本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「北斎殺人事件」高橋克彦
北斎殺人事件
北斎殺人事件
  • 発売元: 講談社
  • 価格: ¥ 700
  • 発売日: 1990/07
  • おすすめ度 4.5


「写楽殺人事件」から続く、浮世絵シリーズ第二弾である。3部作になっているようで、
このあと「広重殺人事件」へと続く。「広重」が泣ける、とどこかで読んで、
3冊買って読み進めている。
浮世絵をテーマにしただけでそんなにつながりはないのかと思っていたのだが、
かなり前作の設定を持ち越した作品だった。順番間違えなくて良かった。

浮世絵、特に写楽を研究していた津田は、写楽の絵に関する事件に巻き込まれ、
今は地元盛岡で高校の教師をしている。そこに、北斎に関する論文の原稿を
本にしたいから、詳しく調べて補完して欲しい、と有名な出版社から依頼が来る。
しかも、調べて欲しいのは北斎隠密説だという。
久しぶりに浮世絵の世界に戻れる、と、専門でもない北斎の研究に励みながら、
依頼してきた画廊の社長、執印摩衣子に惹かれていく津田。

そのころ、ボストンでは日本人の老人が殺される事件が起こっていた。
事件について調べる現地の刑事は、彼が画家であったことをつきとめたが・・・
前作はデビュー作で、気負ったようなところも多かったが、今回はすっかりこなれて、
すんなりと引き込まれた。ボストンと日本を交互に描くやり方とかも興味を惹くし
(まあ、ボストン部分はだいぶ少なかったが)。前作は土曜ワイド劇場風だ、とか
書いたけど、今回はそこまで安っぽくはなかったかな?うーん・・どうかな。
土曜ワイドと言われればそんな気もするし。あ、年末2時間半スペシャルみたいな感じ(おい)

まあ多少事件が安っぽかろうが、犯人がすぐわかろうが、別にいいのよね。
浮世絵師の正体を探る方が断然面白いこのシリーズは、なんつうか、日本史の授業を
思い出させる。それも高校までの受験日本史じゃない、大学の。
私は日本史の授業がわりと好きだった。受験日本史じゃ学べない、歴史の深いところが学べた。
少し見方を変えたり少し掘り下げたりするだけで、全く違う世界がそこに開ける気がした。
それがすごく楽しかった。
今回も、一人の浮世絵師の人生を掘り下げて、その謎を解いていこうとする主人公達の
論の流れが、すごくわかりやすくこちらに提示されてて、北斎が実は隠密であった、
なんて説がどんどんと実証されていって、これ読んだだけだったら「間違いないよね」って
力説してしまいたくなるくらいだ。
まあ、残念だったのは、幕末の要人の名前をそこまで詳しく知らない私は、
「こいつが黒幕なのか!」って主人公が驚いてるシーンで「え、誰?」と
ぽかーんとしてしまう有様だったので、ついていけなくて哀しかったんだけどさ。
(一応、日本史学専攻なんですが。楽しかったはずの授業も既に忘れ・・・)
せめて勝海舟とか黒幕にして欲しかったな。よく知ってるから。って無茶なことを言うけどね。
ちゃんとそういう論があるんだろうから、勝手に著者がでっちあげるわけにもいかないよね。
私が知らなかっただけで、どうやら北斎=隠密説はわりと知られた説らしいし。
芭蕉もそうだったって説もあるみたいで、こりゃ「芭蕉殺人事件」も読みたいな、ってなくらいで。
つうか、そんなこと言い出したらきりがないか。

貧乏のまま90歳まで生き抜いた浮世絵師の北斎、赤富士のイメージしかないけど、
これを読んでいると一人の男がふと現れて消えていくようで、不思議な感慨を持った。
ただ歴史に名を残したというだけで、彼は自分の人生を生きただけなのだなあ。

しかし現実の事件では、まあ犯人は途中でわかるものの動機が不明だったんだけど、
動機がわかってもあまり感動とか、納得とか、共感とかもない感じだった。
ただ、かわいそうな人が一人いるなあ、踏んだり蹴ったりやなあ、とは思ったけど。

たくさんの人が出てくるんだけど、前作同様、現在を生きるキャラには血肉が通ってない、というか、
2作目でなじみの津田くらいかなあ、なんか感情移入できたのは。
塔馬という研究者が今回中心になって推理をするんだけど、彼もまだ私にはなんか、
あまり他の人と読み分けができないというか、像を結ばないというか、そんな感じだ。
何でも知りすぎてるから、津田の疑問を全てこの人が答えてしまうのも、
ちょっと興ざめだったかな。一緒に文献調べて「おお!」とかだったら、良かったんだけど、
すぐ答えちゃうからさ・・。ちょっとご都合主義的な気もしました。

時代の古さが服装に現れていた。オシャレなはずの女性が、肩パット・・・・。
80年代のトレンディドラマを想定して読みました。

さて、広重は泣けるらしいんだけど。期待していたほど、このシリーズにはまりこめない
自分をもてあましています。でも歴史的考察は非常に面白い。その部分だけ読みたいくらいだ。
| comments(0) | trackbacks(1) | 18:14 | category: 作家別・た行(高橋克彦) |
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