本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「サマータイム」佐藤多佳子
サマータイム
サマータイム
  • 発売元: 新潮社
  • 価格: ¥ 420
  • 発売日: 2003/08
  • おすすめ度 4.5


突然ですが、これを読み終わって聴いたのは一枚のCD。

My Favorite Things
アーチスト: John Coltrane
posted with Socialtunes at 2006/08/21


ここに作中に登場する「My favorite things」も「summertime」も入ってるのです。
ちょっと「summertime」はコルトレーンがアレンジしまくってて
原形とどめてない感じがするけど、あの有名な曲かあ。と聴き入ってました。
でもボーカルものが聴きたいかも。

「My favorite things」はサウンド・オブ・ミュージックでの有名なナンバーだけど、
「ダンサー・イン・ザ・ダーク」でビョークがアカペラで歌うのが
すごく印象に残ってます。もうあとは絶望しかない、そんなところで、
彼女は「私のお気に入り」を歌うのです。ものすごく、切なかった。
って、何でいきなりジャズ談義なのか?この本のタイトル「サマータイム」は
夏の物語という意味と、この「summertime」という曲がかかってるからです。
全編に、力強いピアノのジャズの音が、流れてます。そんなイメージです。
でもその曲たちは、なんだかほのかに、物悲しいんですよね。
サマータイムって、爽やかなタイトルに似合わず、なんて哀切なメロディなんだろ。
夏の終わりを歌ってるんでしょうか。もう戻らない、あの夏の日、みたいな・・
歌詞を知らないから憶測ですが。

私の大好きな曲、「My favorite things」も出てきます。「9月の雨」という曲も
出てくるのだけど、ここは私は残念ながら薀蓄をたれられません。
手持ちのCDになかった・・・。残念。

つうかどんな話やねん、というと、
小学生の姉、佳奈と弟の進が、ある夏の日に出会った少年、広一くんは、
事故で片腕をなくしていた。でも自信たっぷりに泳いで、
右手だけで力強く「サマータイム」を弾く広一くんに、進も、そして佳奈も、
惹かれていったのだ。そんな彼らの夏の日々を、それぞれの視点で描く4編。

広一くんにはジャズピアニストの母がいて、彼もピアノに才能があって、
でも腕をなくしてしまって、それでも強く生きていこうとしている。
自転車には怖くて乗れなくなったけど。佳奈が支えてくれても、乗れなかったけど・・・

そんな広一くんの影響で進と佳奈の姉弟も変わる。人生が変わるほどの
出会いを彼らはしているのだけど、でもそのことに彼らはなかなか、
気づいていない、ような気がする。あっという間に過ぎてしまったあの夏の日、
あの頃を境に、あの出会いを境に彼らは動き出していたのに、
彼らはゆっくりとそれに気付く。

二度と戻らない夏の日が、哀愁あるメロディとともに私にぎゅっと切なさをくれる、
でも読み終わるとまだ、あのキラキラした日々は残っている。
なんかどんどん感想がくさくなっていくけど、まあそんな余韻を残してくれる、
そんな気がする本でした。いいなあ。
曲を聴いてしまったから余計かもしれない。
この小説で流れてる曲は、思った以上に、切ないメロディだから。

あ、出てくる大人たちが皆ステキで、子どもたちに負けないくらいステキで、
ある意味子どもみたいな大人たち、なんか好きでした。
特にセンダくんがいいです。ださいんだけど、調律でピアノを生き返らせてくれて、
で、佳奈にもすごく対等に接してくれてる気がする。
佳奈はセンダくんと話すうちに、目をつぶっていた広一くんへの思いが溢れて・・・

で、またページを思わず戻してしまいます。構成がまた、すごくうまいんですよね。
連作短編なんだけど、彼らの成長を描いた一つの物語として読むと、
また味わいが深くなります。

佐藤多佳子さん、いいですね。初めて読みましたけど、これからちょっと、
この作家さんの積読もどんどん読みたいな。優しくて切なくて温かい。ステキでした。

追記
今、「September in the rain」を(ituneの試聴で)聴いてみたら、
切ないというより、優しいスローナンバーでした。いい曲だなあ。

で、作中に出てくるジョージ・シアリングの9月の雨も見つけました。
(広一くんがお母さんに「彼みたいに弾いてよ」と言った、盲目のピアニストです)

ベスト・オブ・ジョージ・シアリング
アーチスト: ジョージ・シアリング
売上ランキング: 36236


HMV試聴←試聴だとちょっとしか聞けないのがつらいな。
| comments(9) | trackbacks(9) | 02:08 | category: 作家別・さ行(佐藤多佳子) |
コメント
佐藤多佳子さん、いいですよね。
続編の『四季のピアニストたち』もぜひ!

