本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「邪馬台国はどこですか?」鯨統一郎
邪馬台国はどこですか?
邪馬台国はどこですか?
  • 発売元: 東京創元社
  • 価格: ¥ 693
  • 発売日: 1998/05
  • 売上ランキング: 32908
  • おすすめ度 4.5


この本にはあまり、というか全く関係のない話なんだけど、
今プレステ2の「信長の野望」にはまりまくっている。
戦国時代の大名になって、農村とか作って国を富ませつつ、近隣諸国を攻める
シミュレーションゲームだ。とりあえず武田信玄になりすました私は、
せっせと今川や織田や徳川を滅ぼし、今川義元を信長の部下にしてみたり、
明智と織田の鉄砲連合軍を作ってみたり、家康も秀吉も登用したり、とやりたい放題。
さて、信長たちをあごで使って、上杉も北条も倒して日本征服や、くはは、
と、王者の気分でいた夜の12時。息子の義信に謀反を起こされ、家康、信長、秀吉、
更に古参の部下真田まで持って行かれてしまった。「おのれ、義信許すまじ!」と
キレまくって土地を取り返しまくっていたら朝の4時。息子と真田を追いつめて
首をはねてやったが、怒りが収まると「息子よ・・真田よ・・・」と
ちょっと哀しい気持ちになり、そして安らかに寝た。あほすぎます自分。
今は信玄も死んでしまい、勝頼の世になってテンションが上がらないので、
明智に家督を譲ってやって天下を取らせるのもまた一興。とか思っている。
既に娘は明智の嫁にやってるしね。また明智がイケメンなんだわ。これが。

決まり事である歴史が、このゲームではあっさり覆ってしまう。それが面白くてねえ。
これで武田が天下を取ると、きっと武田家が歴史書を作るのだ。
そして歴史が武田の視点で、武田に都合の悪いことは抹殺され、改ざんされて、
ゆがめられて、綴られていく。
歴史は勝者が作っていく。だから、真実をうつしているとは、限らない。
そんな歴史を、突拍子もない視点で切り崩していくミステリが、本書。
(と、無理矢理本の感想につなげてみる。ちょっと無理ありすぎ。)

とあるバー。世界史全般を専門にしている大学の美人助手の静香、教授の三谷、
そしてライターの宮田が常連客。バーのマスターの松永は静香が気になっている。
そこで宮田が歴史に関する珍奇な説を展開し、研究者のくせに保守派で
常識的な事実を信じている静香と、真っ向から対立する。
美人だがかわいげのない静香の、そして私たちの普段信じている歴史認識が
がらっと覆る、そんな快感がたまらない、ミステリ短編集。
ミステリ?って気もするが、歴史的「謎」がここにある。謎解きだからミステリだ。

例えば邪馬台国はどこにあるのか?畿内説、九州説に分かれて議論されているけど、
宮田はそれを一蹴、「東北だよ」。一同唖然。「どうして東北なのか言ってみなさいよ」と
静香がキレて、宮田は冷静沈着に静香の反論を一蹴、東北説を納得させてしまうのだ。

これ読んだ最初は、「うわー、東北だったんだ!」と私はあっさり信じ込んでしまった。
他の短編もそうだ。織田信長の死の真相とか、聖徳太子は実はいなかった、とか、
全部頭っから信じ込んでしまったのだ。
しかし翌朝、「・・・・そんなわけないやん」と苦笑い。なんだかそんな短編集。

とりあえず最初は「おおおっ」と信じてしまう。信じさせるだけの材料を揃えて、
納得させられてしまう妙なパワーがある。でも、翌日考えるとね、
「ま、そういう考え方もありだよねー」っていう笑いに変わっていくのだ。
だってねえ、歴史を編纂した人達だって、自分の偏った視点で歴史を綴ったわけだけど、
この著者、鯨統一郎氏がまた自らの視点で語った歴史に過ぎないんだから、
どっちを鵜呑みにするわけにもいかないじゃないのよ。
事実なんて、結局誰にもわからないのだ。いかに説得力ある説をでっちあげてるか、
それがこの本のおもしろさだと思う。

