本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「クワイエットルームにようこそ」松尾スズキ
クワイエットルームにようこそ
クワイエットルームにようこそ
  • 発売元: 文藝春秋
  • 価格: ¥ 1,100
  • 発売日: 2005/12
  • 売上ランキング: 13475


図書館に予約して半年。やっと読めた。半年も待つなんて人気作家みたいやけど、
単に図書館がなかなか入荷してくれなかったのだ。入荷だけで4ヶ月待って、
1冊しか入れてくれなかったので、予約5番目の私はそこから2ヶ月待つ。
なんでこんなに入るの遅かったんだろう。芥川賞候補作やのに。ただの芸能人本と違うのに。
この本よりあとに出た「沖で待つ」は早々に入ったのに。しかもたくさん。
これが芥川賞受賞作と候補作の違い?なんかいややなあ。
と、図書館に文句はいっぱいあるが、じゃあてめえで買えと言われそうなので黙る。
自分が素っ裸でゲロでうがいしている夢をみていた明日香、起きたら精神病院の閉鎖病棟で
拘束されていた。どうやらオーバードーズで胃洗浄までやらかし、そのあげくに危険だと
ここに放り込まれたらしい。私はまともだよ、と思いつつそこで2週間、
病棟の患者と過ごした明日香は、大切なものを見つけて去っていく。そんな物語。

ゲロでうがいっていやよね。うわ、今想像しただけでゲロ吐きそう。
いきなりこんな女子に嫌われそうなシチュエーションで勝負張った松尾スズキ、
そしてそのまま突っ走る。独特のリズミカルな文体はちょっと他では読めない感じで、
重いテーマを軽くギャグにしてしまうセンスはただものじゃない。何度も笑いそうになってしまった。
でもそれでもそこはかとなく流れる哀しみ、笑いながら哀しくなるこの微妙な空気も、
松尾スズキの持ち味だと思う。

出てくる精神病患者がすごく個性的。
ヴィヴィアンタムのジャージ着てる女が出てきたり、たかが服装でその女の人柄まで
全て言い当てたりしてて(ヴィヴィアンタムのジャージよ。超派手よ。しかも高いよ。
それを病院で着てしまう女よ。なんかそれだけで想像つくやん、いろいろ)
各患者のキャラがたってて、ビジュアルもすぐ想像つくし、患者達の息づかいが聞こえるようだ。
病気も、拒食症とか自分の髪燃やす人とか、わかりやすい人もいるんだけど、
「え、この人病んでる?」と主人公も一見迷うほどのまっとうな感じの人もいる。
けどその人達もやっぱり病んでいて、彼女たちを描く松尾スズキの筆致が、
彼女たちの哀しさもちゃんと浮き彫りにしてしまう。
拒食症で意識朦朧としている子に、超難しい本やジグソーパズルを差し入れてしまう親、
そして、その子のためにみんなでジグソーパズルを仕上げる患者達。
「私は拒食症じゃない、胃が小さくなっただけ」と強がる患者が、トイレで吐くのを
みてしまったけど見なかったことにするとか。
そこはなんだか哀しくて、でもとても優しい空間なのだ。

狂気しかないその空間で、明日香は一人まともでいようとする、けどやっぱり明日香も、
心を病んでいる。っていうか、疲れてる。
明日香の抱える事情が少しずつ明らかになっていくんだけど、現実から抜け出したくて
薬がぶ飲みして何が悪いよ、なんて私も共感できてしまうところが怖かった。
普通だよ、病んでないけどさ、現実に倦んでるんだよね。で、やっかいな女なんだよね。
その、自分の厄介さを自覚して、そこから逃げないと決めた明日香の決意は
哀しくも清々しかったし、それにもなんか、共感できた。

同棲相手の鉄ちゃんもやたらキャラがたってたなあ。「ものすごくいい奴」感が
ありありと漂ってたので、最後のシーン、「長い罰ゲームだったね」と明日香が言うところは
切なかったです。でも、印象深いシーンでした。

