本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「しをんのしおり」三浦しをん
しをんのしおり
しをんのしおり
  • 発売元: 新潮社
  • 価格: ¥ 460
  • 発売日: 2005/10
  • 売上ランキング: 19545
  • おすすめ度 5.0


1ヶ月も前に読んだので内容はだいぶうろ覚えなんです。
病院の待ち時間とか、あいてる時間にちょっとずつ読んでいった、しをんさんの爆笑エッセイ。
なんか、日常の中で当然のようにそこにある、みたいな状態でずっとしをんさんの
話につきあっていた感じです。当時。

なんでもおもしろおかしく眺めて妄想をたくましくしているしをんさんを見てたら、
こうやって気の持ちようで毎日楽しく過ごせるんだよな、と思ったり。
あとがきでしをんさん自身も「自分の妄想で誰かが楽しくなれば」的なことを
書かれていましたけど、そういう意味では効果覿面、生活上のスタンスすら、
影響を受けてる感じがします。何事も笑い飛ばせー。っていう。

そうそう、ボンサイダーのネタは笑った。お店で一人噴き出してしまいかなり恥ずかしかった。
盆栽を眺めてゴレンジャー(しかも男ばっかり!)を連想できるのなんか、
しをんさんとそのお友達だけです。はい。

ま、もともと男2人見たら○○と思って妄想する、といった習慣が私にはないので、
しをんさんのマネをそのままするのは無理なんだけど、例えばこんな風かしら、と
私の行きつけの美容院をネタに妄想してみた。
もうここからは感想じゃありません、影響された上の妄想です、はい。お許しを。

行きつけの美容院にはイケメンが2名いた。
保坂尚輝が谷原章介風に振る舞っている風(何それ)の店長、佐藤(仮名)、
醤油顔で同い年のイケメン副店長鈴木(仮名)。私は鈴木副店長が担当してくれた。
カットが上手だからずっと通っていたのだが、ある時鈴木が
「僕、独立するのでそっち来て下さい」と言う。その日の鈴木はそわそわしていて
感じが悪く、鈴木を無視する佐藤も感じが悪く、微妙な雰囲気。

その後、鈴木の店が開くのを待っていた私だが、髪が伸びても伸びても告知が来ないので、
仕方が無く鈴木がいない店に切りに行った。店長の佐藤が切ってくれることになったが、
佐藤はカットはまあまあだがナルシストで、カット終了後、私がもうちょっと切ってくれと
言おうとしたまさにその時、「俺ってカット上手いよねー」と発言。もう佐藤には頼むまい。

アシスタントから、まだ鈴木の店はできていないらしいとちらっと聞いたが、
佐藤は鈴木の名前は一切出さない。私が前鈴木の客だったと知ってるのに、全く出さない。

そして数ヶ月後、鈴木の店ができるとDMが届き、私はまた髪が伸びていたので、
開店の日に押しかけた。御祝いの花がたくさんおいてあったが、前の店からの花は一切無し。
普通社交辞令で贈るよねーとか思いながら、私は髪を切られていたのであった。
なかなか面白い美容師業界の骨肉の争い。

これを、しをんさん風に妄想。

____________________________

やっと店が開店した。知り合いがたくさんきてくれて、鈴木は一日あわただしく過ごした。
夕方を過ぎて、前に見た顔の客がやってくる。前の美容院で切っていた丸顔の女だ。髪が多い上に「髪を減らせ」しか言わない、面倒な客。少し前に、別の美容院で長かった髪をばっさり切ったようだ。前の美容院だろうか?シャンプー後の髪に触れてカットを確認して、鈴木の手は一瞬止まった。これは、きっと佐藤が切ったのだ。佐藤の癖だ。確信した鈴木は胸苦しくなりながら、また手を動かし始めた。
最後の日の佐藤の姿を思い出す。もう半年、会っていない。