手法としては、文学部史学科4回生の卒論と似ている。・・・私の卒論と。
私は卒論を書くときに、今はこう信じられているけど「実はこうなんじゃないか」と
思って、文献を調べてみるうち、何となく「実はこう」な材料が集まってきてしまった。
たとえるなら、警察が無実の人を犯人にしてしまうようなものだ。
あいつ怪しい、と思って物証を探っていると、あいつが犯人な風に思える証拠が
案外集まってくるもんじゃないか?
奇抜な説でも、視点を変えて文献をあさればなんとなく証拠は集まるし、
実証できた気になる。あとは反論をつぶしていくだけ。
私の場合は実証できた気になって調子に乗っていたら、本当に気のせいだったみたいで、
担当教授にけちょんけちょんにやられたけど、この本ではそんな愚は犯していない。
大量の資料をうまく抽出して、自らの奇論を展開する材料にうまく配しているのがすごい。
反論もちゃんとつぶしてるし。

この1短編を書くのに、どれだけの文献をあさったのかと思うと途方にくれるくらいだが、
これだけの材料を難しくせずに素人にもわかりやすく、しかも奇抜なネタを展開して
歴史への浪漫を広げていく。確か、文章内で宮田を「歴史エンターティナー」と
呼ぶ場面があったと思うけど、まさに歴史エンターテインメント、痛快作品だ。

この「邪馬台国はどこですか?」という短編、第3回創元推理短編賞に応募して、
そして最終選考で落ちた作品らしい。でも、惜しいと思った編集者が拾い上げて、
この短編集にまとめあげたんだそうだ。その編集者の見る目に拍手。
で、その時受賞した作家は、私の知らない人。鯨統一郎の方が今知名度が高いってのは、
なかなか皮肉な話でもあるし、またそれも痛快である。
| comments(5) | trackbacks(7) | 00:02 | category: 作家別・か行(鯨統一郎) |
コメント
本当に歴史に詳しい人でも、楽しめる本なんですね。よかった!
一瞬、信じちゃうんですよねー、本当に。
宮田の説得力はすごい。詐欺師になれますね(笑)。

もっともっと続編が出てほしいけど、
書くのに費やす労力を考えると、贅沢はいえませんね。
でも、せめてもう一冊くらい、読みたいなあ。
ではでは♪

| ゆうき | 2006/09/13 12:58 AM |

ゆうきさん
ゆうきさんの記事が読むきっかけでした。いつもありがとうです。面白かったです。つうか、私は史学科だけど歴史の詳しいことは綺麗さっぱり忘れてしまい、歴史モノを素直に楽しんでますよ(笑)どうだか。

確かに延々とバーでの会話を聞いていたい気はしますね。そう、でも労力がかかりすぎて作家さんに気の毒かも・・。これだけ調べて大変なのに、軽く読まれてしまってそもそも気の毒かもしれない(笑)けど、私はその軽さが好きですけどね。
| ざれこ | 2006/09/13 1:08 AM |

僕もこの本大好きですよ〜。
内容もそうなんですが、何より出てくるつまみが!
美味いアテで酒飲みながら、趣味的なことをああでもないこうでもないとやりあうのは、
ほんとに至福のときでございます。
ま、僕の場合底の浅いアホ話に終始するわけですが。

でも、最近文系の飲み友達がいないのが悩みのタネ…。
野球とかサッカーとか、中学生レベルのシモネタとか、もう堪忍してくれえ…。
| ふゆき | 2006/09/13 10:03 PM |

痛快でしたか、よかったよかった。
読んでいてあっさり「そうかも」と思わせてしまう論理展開が、
実に何とも心地良いですよね。
私もバーカウンターで話を聞きたいぞ。
| 菊花 | 2006/09/16 10:32 PM |

ふゆきさん
つまみですか(笑)私は酒を飲まないのであれなんですけど、酒飲みながらあんなに理路整然とやれるもんですかねえ。でもとても楽しそうだったし、美味しそうでした。
私も歴史談義とか出来る友達はもうなかなか・・。子どもの話とかばっかりですよ(苦笑)

菊花さん
オススメありがとうございました。とても面白かったです。そう、あっさり騙されてしまうのが驚き。ありえないのに(笑)
| ざれこ | 2006/09/17 3:48 AM |

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