本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「最後の恋」
最後の恋
最後の恋
  • 発売元: 新潮社
  • 価格: ¥ 1,575
  • 発売日: 2005/12/20


今ipodにはまってるんだけど、itune Music Storeで、iMixっていう、
誰かが作ったお気に入りの曲がオムニバスになって売っている。
いろんな曲調、いろんなところから曲を出していって、全体のトーンも統一して、
さらに全曲はずれなし、こんなiMixが作れたらなかなか楽しいだろうな、と
私は夢見つつもなかなか、手が出ない。

いや、本の話だ。
この作品集は、「最後の恋」を共通のテーマに、タイプは違うけど旬である今時の歌姫が歌う、
ボサノバあり、4ビートあり、ロックあり、ポップスありなミックス盤、みたいな小説集。
何故か全体は統一されてて、まるで一枚のアルバムのようで、
でもそれぞれの曲は際立ち、はずれがなくて、心地よく聴ける。
イントロの三浦しをんのポップな音に引き込まれ、そしてラストの
角田光代の静かなバラードに癒され終わる。そんなミックス盤である。
よく集めたねえ。いいねえ。レベル高いねえ。
春太の毎日/三浦しをん
麻子と春太は一緒に住んでる。モテモテの春太に、麻子は「パイプカットしたら」と
辛辣だが、そういう麻子だって男を家に連れ込んでるじゃないか。春太は不満だ。
と、「おおっ?」という導入部でつかみOKだが、状況がわかってきてからは
その驚きすら、ふふっ、って感じの笑いに変わる。微笑ましいわ〜。春太、かわいいわ〜。
お話は普通なんだけど、読後にほかほかと温かくなるような物語。

ヒトリシズカ/谷村志穂

「海猫」は積んでますが、初めて読みました。谷村さん。しっとりとした文章を書くなあ。
山に登ることが多く、年に1度しか会えない恋人を待つ女性の心理を描く短編。
しっとりと切なく、上品な官能が漂う。ヒトリシズカという花があるらしいが、
まさにその花の名前がぴったりな作品。
わりと幸せな感じのものが集まったこの作品集の中で言えば、
狂気をはらんだ恋を描く、異色の一作でした。いかにも最後の恋って感じで、切なかったな・・・。

海辺食堂の姉妹/阿川佐和子

エッセイ等執筆されてるのは知ってましたが、読むのははじめてです。阿川さん。
テレビとか出ててもいい感じだよねー。賢いのに微妙にボケてて。
ほんわりとしつつさばさばとした雰囲気が魅力の一編。
海辺でひっそりやってる食堂の姉妹の物語。明るくてモテモテの姉、引っ込み思案の妹。
姉は妹を心配しているが、妹が寝込んだ日に妹の私生活が明るみに出て・・・。
うーん、妹やってくれましたな。苦手なタイプかも・・・。姉が可哀想、と思っちゃったけど
ちゃーんとステキな結末にもってってくれてます。
頑張ってたら、誰かが見てくれてるもんですよねー。

スケジュール/沢村凛

スケジュールをたてて正確に実行するという長所を持った妙は、自分の人生に
ついても綿密にスケジュールをたてはじめた。恋愛して、結婚して・・・、
でもスケジュールを覆さざるを得ないことが。恋愛はやっぱり、思ったようにはいかない。

この話ですごくいいなあと思ったのは、スケジュールをきちんと達成できるその特技を、
学校の先生が褒めてくれて、その特技が主人公の中の一つの太い芯になっていること。
ナウシカの1シーンで、腐海の下に綺麗な水がある空間があった、その空間みたいに、
底の方に確固とした自信のようなものがあって、それをアイデンティティと友達は呼ぶ。
それがすごく、羨ましかったんだ。私。なーんにも取り柄が無くても何か一つ、
そうやって誇れることがあれば、まっすぐに生きてけるように思うんだよなあ。

小学1年生の時に、担任の先生が私の詩を褒めてくれた。なんか、カッコウが他の鳥の巣を
奪って卵を産んで、カッコウの雛が他の鳥の子を突き落とすらしい、という知識を得て、
「カッコウはひどい奴だ」みたいなことを書いた、どう考えてもくだらない詩だったんだけど、
何故か先生が絶賛してくれたのは今でもすごく覚えている。
今でも自分の文章力に対してだけは根拠もなく自信を持ってしまってるのは、多分そのせいだ。
でもそのころからなーんにも成長してない気もするけどね。漢字は忘れてってるし。
スケジューリング能力より明らかに、自信としては弱いのも困りもの。

