本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
<< July 2018 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>
<< 「夏期限定トロピカルパフェ事件」米澤穂信 | main | 「沖で待つ」絲山秋子 >>
# 「誘拐ラプソディー」荻原浩
誘拐ラプソディー
誘拐ラプソディー
  • 発売元: 双葉社
  • 価格: ¥ 760
  • 発売日: 2004/10
  • 売上ランキング: 21090
  • おすすめ度 4.33


どうでもいいんですけど5日で5冊本を読んじゃいました。新記録。
その記録更新がこの1冊。一日ですっかり読めちゃいました。長かったけど。

荻原さん、久しぶりに読みました。積読リストに挙げていたら、2人くらいの方が
勧めてくださったので、よし、読むか、と。
一時期自分の中で荻原浩が流行ってて、立て続けに読んだので、
ちょっと休憩してたんですけど、久々に読むとやっぱり面白かった。
系統としては「小鳩組」「オロロ畑」「ハードボイルド・エッグ」なんかに通じる、
ユーモアたっぷりの誘拐劇。ユーモアというか、オヤジギャグというか、
ぎりぎりすれすれのギャグ攻防にくすくす笑いながら、ひたすら楽しい読書。

荻原さんといっても「明日の記憶」もあれば「噂」もある、いろんなタイプの
作品があるわけですが、この系統の作品だととにかくもう安心。
主人公にはこれでもかとトラブルが巻き起こるわけですが、それがまた
ヤクザだの香港だの、命も危ない感じのトラブルなわけですが、
「ああ、荻原さんなら悪いようにはしないよ」と軽くあしらっちゃうような、
そんな安心感にどっぷりつかって読める。
どんでん返しとか、意外な結末とか、人間の闇の部分とか、そんなの求めて
読むのは見当違いで、とにかく予定調和的に楽しむために読む。
そんな読書を久々に楽しみました。いやあ、面白かった。

なんつうかここまで行くと時代劇的面白さだよね。水戸黄門とかあのへんの。
だいたい、登場人物は適度にえらいめに遭わされるけど、死んだりしないし、
最後は丸く収まるんだろうな、って安心して見ていられる、あの感じ。
あ、必殺仕事人はあかんよ、あれ絶対誰か死ぬから。あれは除くけど。
(余談だけど、最近の時代劇はなんか脚本複雑じゃないですか?
こないだ大岡越前見てびっくりしてしまった。お白州で騙しあいやってた。
あんなの、あかんわ。単純明快じゃないと。と私は思う。)

主人公は伊達秀吉。ひどい名前だ。これがまた途中のひねりできいてくるから
驚きなんだけど、それはおいといて、金無し女無し仕事無し、勤務先の社長を
殴って出てきてしまった彼は借金だけはある。もう死ぬしかない、と車で
山奥にこもっていろいろ死のうとするんだけど、全然死のうとしていない。
ガス自殺しようとしてガムテープがない、これで死ねないな、と一応コンビニで
チラッと探して「ガムテープくらいおいとけよ」と店員に嬉しそうに呟くと、
店員にガムテープを発見されてしまい、すごすごと車に戻る。
そのあまりの死ぬ気のなさがおかしい。最初っからおかしい。

で、戻ってみると車には男の子がぐっすり寝ていた。
その子はでかい家の子で家出してきたという、これは運がついてきた、
この子を誘拐してしまおう。秀吉は嬉々として、その子、伝助と道中をはじめるが、
伝助は埼玉を牛耳っているヤクザ、八岐組組長の一人息子だった・・・

そして伝助と秀吉の珍道中がはじまり、全く策のない秀吉の一挙一動に
ヤクザ達が翻弄させられ、香港マフィアも登場し、非番のはずだった警察官
黒崎までいつのまにか巻き込まれ、いろんな人に追われている秀吉は
何も知らずに息子の伝助と仲良くなっている。さて、どうなる?誰が勝つ?