『黄色い目の魚』もとってもいいです。
積まれているでしょうか。
| | 2006/08/22 6:57 AM |


『九月の雨 四季のピアニストたち 下』
が正しいタイトルですね。
| | 2006/08/22 7:20 AM |

 初めまして。

 横から口を出すようで、申し訳ないのですが…偕成社から出た単行本では、4編が『サマータイム』と『九月の雨』の上下巻に分かれて収録されていましたが、新潮文庫から出た『サマータイム』には、4編が併せて収録されていたと思います。

 わたしも、『黄色い目の魚』大好きです。
| 柊ちほ | 2006/08/22 8:40 AM |

そうなんです、柊ちほさんもフォロー下さいましたが、文庫では2冊が1冊にまとまっているようです。一気に読めて420円(笑)。ステキです。

黄色い目の魚、まだ積んでないんですよね。今から積みます(笑)他の佐藤さんの本は積んでるんですけど。
これから佐藤さん、がんがん読みたい感じです。
| ざれこ | 2006/08/22 8:51 AM |

はじめまして。エンジュと申します。
コルトレーンのアルバムがあったので、いきなりコメント投稿してしまいました。
最近、このアルバムをCDケースの奥から見つけだして、聞いたばかりなので、つい嬉しくなりました。
と思って記事を読むと、とても佐藤多佳子さんの本に興味が出てきました。読んだことがない作家なので、一刻も早く読んでみたいとうずうずしています。
いきなりのコメント失礼しました。
| エンジュ | 2006/08/24 11:57 AM |

こんにちは。TBさせていただきました。
ざれこさんは「smmertime」の曲のほうも聴いているんですね。うらやましいです。

私も「ダンサー・イン・ザ・ダーク」、観ました。
観たのは小学生の頃だけど、「私のお気に入り」は聴きなれた曲だったので、「そこでこれ歌うの?」と思った記憶があります。
作中で歌われる曲だとか、使われる曲って、曲名や歌詞の意味を知っていると思いがけないほど強く印象に残るものってありますよね。

今度、「summertime」のCD探して聴いてみようと思います。
| ふぇるまーた | 2006/09/16 8:28 PM |

エンジュさん
返信遅くなってごめんなさい。
コルトレーンいいですよね。サマータイムはでもコルトレーンのあのバージョンより、誰かけだるい声の女性がしっとりと歌っているバージョンの方がこの本には合うような気がしましたが・・

ふぇるまーたさん
はい、曲も聴いてます。コルトレーンのやつはちょっとアレンジに凝ってる感じだったので、シンプルな歌モノのやつも聴いてみたいです。
「ダンサー・イン・ザ・ダーク」で「私のお気に入り」が流れるシーンは強烈でしたね。胸が締め付けられる気がして、忘れられません。辛すぎて二度と観たくないですけど、すごい映画でしたね。
| ざれこ | 2006/09/17 3:18 AM |

あの一日からはじまったものを、それぞれが大切にあたためていたというのに、じーんとしてしまいました。
構成もいいですよね。最後にもう一度「サマータイム」のラストを読み直してしまいました。

ざれこさんはジャズにも詳しくてうらやましいです。すぐには曲がわからなくていちいち調べたのです・・。
| june | 2007/01/07 10:36 PM |

★ こんばんわ。
佐藤多佳子作品の主人公は私の子供たちよりも年下。なのに主人公に同化して若返って読んでいます。少し前の記事ですが、私も最近読んだので、TBさせてもらいます。よければ読んでください。
| やまけん(肩の力を抜いて) | 2007/11/09 11:15 PM |

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