本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「珍妃の井戸」浅田次郎
珍妃の井戸
珍妃の井戸
  • 発売元: 講談社
  • 価格: ¥ 660
  • 発売日: 2005/04
  • 売上ランキング: 70846
  • おすすめ度 3.5


「蒼穹の昴」の続編とも番外編とも姉妹編とも取れそうなそんな作品。
時代は「蒼穹の昴」よりも少し後、義和団事変(1900年)が終わり、
日露戦争(1904年)が始まるまでの間です。・・・歴史の時間終わり。
時代としては続編だし、人物達のその後の様子も見えるんだけど、
あの大作の続編というには、ちょっと小粒だなあ、という印象。面白いのに損しています。

事変により幽閉されている現皇帝、光緒帝の側室、珍妃は、
義和団事変のどさくさの時に、紫禁城でひっそりと井戸に突き落とされて死んだ。
義和団事変の列強の行動を調べるべく中国にきていたソールズベリー侯爵は、
皇帝のはとこが行う悪趣味なダンスパーティで出会った謎の女にその事実を知らされる。
彼女は誰に殺されたのか?皇帝の妃を殺す者は、皇帝を殺す者になりうる。
西太后への対抗勢力である皇帝に死なれると困る列強の侯爵達、英露独日の代表は、
珍妃の死の真相を調べ出すが・・・。

いきなり西洋かぶれの皇帝のはとこ、そして、ミセス・チャンの登場で、
私は嬉しかった。「蒼穹の昴」の中でも好きな二人。とくに西洋かぶれ野郎が、
かなりいい味だしてんのよね。と思いながら読んでいく。

そもそもはじめはミセス・チャンの語りから始まるこの事件は、
証人へのインタビューという形式をとっていく。恩田陸の「ユージニア」っぽい。
アメリカの新聞記者からはじまり、彼の示唆で次の証言者、皇帝付の宦官の蘭琴、
そして袁世凱、珍妃の姉、珍妃の姉についている宦官、・・・・とどんどん続いていく。
証言者は皆一人称でその場について語り、毎回全く違う真相が語られる。
誰が本当のことを言っているのか?みんな嘘なのか?どうして嘘をつくのか?

主観的な視点から語られる事件は、それぞれの人物の政治的思惑まで絡み、
「この話は嘘か本当か」といったことから推理をしないといけないから、
そういう視点で読むと面白い。全く同じ場面を見てるはずの人達が
全く違う犯人を挙げてくる。そりゃもう呆れるくらいだが、途中まで読んで
「おまえら、嘘ばっかり・・」とキレつつ、「もしや全員で誰かをかばってるのでは・・」とか、
そういう憶測をしてしまったり、といろいろ思いながら読むのが面白い。

事件そのものは嘘としても、お互いがお互いに抱いている印象、時代に対して
抱いている印象が全然違ったりとかして、今ここにある世界というのは
その人個人の認識できる範囲内での世界でしかなくて、その人の観点でしか理解し得ないし、
だから同じ歴史を生きてても全く違うことを思っていたりする、その恐さやおもしろさについて、
考えたりもした。

でも、手法はそんな風に面白いのだが、最後まで読むと、これミステリじゃないよね、と気づく。
ただの謎解き話では、ない。

列強のお偉方4人がせっせと聞き取りに行く様は実際にはあり得ない感じだが、
それが物語での重要な核となっている。4人はなんだか微笑ましく、
ロシアも日本もいるから大げんかになったり(日露戦争直前やし)、日本人は元武士で
刀を仕込んでたりして驚いたし、つっこみたいところもあったけど・・。
イギリスもドイツもロシアも日本も、それぞれの利権を考えて中国にいる、
それが見えてきて、植民地支配に立ち向かおうとする中国の姿が見えてくる。

「蒼穹の昴」で李鴻章あたりが言ってた台詞だけど、人様の庭に勝手に入ってきて、
場所を取り合ってる列強達。遊ぶくらいなら許してもいいが、取るのは許さない、と
李鴻章は強い姿勢で臨んだが、それでも彼らは奪い合う。
そんな列強達は、珍妃の死で何を見て、何を思うのか。

