本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「ホテルカクタス」江國香織
ホテルカクタス
ホテルカクタス
  • 発売元: 集英社
  • 価格: ¥ 540
  • 発売日: 2004/06/17
  • おすすめ度 4.5


集英社文庫版で読みましたが、挿絵がまず素晴らしいですね。
佐々木敦子さんとおっしゃる画家さんがふんだんに挿絵を入れておられて、
これ表紙もそうなんですよね。階段の絵。最初は一瞬写真かと思ってました。
光の具合が柔らかくて実に自然で。でもよく見てると現実にはありえない美しさ。
好きだなあ。この絵。

で、お話は、きゅうりと帽子と数字の2、の物語。
江國さんの豊かなイマジネーションにはいつも驚かされますけど、
数字の2って。きゅうりと帽子まではかろうじてわかるけど、数字の2って。実体?
でも彼は「数字の2」としか言いようがない人(人なのか)なのですが。
割り切れないことが嫌いで、でも優柔不断で。なんか読みすすめていくと、
ああ彼は「数字の2」なのだな、ってすごくすとんと納得できる。

きゅうりだってそうです。「身も心もまっすぐ」で、「運動が好き」で「単純」、
いかにも太陽の光を浴びた美味しそうな(失礼)きゅうりです。
いつも金の鎖をつけてるらしいのがなんか笑えます。

そして帽子は「ハードボイルド」なんですよ。あの帽子ですよあの帽子。
なんだか投げやりで渋い感じです。帽子。

彼らは全然タイプが違うんだけど、たまたまホテルカクタスっていうアパートに
住んでいて、ひょんなことから仲良くなります。
そしてきゅうりの部屋で語り合ったり、競馬に行ったり旅に出たりして、
ゆったりと過ごします。

これがね、一郎と次郎と三郎がひょんなことから出会って、ってことになると、
一郎はどんな奴だったかな、とか、私たちが把握するまでにだいぶかかると思うんです。
でも、きゅうりと帽子と数字の2、なら、誰がどんな性格なのか、
不思議とあっさり入り込んでくるんですね。最初の不思議な感じがとっぱらわれると、
その3人がそこにいるのはひどく自然で、で、彼らはとても普通に、
それぞれの悩みやら癖やらを抱えて、そこに存在しているのです。

でも3人は知ってます。3人でいるととても楽しいし優しくなれるけれど、
自分達は所詮一人だということも、孤独も、よく知っています。
だからこそ彼らは彼らといる時間を大事にします。とても大事に、ゆったりと過ごします。
でも時は確実に過ぎていって移ろっていきます。
その寂しさを抱えながら過ごす日々は、とてもはかなくて、優しくて、切ない。

音楽を聴くシーンがあります。3人で、それぞれの思い出の曲を持ち寄るんですね。
で、聴いてみる。思い出がある人はそれにひたるけれど、他の人にはそれがわからない。
で、3人は結論を出す。「音楽は、個人的なものなんだ」

100人がライブで全く同じ音を聴いていても、それぞれが全く同じように
聞いているかなんて、わからないんですよね。
もちろん同じ時間は共有している、でも、ある人はギターをしている人で、
ギターの音色ばかり気になってるかもしれない、ある人はその歌詞を聴いて
昔の失恋を思い出しているかもしれない。
100人がひしめくライブでそんなことを思ったらなんだか哀しくなるけど、
この3人が感じているのは寂しさとは少し違う感じです。
お互い個人的な世界を持っているのはわかっていて、その世界を抱えたまま、
同じ場所に、そこにいることの大切さ。そんなことを彼らは感じている、気がします。

突飛な発想で、きゅうりと帽子と数字の2、の物語だけど、
テーマはとても普遍的で私たちが共感しまくれるもので、でもあえて人間じゃなくて
そういう不思議な存在たちを主人公にしたことで、その「個」が際立って、
より寂しく、より優しく、より私たちにダイレクトに伝わるというか。そんな本です。

短い時間にすぐに読めてしまいましたけど、ずっと余韻にひたるような、
優しくてステキな一冊。贈り物にもいいかもしれません。
で、これから、誰かと何か音楽を聴くたびに、その孤独と、誰かと聴いている
その嬉しさと、そんなものを感じていきたいな、と。

そして、たくさんの大事な友達と過ごした日々、もう絶対戻らないけれど
そのときそこに確かにあったその濃密な空気、いろんな友達とのその時間を
思い出したりしたいな、と思ったりもしました。
友達にはいつでも会えるけど(滅多に会えなくなった友達もいるし、
もう連絡も取らない友達もいるけど、でも会おうと思えば会えるはず)、
あのときあの時間の濃密な感じは、そのときだけのもので、もう絶対戻れないのです。
だからこそ美しくて、優しい思い出なんだろうと思います。

| comments(1) | trackbacks(6) | 00:54 | category: 作家別・あ行(江國香織) |
コメント
トラックバックありがとうございました♪
この挿絵、本当に素敵ですよね。
小説の淡い感じの雰囲気や、そういう光の加減がきれいに描かれていると思います。

登場人物(?)たちのあの感じも大好きです。孤独だけど、だからこそ一緒にいるのが大切、という感じがすごくいいんですよねー。
時々読み返したい本であります。
| kyoko | 2006/08/01 12:45 PM |

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ホテルカクタス [江國香織]
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