかったです。
| やすくん | 2006/10/16 11:00 PM |

はじめまして。

「ぼくのメジャースプーン」私も大好きです。
皆様のコメントの通り、「子供たちは…」にでていた登場人物が「ぼくの…」にでています。
さらに、ふみちゃんは前作「凍りのくじら」にちょっとでています。
(確か“ふみちゃん”と名前を呼ばれていました)
そして、「凍りの…」の登場人物が、姿はあらわしませんが「ぼくの…」にでているのがわかります。

「凍りのくじら」も泣けます。
是非ご一読を!!
| kazumi | 2006/10/24 8:00 PM |

皆さんたくさんコメントありがとうございますー。遅くなってすいません。

ゆかさん
確かにちょっと対話は長かったですね。でもずっと心が痛んで読んでたので気にならないままラストまで読みきった感じでした。ずっと痛いまんまで、すごい本でした。

恋華さん
「子供たちは夜と遊ぶ」と関わってるんですね。詳しく教えてくださってありがとうございます。秋山教授の謎が解けるのであれば、これは是非読まねばです。

ゆーらっぷさん
さらにふみちゃんまで出ているとは・・。あーでもこの事件の前のふみちゃんなのですね。この後のふみちゃんがどうなったのか気になるんですが・・。いや、でも読みますよ。
「凍りのくじら」もいいんですね。確かデビュー作も評判いいはずで、これは全作コンプリートしないといけない勢いですね。

やすくん さん
そうですねえ。読み終わりは確か家でしたが、とにかくぼうっとしてしまいました。読んだのはずっと電車だったので、ずっと涙がにじんでいました。何事って感じでした・・・。

kazumiさん
ふみちゃんが「凍りのくじら」にも!ああこれは読まねばならぬ。あちこちつながってるんですね。それをたどるのも楽しそうです。ありがとうございます。
| ざれこ | 2006/10/27 1:47 AM |

ざれこさん私もノベルズはほとんど読まないので、読者大賞の紹介がなければまず読まなかったと思います。そしてこの本は読んで良かったと心から思える本だったので感謝です。
秋山教授について引っ掛かる点があったのですが、皆さんのコメントを読んでみたら、なるほど別の作品に書かれているのですね。それなら納得です。
| たまねぎ | 2006/11/19 12:25 AM |

ざれこさん、こんにちは。
積読になっていたこの本を今日やっと読みました。
イロイロな事を詰め込んで考えさせられる作品でした。
秋山先生作品はシリーズ化される可能性があると思いますし、今後も期待している作家さんです。
| きつね | 2006/12/30 10:32 PM |

私もこの本大好きです。                                ラストの部分が凄く良かったし感動しました。主人公、まだ小4なのに、あんなことできるなんてすごい。
 今、学生の私は、吹奏楽部にはいっていますが、その中で、この本は人気です。                                                                                     ふみちゃんのその後が知りたいです!    
| うに | 2014/06/30 8:49 PM |

コメントする









この記事のトラックバックURL
http://blog.zare.boo.jp/trackback/586674
トラックバック
「ぼくのメジャースプーン」を読了
辻村深月さんの『ぼくのメジャースプーン』を読了。序盤は、これってジュブナイルだったの?この作品のどこにミステリの要素があるの?なんていう頓珍漢な印象を持っってしまったのですが、思い違いもイイところ―、...
| Gotaku*Log | 2006/10/17 6:52 PM |
ぼくのメジャースプーン [辻村深月]
ぼくのメジャースプーン辻村 深月 講談社 2006-04-07 「ぼく」は小学四年生。不思議な力を持っている。忌まわしいあの事件が起きたのは、今から三ヵ月前。「ぼく」の小学校で飼っていたうさぎが、何者かによって殺された…。大好きだったうさぎたちの無残な死体を目撃
| + ChiekoaLibrary + | 2006/10/23 1:29 PM |
ぼくのメジャースプーン  辻村深月
驚いた。今邑彩さんの『いつもの朝に』を読んだのが9月のはじめ。わすが2ヵ月たらずで、ふたたびこんな本に出会うなんて。 実を言うと、今月に入ってから急激に読書のペースが落ちて、最近はほとんど手に付かない状況でした。先の3冊も実際に読んだのは先月で、記
| 今更なんですがの本の話 | 2006/11/19 12:26 AM |
(書評)ぼくのメジャースプーン
著者:辻村深月 ぼくのメジャースプーン価格:¥ 1,019(税込)発売日:200
| たこの感想文 | 2006/12/04 8:56 PM |
ぼくのメジャースプーン 辻村深月
忌まわしいあの事件が起きたのは、今から三ヵ月前。「ぼく」の小学校で飼っていたうさ
| きつねの本読み | 2006/12/30 10:26 PM |
「ぼくのメジャースプーン」辻村深月
タイトル:ぼくのメジャースプーン 著者  :辻村深月 出版社 :講談社ノベルス 読書期間:2006/12/27 - 2006/12/29 お勧め度:★★★ [ Amazon | bk1 | 楽天ブックス ] 忌まわしいあの事件が起きたのは、今から三ヵ月前。「ぼく」の小学校で飼っていたうさぎ
| AOCHAN-Blog | 2007/01/15 7:01 PM |
「ぼくのメジャースプーン」辻村深月」辻村深月
ぼくのメジャースプーン辻村 深月 (2006/04/07)講談社 この商品の詳細を見る ぼくは同級生のふみちゃんに憧れている。 頭が良くてスポーツ万能。 クラスでも人気者。 でも不思議な女の子だった。 周りに流されず、一人だ
| しんちゃんの買い物帳 | 2007/03/23 5:21 PM |
「ぼくのメジャースプーン」辻村深月
「ぼくのメジャースプーン」 辻村深月 講談社 2006年4月 勝手に評価:★★★★★  「ぼく」は小学四年生。不思議な力を持っている。  忌まわしいあの事件が起きたのは、今から三ヶ月前。「ぼく」の小学校で飼っていたうさぎが、何者かによって殺された……。大好
| Chiro-address | 2008/01/03 9:45 AM |
力と罪と罰と
小説「ぼくのメジャースプーン」を読みました。 著者は 辻村 深月 ウサギが無惨に殺され ふみちゃんは感情を閉じ込めてしまう 彼女を助けたい、不思議な力をもった 小学4年生のぼく 同じ力をもった先生と共に ウサギ殺しの犯人の罪を計りはじめる。 不思議な力とい
| 笑う社会人の生活 | 2012/09/05 10:19 AM |
「ぼくのメジャースプーン」辻村深月
超能力を持った少年の話。とても興味深く読めた。 この記事ネタばれあり。    【送料無料】ぼくのメジャースプーン [ 辻村深月 ]価格:800円(税込、送料別) 主人公は小学生の「ぼく」。 4年の時、学校で飼っていたウサギが大量に殺される。 犯人は、何不自由ない
| りゅうちゃん別館 | 2012/11/29 7:59 AM |
NOW READING
ざれこの今読んでる本
Categories
Comments
Trackback
Mobile
qrcode
Profile
Search this site
Sponsored Links