この物語は中国があげている悲鳴なのだ。
列強に人間扱いされてない中国人たちの。当時の、中国という国の。
人間扱いされないことの哀しみ、悔しさ。
5千年の歴史を持つ偉大な国なのに、どうしてこんなことになってしまうのか。

つうか、特に日本、何様って感じ。ちょっと前までおまえらも丁髷結ってたよね?
古代には卑弥呼が漢に政権認められて喜んでたよね、その恩を忘れたか、とか、
説教したくなります、当時の日本。ちょっとだけ早くに維新ができただけやのにね。

まあそれはともかく。
そういう大きな流れに感動しつつ、珍妃とその夫、光緒帝との愛情にも感動する本書。
二人は今の私から見たら仲の良い普通の夫婦で、二人で朝から新聞を読んで語り合って、
お互いだけを愛して過ごしていた、それだけなのに、女性は学がいらないのに、
珍妃が皇帝をそそのかしたみたいに言われてしまう。
仰天したのが、皇帝の正室も側室も、その夜お呼びがかかったら、素っ裸にされて
毛布かなんか?にくるまれて中が見えないようにして、皇帝の部屋に運び込まれるんだって。
覆いを取ったら一糸まとわぬ女性がそこに、・・・・って、なにそれ。
落ち着いて考えたら笑ってしまいます。その時は普通に読んでたけど。
側室達がお互い嫉妬しないように、誰が呼ばれたかわからなくしてるらしいんだが、
光緒帝はその古い決まりを破って、堂々と珍妃のところにいって、愛し合った。
そんなのそれが当たり前やんねえ。って感じなんだけど、そこまで当時の女ってのは
ある意味人間じゃなかったのかな、とか思う。男性と対等でいてはいけないってこと。
でも、珍妃は普通に対等に生きてしまった。それがねたみを買い、あいつに殺された、
こいつに殺された、と憶測を生む羽目になる。

長い歴史を破るのがいかに大変か、この本は当時の視点でそれを私たちに伝えてくれる。
その時代にいたかのように、私たちは憤ったり悲しんだりしながら、本を読み進めていける。
「蒼穹の昴」からこの作品までずっと引き続いて、私は19世紀末の中国にいて、
そこの価値観に染まりながら読んでいたように思う。
長い長い歴史、当然のようにある不思議な慣習、でもそれを破る列強勢力、
変わらないといけない人達の混乱。同じようにその時代にいて、変わっていく中国を
目の当たりにしているような、そんな読書は哀しくもあり幸せでもあった。

祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり、・・・なんてこともつぶやいてみたり。
諸行無常、よね。人も国も、無理矢理変わらないといけないこともある。むなしいなあ。

二人の悲恋には泣ける。そこは浅田次郎、泣かせの本領発揮。
哀しすぎて救いがなさすぎるけど、二人の愛は本物だった。
しかし、「蒼穹の昴」を読んだばかりの私としては、李春雲と蘭琴のエピソードに
涙腺をやられた。二人の長い歴史、どうして宦官にならざるを得なかったのか、
それがわかるだけに・・・。うう。つらいけど、こういう関係を人と築けたらいい。
いや、・・・・複雑。こんなつらい時代はない方がいいです。はい。
| comments(3) | trackbacks(2) | 01:26 | category: 作家別・あ行(浅田次郎) |
コメント
このお話は切なすぎますよね…ざれこさんが書いていらっしゃること、すごくわかります。そう、こんな時代ないほうがいいんです、ほんとに。
| chiekoa | 2007/03/26 11:59 AM |

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?????????ヲ???????
| airfare | 2007/02/02 3:47 AM |
珍妃の井戸 [浅田次郎]
珍妃の井戸浅田 次郎 講談社 2005-04 列強諸国に蹂躙され荒廃した清朝最末期の北京。その混乱のさなか、紫禁城の奥深くでひとりの妃が無残に命を奪われた。皇帝の寵愛を一身に受けた美しい妃は、何故、誰に殺されたのか?犯人探しに乗り出した日英独露の高官が知った、
| + ChiekoaLibrary + | 2007/03/26 11:58 AM |
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