父の愛を知らない孤独な秀吉、遊んでもらえない伝助が仲良くなるのは当然で、
彼らのどこかずれたふれあいは本当ほほえましいが、
一応悪役にあたるヤクザ側の動向も繊細に描かれていて、任侠=悪という
描かれ方は全然していないところが、この本の面白いところ。
桜田っていう幹部は「チェリーちゃん」なんて呼ばれてるし、
単純明快な遠藤が「毎日行ってるソープに今日は行ってない」なんて理由で
警察に事情を知られたり、ヤクザさんたちがまた怖いけど可愛い人が多くて、
彼らの人間模様もきっちり描かれてて、それが深みを増している。
伝助の父である篠宮も、ヤクザである前に父親である自分と葛藤して、
そしてきっと最後に秀吉を見て、これから、伝助との関係も変わるに違いない、
はっきり書かれていないけれど、今までの篠宮の書かれっぷりから、
なんだかそんなことも想像できちゃうくらいなのだ。
きっと二人でキャッチボールとかするんだろう。普通のオヤジみたいに。
いいじゃないか普通のオヤジでも。想像すると、なんだかかわいらしい。

そして、「悪いようにはしないだろう」という期待を全く裏切らない、見事な大団円。
気持ちいいくらいでした。
最後にちょっとほろっときちゃいました。秀吉の冴えない人生が、
たった3日の誘拐騒動で、きっと切り替わっただろうから。

軽く読めて、何も考えずとも読めるけど、ちょっと明日はいい日かもしれない、
そんな風に思える読書って、ある意味ステキな時間だと思います。
本を読んであれやこれや、人生について考えるのもいいけど、
こういう時間もいっぱい持ってたいな。いい時間を過ごせました。
| comments(4) | trackbacks(10) | 01:51 | category: 作家別・あ行(荻原浩) |
コメント
おはようございます。ざれこさん。
楽しく読まれたようでよかったです!
お勧めしたかいがありました(笑)

『技を盗むどころか、人のものを盗むようになって、さぞオヤジも、草場の陰で号泣しているだろう』なんて一文がありましたよね。
あまりにツボに嵌ってしまい、未だに忘れられません。
| ゆう | 2006/06/06 10:18 AM |

はじめまして。ざれこさん。
いつも「本を読む女。改訂版」をのぞきに来ています、伊坂幸太郎がお気に入りの大学生(♂)のワルツと申します。これからも時々コメントを残していきますのでよろしくお願いします。

「誘拐ラプソディー」ですが、母が購入しているのでいつか読もうよもう…と思っているのですがいまだに読めてないです(笑) 
夏休みに帰省したら読まなくちゃ。と思っています。

先月、僕も最初の5日で5冊(すべて米澤穂信さんのものです)というハイペースで読み始めたんですが、後半になってくると、中間試験があったりして結局14冊しか読めませんでした…。
毎月たくさんの本を読まれているざれこさんはすごいなぁと感心すると同時に、どうすればそんなにたくさん読めちゃうんだろう?なんて考えてます(笑)

| ワルツ | 2006/06/06 5:49 PM |

水戸黄門みたいな感じ
わかります わかります。
安心して読めて その上ちょっぴりホロリとさせてもくれて。
誘拐物もいろいろあるなか 面白かったです。
| ふらっと | 2006/06/06 6:46 PM |

ゆうさん
お薦めありがとうございました。楽しかったです。
そうそう、確かにそんな表現ありましたよね。「うまい!」って笑っちゃいましたよ。

ワルツさん
はじめまして。コメントありがとうございます。なんかそんなちゃんと挨拶されちゃったら緊張しますね(笑)
この本、お母様が買われてるんですか。ステキなお母さんだー。帰省したら是非。
本たくさん読んでるって、私も月に14冊も読めたら多いほうですよ。私は十数年前は不熱心な学生で本を読む暇だらけでしたけど、真面目な学生さんだと時間もないですよね。でも頑張って読んでください(笑)

ふらっとさん
わかります?水戸黄門な感じ。良かったー。誘拐ものもいろいろありますけど、ある意味すごいハッピーエンドでしたねえ、これ(笑)
| ざれこ | 2006/06/06 11:14 PM |