私も自分で「私、うざいよなあ」って思うときがけっこうあるんですよね。
過去いろいろうざいことしたしね。あまり自分がどううざいかを詳細には書きたくないので
(それこそゲロでうがいするくらいの苦痛を伴う)そこははしょるけど、
自分がうざい女って気づいてなかった大学の頃、いろいろ言ってくる先輩がいて、
その人のやり方も子供じみてたけど、言ってることは正しくて、
で、それでちゃんと自分のうざさ具合を自覚することが出来て、今では感謝してる。
自分の欠点ってなかなか見たくないから、こんな風に病院で拘束されなくても、
なんか荒療治は必要なのかなあ、なんて思うし、正面から言ってくれて良かった。
結局はそのうざさも含めて自分なわけで、うまく折り合ってやってくしかないよね。
なんて思ったりもする。

だから、最後に明日香が達した「うまく折り合おうとする感じ」が共感できたというか、
見習いたいというか、そんなことも思った。

さて、松尾スズキ。昔、友達の旦那が絶賛してて、「本は全部読んだ」なんて力説してたけど
当時はよくわからずに「え、あの普通のおっさんよね、ちょっと薄毛の」(失礼)くらいにしか
思ってなかったけど、どんどんはまっちゃってる自分がいます。
映画とかで見つけても注目しちゃうし(こないだ「陽気なギャングが地球を回す」に出てた)
もしかして私ってファンになっちゃったのか?とか思ったり。
ファンになって悪いわけでもないんだけど、戸惑ってしまうのは何故だろう・・・
それはともかく、次の小説作品も楽しみです。芥川賞、十分いけるレベルだと思う。
本人がいるかいらないかは、ともかく。・・偉そうですいません。

今度リリー・フランキーの「東京タワー」が映画化されるらしいんだけど、
(別に見なくてもいいか、と思ったら主演はオダギリジョー。見なければ・・・!)
その脚本を担当するらしいです。
松尾さんがかむと、どんな色が加わるんだろう。楽しみだな。
| comments(7) | trackbacks(7) | 14:46 | category: 作家別・ま行(松尾スズキ) |
コメント
こんばんわーん。松尾スズキ読んだことないんですよ……。超ヘヴィそうなんだけど、これ興味があるなあ。にしても、痛そうだな。こんな痛い系は覚悟しておかないと、再起不能にされる可能性があるからな、と頭でっかちなことを考えております。

ううーん、やっぱあたしも図書館通おう。閉館が早いのが気に入らないけど!!!
| Shimako | 2006/06/14 7:56 PM |

笑わせながらも、芯には哀しさとか優しさがあって、恐るべし松尾スズキ!でした。
最後のシーンは切なかったですねぇ。でもきっぱりとして爽やかでもありました。好きです。
| june | 2006/06/14 10:31 PM |

Shimakoさん
おはようございます。松尾スズキ面白いですよ。独特のシュールな感じが私は好きです。この本も結局は痛いんですけど軽く書かれてるし前向きな終わり方なので、大丈夫かと思います。是非。
でも図書館って一度行ったら通い詰めちゃいますよね・・。私は今図書館離れ中(でも失敗中)

juneさん
そうですよね。ギャグ一辺倒じゃなくて哀しいし、深い世界観ですよね。恐るべしです、ほんま。次の作品も楽しみです。
| ざれこ | 2006/06/16 9:43 AM |

才能ある人ですね。まだファンになったとは言えないけれど、他の本も読んでみたくなりました。
TBさせていただきました。
| ひねもじら 乃太朗 | 2006/07/21 9:00 AM |

ひねもじらさん
私も「別にファンじゃないし」と言い訳しつつ既に3冊も読んでます。なぜ言い訳を?って感じですが。(笑)エッセイもかなり面白かったですよ。
| ざれこ | 2006/07/22 2:43 AM |

ごめんなさい。ちょっと、あまり評価できなかったです。って、こんなんばっかり続いてます。辛口なつもりはないのですが、やっぱり、辛口かなぁ。
ありがちな精神病の話でないということは評価すべきなんでしょうが、もう少し深みのようなものが欲しかったです。
爽やかな成長譚だとは思うのですが・・。
| すの | 2006/08/22 10:06 PM |

すのさん
そうですかあ。まあ、合わない本もありますよね。私は松尾さんのギャグセンスが合ってるみたいです・・。
| ざれこ | 2006/08/24 9:27 AM |

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