本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「古書店アゼリアの死体」若竹七海
古書店アゼリアの死体
古書店アゼリアの死体
  • 発売元: 光文社
  • 価格: ¥ 680
  • 発売日: 2003/09
  • おすすめ度 4.5


待望の新刊、「猫島ハウスの騒動」が発売されましたよ。
はいこちら。読みましょうね。

オンライン書店ビーケーワン:猫島ハウスの騒動

ということで、新刊への予習もかねて読んでみた、葉崎シリーズ第2作目。
葉崎市という架空の市で起こる事件を描いたシリーズです。
前回「ヴィラ・マグノリアの殺人」をやっと読んだところだったけど、
そこに出てくる人々もある人は引続き、ある人はちょびっとずつ、
ある人は噂だけ、とたくさん出てきて、それもこの作家らしく楽しめたし、
葉村晶シリーズとの接点も見つけてにんまりしたり。相変わらずサービス精神旺盛。
だから新刊も楽しみ。予習の甲斐があるのがいいのよねえ。
会社は倒産、泊まったホテルは火災に遭い惨劇を見る、ついてない相澤真琴は
とにかく海に行って「バカヤロー!」と叫びたかった。そして葉崎市の海岸に
たどり着き、さあ叫ぼうと思ったら、死体が打ち上げられてきた・・・。

事情聴取を受けて途方にくれていたら、古ぼけた古本屋「アゼリア」を見つける。
入ってみたら70代の老婆前田紅子にロマンス小説クイズ(かなりマニアック)を
出され、古本の雑誌を編集していた真琴はテストに合格してしまい、
もうすぐ入院するという紅子の留守中、店を預かることになってしまい・・

その頃、FM葉崎では、社長の前田満知子がわめくので、社員は全員ネタ探しに
外に放り出される。DJ兼制作の千秋も外で話を聞いてると、どうやら死体は、
前田家の家出した息子らしいのだが・・・?前田家は葉崎市の名門、
そこのお家騒動か?どんどん巻き込まれていく真琴や千秋、そして更なる死体が・・

相変わらず多くて個性的な登場人物が気ままに軽い会話を繰り広げつつ、
事件が進んでいくさまは歯切れ良くて気持ちがいい。
いきなりよそ者の真琴がさくっと入り込んでも違和感のない語り口、
そしてとんとんと進む物語。のんべんだらりと会話しているようでいて、
めまぐるしく状況は変わっていて、こちらを飽きさせない。
ユーモア溢れるエピソードも満載で、棺おけの上のかんぴょうのエピソードが
やたら面白かったなあ。

キャラも個性豊かなんだけど、紅子さんがすごかったなあ。ロマンス小説専門の
古本屋を道楽でやってる、超大金持ち。彼女のロマンス小説に賭ける熱意と
豊富な知識量。すごいわ。で、なんで彼女がこんなもんにはまっちゃったのか、まで
ちゃんと読者に説明してくれる。婚約者に先立たれ、ロマンス小説を読みながら
独身を通すなんて、すごくロマンチックじゃない?まあ、本人はさばさばしすぎてるけど。

しかしこのロマンス小説の膨大な知識が全部若竹氏の知識なんだから、
どれだけ本読んでるねん、って話ですよ。若竹氏はミステリにもかなり精通している
はずなんだけど、オールジャンルOKですか?しかもかなり深いとこまで。
私の読書量なんかもうすいませんって感じです。

でも、どうにも私はロマンス小説に興味を惹かれず、積読は増やさなくてすんでますが。
今のところ。紹介されてるの絶版本も多いし(なぜそこまで知ってるのか)。

と、ストーリー以外のところでも充分楽しめる本書なんだけど、
ラストはあっさり終わるかと思いきや、きましたね、ひねりが。
この作家さんだしページ配分からも覆されるのは予想できて、
そこらへんからちょっとページを繰る手が慎重になったりしたんだけど、
やっぱり予想外の落としどころでやっぱり綺麗に騙される私でした。
ラスト全部読み終わったらやっぱりぞっとしたりして。
こ、怖いわ。さすが。

若竹氏は長編は苦手なのかな、と何気に思っていた私。
「悪いうさぎ」とかでも、短編でみられた歯切れのよさがどうも鈍くなる気がして。
長編の葉崎シリーズで、登場人物が長編でたくさん出てくるのは、無駄を殺いだ文章だから、
人物を増やしてドラマを増やして、短編の集合っぽい群像劇にすることで
歯切れのよさを維持しているのかな、と余計なことも考えてみたわけだけど、
「ヴィラ・マグノリア」ではその、短編の集まり、みたいな描き方が功を奏して面白く、
これはまたちょっと違う、というか、これはそういうよさも踏まえつつ、
なんていうかなあ、ちゃんと長編として一つの流れが太くあるような。
紅子さんのキャラが一本ぽーんと通ってたからかもしれないなあ。
私が今まで読んだ若竹さんの長編の中では一番シャープで歯切れよく、
一番面白く読めた1冊でした。

| comments(3) | trackbacks(3) | 02:24 | category: 作家別・ら、わ行(若竹七海) |
コメント
はじめまして。以前からこちらのブログをちょくちょく拝見しておりました。初めて書き込みさせていただきます。
ざれこさんの小気味良い書評、大好きです。他の方もおっしゃってましたが、自分の中でもやもやとしていた事柄をざれこさんが書評の中でしっかりと言葉にされていて、そうそう!と思うことがよくあります。

私も若竹七海さん好きなんです。全体的にドライでブラックなんだけれど、決して情が薄いわけではない感じがします。
まだ全ての著書を読んだわけではないのですが、初めて呼んだ若竹作品がこの本だったので、つい書き込みさせていただきました。
紅子さん、いいですよね!私もこんなかっこいいおばあちゃんになりたいなぁ。かなりしびれました。

これからもブログ楽しみに拝見させていただきます。長文失礼しました!
| カンナ | 2006/07/23 4:02 PM |

カンナさん
コメントありがとうございます。小気味いいですか。うわーなんか嬉しいなあ。私ももやもやしながら感想書いてるんですけど(笑)、そういっていただけると吐き出した甲斐もあります。またよかったらお越しくださいね。

若竹さん、そうですね。ブラックなんだけど情に厚いんですよね。登場人物が妙にいい奴で必死になったり(特に女)して。
紅子さんかなりしびれますよね。ロマンス小説オタクにはなれないまでも(笑)こういう粋なおばあちゃんには私も憧れます。
| ざれこ | 2006/07/25 11:52 PM |

その新作が図書館に入るのを今か今かと待っているのですが、なかなか…っていうか買えって感じですかね?うーむ。そうするとシリーズそろえたくなっちゃうんだけどなぁ。
| chiekoa | 2006/07/26 1:44 PM |

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