コメントする









この記事のトラックバックURL
http://blog.zare.boo.jp/trackback/523240
トラックバック
誘拐ラプソディー 荻原浩
些細なことがキッカケで仕事場の親方を殴り、車を盗んで逃走した伊達秀吉。 自殺を図ろうにもその勇気は乏しく、ひょんな事から出会った男の子を誘拐。 身代金を要求したが、男の子の親は・・・・。という、よくあるパターンのドタバタコメディサスペンス。 含み笑い
| かみさまの贈りもの〜読書日記〜 | 2006/06/06 10:14 AM |
「誘拐ラプソディー」荻原浩
タイトル:誘拐ラプソディー 著者  :荻原浩 出版社 :双葉文庫 読書期間:2006/01/24 - 2006/01/27 お勧め度:★★★★ [ Amazon | bk1 | 楽天ブックス ] 伊達秀吉は、金ない家ない女いない、あるのは借金と前科だけのダメ人間。金持ちのガキ・伝助との出会
| AOCHAN-Blog | 2006/06/06 12:03 PM |
(書評)誘拐ラプソディー
著者:荻原浩 伊達秀吉38歳。金なし、家なし、女なし。あるのは、借金と前科だけ。
| たこの感想文 | 2006/06/06 3:21 PM |
誘拐ラプソディー*荻原浩
☆☆☆・・ 雇い主を殴って金を奪い逃走する途中に、偶然拾った子どもを誘拐することにしたら、相手は物騒な人種で・・・。 というドタバタ誘拐狂詩曲。 はなから自分を誘拐して
| +++ こんな一冊 +++ | 2006/06/06 6:43 PM |
荻原浩(ハマりつつあります) 〜Me愛用中!
Windows 98、Windows 98 SE および Windows Me のサポートが 2006 年 7 月 11 日をもって終了するらしい。 http://support.microsoft.com/default.aspx/gp/lifean18 僕は未だWindows Me のパソコンを使っている。 いつまでも古いの使ってんじゃねーよ!てことですか
| 名盤! | 2006/06/09 10:44 PM |
誘拐ラプソディー/荻原浩
誘拐ラプソディーposted with 簡単リンクくん at 2006. 8. 5荻原 浩著双葉社 (2004.10)通常24時間以内に発送します。オンライン書店ビーケーワンで詳細を見る 荻原さんが得意とする中年男のダメっぷりを愉快に描くコメディー。
| たまゆらのつぶやき | 2006/08/05 7:15 PM |
「誘拐ラプソディー」/荻原 浩
   「誘拐ラプソディー」(荻原 浩著)【双葉文庫】      伊達政宗の“伊達、豊臣秀吉の“秀吉”。 その取ってつけた名前の主人公「伊達秀吉」は、金はない家はない女はいない、あるのは借金と前科だけのダメ人間。 金持ちのガキ・伝助と
| 京の昼寝〜♪ | 2006/08/10 8:46 AM |
tramadol
?????????ヲ???????
| tramadol | 2007/01/15 4:54 PM |
誘拐ラプソディー (荻原 浩)
主人公の名は伊達秀吉。 名前からして歴史上の、 有名な人物のような変てこな名前。 彼にあるのは前科、そして借金。 他には何もない、 全くのダメ男。 将来に絶望し、命を絶とうとまでに、 決心をしたものの だんだん決意から遠のいていく状況が コミカルに描かれて
| 花ごよみ | 2010/01/11 10:19 AM |
誘拐ラプソディー
誘拐ラプソディー (双葉文庫)作者: 荻原 浩出版社/メーカー: 双葉社発売日: 2004/10メディア: 文庫 借金と前科しか持っていない駄目男伊達秀吉。勤め先の親方をぶん殴り、金と車を奪って逃走し、己の人生に終止符を打とうとする。中々踏ん切りがつかないところに、子
| ダイターンクラッシュ!! | 2010/02/17 3:49 AM |
NOW READING
ざれこの今読んでる本
Categories
Comments
Trackback
Mobile
qrcode
Profile
Search this site
Sponsored Links