そういう風に誰かに、澄んだ泉みたいな何か確固たるモノ、を与えたり与えられたり、
そういうのってステキだなってすごい思ったのでした。
この本だけやたら感想長いな。しかも本筋からはずれてるような。はは。

沢村凛さんは男か女か今までわからなかったけど、
これを読むときっと女だなと思います。
女同士の関係とか会話とか、あんな感じだよなーって思うので。

Last*love/柴田よしき

やはり柴田さんはストーリーテラーなのか、一番引っ張られて読ませる物語だった。
キャリアウーマンとしてやってきた主人公、友達の結婚退職で動揺したり、
過去の恋愛を思い出したりしている。ばりばりと働いてたけど、仕事が嫌いだ、と
気づいてしまう主人公。なんかわかるなあ。
結婚も、好きだから結婚するのか、結婚したいから好きになるのか。
適齢期の私にとってその葛藤も身に染みる。
主人公には結婚するけどそう好きでもない男がいる。その男とのやりとりが
微笑ましくて、私も嬉しくなった。結局好きになれたら、それでいいよね。

最近友達で見合いをした子がいて、その人との結婚を考えているみたいで、
写真がメールで送られてきた。「いい人そうね」としか言いようがない写真だったし、
今までの彼女の好みとは違うような気もしていたが、でも彼女は結婚に向けて、
ひた走ってるようだった。その人の価値観は様々だし彼女がそういう風に考えを変化
させたのは多分、歳のせいだろう。それは哀しい。
でも、それでも、彼女が結局その人と本当に愛に溢れる家庭を築けたらいいな。
なんてことを思いながら読み終えた。

わたしは鏡/松尾由美

大学の文芸部の雑誌編集長である主人公、ある日ロッカーにあった、
誰が書いたのかわからない小説を見つける。
美容院の鏡が主人公であるその小説は、鏡がある人に恋をしていた・・。
きっと現実になぞらえて書いたに違いない。片想いの先輩が書いたのか、と
哀しくなる主人公だったが・・。

ミステリ仕立てで読ませます。最近松尾さんの長編を読んだところですが、
他の人と同じなようでいて何かが全然違うような、不思議ミステリアスな
雰囲気を持った作家さんですね。ますます興味がわいてきました。
まあ、今回のミステリのオチはなんとなく読めますが。
オチが読めようがなんだろうが、切なかったです。最後の恋かあ。

キープ/乃南アサ

驚くかもしれませんが、乃南アサさんを読むのも初めてです。
柴田よしきさんと区別ついてなかったんだけどね・・。しばらく・・。
とりあえず積んでるのを何か読んでみよう。
行きつけになったバーでマスターと会話しながら女性が自らを回想する、
そのシーンだけで成り立ってる小説なのに、うまいですねえ。
初恋で傷ついて、本気な恋をできなくなってしまった主人公の
心の揺れが描かれてます。キャリアウーマンを主人公にもってきたあたり、
やっぱり柴田さんと似てますか?偶然ですよね。

初恋って誰しも一度はやるだろうけど、いい思い出ばかりでもないんですよね・・。
自分の初恋として認定されているのは小学校5年生のときの同級生ですが、
あれは単なる憧れみたいなもので、ただひたすら楽しかった。
初めて、本当に苦しくなったり自分が醜く思ったりしたのは高校のときだったな。
多分、高校の同級生のあの白デブが私の本当の初恋、なんであろう。
ちえ、小学校の同級生の彼の方が余裕でかっこよかったわよ。
・・やっぱり小学校ってことにしとこ。初恋の思い出は美しくありたい。

おかえりなさい/角田光代

最後に君に、僕の大学のころの恥ずかしい話をしよう。
アルバイト先で出会った、老婆のことだ。老婆はいつも「おかえりなさい」と
言って、僕を家にあげてくれた・・・

最後にこれですか。すごい作品集だなあ。
でもなんだろう、最後の恋の果てにあるもの、をこの短編で見た気がしました。
恋なんて、燃え上がるのは一瞬で、あとは愛に変わるだのいろいろ言うけど、
恋した人とずーっと一緒に暮らして、毎日一緒にご飯を食べて、ずっと食べて、
淡々と食べ続けて生活していく。その長い長い恋の果てのあまりの長さを、
この作品で一瞬にして追体験したような、それは恐ろしいけどステキなもののような、
そんな、なんともいえない深遠な気持ちになりました。
決して後味のいい話でもないのに、この作品集の最後を締めくくるに
ふさわしい物語だったと思います。
この作品全部が何か大きなもので、包まれたような気がしました。
そして、私たちの普段の恋愛、楽しかったり苦しかったりする恋愛たちまでも。
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