鈴木が店を去る日。鈴木が片づけを済まして奥のロッカーから出てきたら、鏡がずらっと並ぶ広い美容室で佐藤が一人、マネキンを相手にカットの練習をしていた。鈴木の方を見ない。鈴木は息苦しくなりながら、つぶやいた。
「店長、俺、もう行きます。・・・・長い間、お世話になりました」
「・・・・ああ」
佐藤はそれでも鈴木を見ない。鈴木は黙って佐藤を見つめる。佐藤の髪を切るはさみの音だけが店内に響く。ずっと見ているうちに、鈴木の内からあふれ出るものがあった。鈴木は絞り出すようにつぶやく。
「店長、・・・こないだの夜のことは、すいません」
「・・・」佐藤は黙ったままだ。
「でも、俺、どうしても、気持ちが抑えられなくて」
「いいんだ」
佐藤は強い声で鈴木を制した。
「そのことはもう忘れろ。俺も忘れる」
「店長・・」
「悪かったな、あれから独立を促したり、冷たく当たったりして。俺もちょっと、動揺したかな」
佐藤は手を止めて、自嘲的に笑った。
「店長には、迷惑だったんでしょうね、俺のいったこと、全部。わかります。店長には奥さんもいるし、いくら俺らがずっと一緒にいたからって、そんな」
「結婚式、きてくれてありがとうな」
佐藤は鈴木の言葉を遮って言った。
「いえ、そんな、当然ですから」
「嬉しかった。でもな、式場でおまえを見たときに、もう俺はいつかおまえとは離れないといけない、と思ったんだ」
「・・・え?」
「いつまでもおまえと一緒にいたら、俺もおまえもダメになる、俺は結婚してしまったし、ずっと一緒にはいられない。仕方ないことなんだ。俺はあのときそう思った」
佐藤はずっと下を向いて喋っていた。まるで独り言みたいに。
「俺は結婚式の間、ずっとおまえばっかり見ていた。嫁さんじゃなくて、な。お恥ずかしい話だよ」
「店長」
「だから、いつかはこうなる日がきたんだよ」
佐藤はやっと顔を上げた。まっすぐに鈴木を見る。
「あの夜言ってくれたことは、嬉しかった」
「・・・店長」
鈴木の目から涙がこぼれる。二人の時は止まったかのようだった。鈴木の目の涙だけが、落ちていった。深海のような沈黙の中、お互いの思い出が店内にあふれ出す。美容師学校時代、一緒に開業したこの店、初めての客、夜はこうやって、二人でカットの練習をした。そんな、長い日々を、二人は思い出していた。
沈黙を破ったのは佐藤だった。佐藤はまた、マネキンのカットに戻る。二人の時間は終わった。
「もう行けよ。これから俺たちはライバルだ。客はがんがん取ってくれ。楽しみにしてる」
「・・・はい」
「開業しても教えてくれなくていい、祝いにも行かない。もう、俺たちは他人だ」
「・・・・わかりました」
「がんばれよ」
佐藤はもう、鈴木を見なかった。鈴木はそんな佐藤に深く一礼し、店を出た。

鈴木はふと我に返る。目の前の鏡には、自分と丸顔の女が映っている。店内の雑誌の、エビちゃんOLの30日コーディネートのページを似合いもしないのに熟読している丸顔の女。佐藤から取った客。
この女に、佐藤よりいいカットをしてやろう。俺たちはもうライバルだ。
鈴木はハサミを強く握り、カットを再開した。

____________________________

・・・・ぷっ。かゆいわ。よう書けたわ、自分。
しかし、あの夜何があったか、までは想像力が及びませんでした・・・

しをんさん、いつもこんなこと考えてるのか。・・・すごいけど、あほやわ。
改めて実感する私なのでした。つうか、おまえがあほや、とか言われそう。
| comments(4) | trackbacks(1) | 14:17 | category: 作家別・ま行(三浦しをん) |
コメント
「本を読む人々」からやってきました。

イケメン二人の悲恋物語、傑作でした。
ちょっとジーンときちゃいましたよ。

こ、これって、もしかして真実だったりして・・・ね。
| くまま | 2006/10/13 10:12 AM |

いい話じゃないですか…!(キラリ光る涙)。

私の行ってるところは…女の人ばっかりでつまらないです。(そういう問題!?)
| chiekoa | 2006/12/26 12:36 PM |

キャァァァ!!ざ、、、ざれこさん!(笑)
美容師のイケメン2人の悲恋話ホロリとしましたぁ(笑)
私もこちらの本読んでから、男2人組を見つけると妄想しますが、途中でどうしても挫折です(^^;)しをんさんスゴイって思います(笑)
あ〜私的には最初の話。弟君のスーツを買いに行く話しで吹き出しました!!!
あと、高倉健さんの話!! 健さんファンの私。 「あぁ。健さんならこういう生活をしていそうだ・・・(ウットリ)」
しをんさんのお友達も超楽しいですよね!!

今しをんさんのエッセイ買い漁ってます(笑)
| gyaaaaちゃん | 2007/12/03 2:12 PM |

くままさん
本人達読んだら激怒すると思うから怖いです(笑)

chiekoaさん
今度イケメン美容室に行って妄想してくださいな!

gyaaaaちゃんさん
ですよね、しをんさんの妄想は凄すぎます・・。負けます・・・
エッセイほんまおもろいですよね。私も元気もらってます。
| ざれこ | 2007/12/08 2:58 AM |

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しをんのしおり [三浦しをん]
しをんのしおり三浦 しをん 新潮社 2005-10 クリスマスイブには、しをんさんのエッセイを読もうと心に決めていました。はい。 Boiled Eggs Onlineに連載中のエッセイ「しをんのしおり」を書籍化したシリーズの第三弾。一冊目が『極め道』で、そこから『妄想炸裂』
| + ChiekoaLibrary + | 2006/12/26 12:33 PM |
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