本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
<< May 2018 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>
<< 「夜市」恒川光太郎 | main | 「誘拐ラプソディー」荻原浩 >>
# 「夏期限定トロピカルパフェ事件」米澤穂信
夏期限定トロピカルパフェ事件
夏期限定トロピカルパフェ事件
  • 発売元: 東京創元社
  • 価格: ¥ 600
  • 発売日: 2006/04/11
  • 売上ランキング: 570


楽しみにしていたライブの行き帰りの電車で、楽しみにしていた
この本を手にとってみました。とてもいい感じの行き帰り、いい一日。
正直、頭痛くて電車では寝たかったんだけど、この本を読んでたら
頭痛まで跳ね返るくらいでした。やめられるわけないし。

とても面白かった「春期限定いちごタルト事件」の続編。
小市民を目指す小鳩くんと小佐内さん。夏休みが始まったと思ったら、
小佐内さんが地図を持ってきた。「小佐内スイーツセレクション・夏」
どうやら小鳩くんはそれに付き合わされるらしいのだが、
恋愛関係にはなく互恵関係、お互い小市民ではないのに小市民のふりをしているから、
お互いのストッパーのためにいるだけの二人は、夏を一緒にすごす道理もないはず。
でも小佐内さんは、当然のように彼を引きずりまわす。まるでつきあってるようだ・・・。
かわいい顔をした狼である小佐内さんのとても女の子らしい言動に
小鳩君はとても戸惑うのだった。何かある、絶対、何かある。
そして何かあるんだよな、実際。

何がよかったって、頭痛がしてて食欲のないときに読んでてよかったですわ。
これねえ、普段の食欲で読んでたら、ケーキを貪り食いたくなること間違いなし。
シャルロットっていうケーキが、もうね、すさまじく美味そうなの。
甘いものが苦手な小鳩くんが舌鼓を打ち、つい小佐内さんのいない間にもう一つ食べてしまおう、
なんて策を弄するくらいに美味いそのケーキを、すごく美味そうに書いてるの。
あー良かった。食欲なくてよかった。

と、連作短編のふりをした長編小説。最初はとてもかわいらしい。
シャルロットをもう一つ食べてしまおうと策を弄する小鳩くんと小佐内さんの
心理戦を描いた「シャルロットはぼくだけのもの」とか、
バーガーショップで出会って去っていった健吾が残した「半」という文字の
謎を解く「シェイク・ハーフ」とか、それらは一見、他愛ない短編に見える。
実際、雑誌に連載されたらしいしね。
でもラストまで読んでいくと、これが最初から最後まで一貫して、
長編小説だってことに気づくわけで。こういう仕掛けって大好きだなあ。
前作もそういう味付けだったけど、今回はまあ全部が
「小佐内スイーツセレクション・夏」だったわけで、一貫性が増している。
で、前作より断然面白いのだ。シリーズものって、だいたいが1作目の
インパクトを越えられないことが多いのに、これはすごいこと。

後半はきな臭い事件が待っている。薬物乱用で中学の時に補導され、
今もやりたい放題している石和とかいう女が、どうやら健吾の彼女の姉を
無理やり仲間に入れているようだ。で、その石和が動き出した。
標的は小佐内ゆき・・・。さて、小佐内さんの運命は、そして小鳩君は?

なんて書くと大団円に見えるけど、なんつうかなあ。ミステリとしては
非常によく出来てて、そりゃもうみくびってましたよ小佐内さんも小鳩くんも。
悪かったですよ。と謝りたくなるくらいの見事さ。
でもなんですかね、この溶けたフルーツパフェみたいな後味の悪さは。
結局、彼らは小市民にはなれないということなのか?いいのかそれで?
そもそも「小市民になりたい」なんて目標を掲げること自体、
傲慢極まりないんだけど、それに気づいてしまった二人。
これからどうなっちゃうんだろう。ああ、続きを、モンブランを、早く。

しかし小鳩くん、してやられたね・・・。かわいそうになってきた。

二人の関係は本当に面白い。彼らがどちらかを「信じてる」って時には、
普通の人たちが使う「あなたはそんなことしないよね」とかそういう意味で
信じてるわけじゃなくて、「あなたはそういうことくらいは、するよね」とか、
「あなたはそこまでいい人じゃないよね」ってな意味で「信じてる」わけで、
ここまでお互いを知り尽くしているこの二人って、そんじょそこらの恋愛関係より、
深いよねえ。なんて変な勘ぐりをしてしまったりします。

ま、でもあるよね。そういうこと。
私も「あいつなら必ず時間に遅れるだろう」ってある意味信じられてます。
で、その期待は大体裏切らないんだな。あかんやろ、自分。
| comments(16) | trackbacks(10) | 01:21 | category: 作家別・や行(米澤穂信) |
コメント
こんばんは。
この小説、すごく好きなんですが、
的確な感想、感動しました(笑)。

シリーズもののキャラクターが、
こんな目にあうというのが意外でしたが、
でもよく考えたら、エラリー・クイーンのように、
探偵的存在って、結局はこういう風に
打ちのめされることになるのかね、とも。
小鳩くんは、自らの小賢しさを省みて、
そうならないように努めてきたのになあ。
ざまあないね、と、ちょっと思ったり(笑)。

しかしホントに『秋期限定モンブラン事件』、
出るんですかね…?
| ふゆき | 2006/06/06 11:24 PM |

ふゆきさん
そうですねえ。ざまあなかったです・・・(笑)
ミステリとしてすごく面白かったし、こんな終わり方しちゃってこれからどうなるんだろう、とすごく楽しみです。
続編、米澤さんのサイトでは出る予定になってますけど、なんか微妙に弱気な書きっぷり?に不安になってきました。でも、きっと出ますよ。つうか出てくれ。
http://www.pandreamium.net/schedule/index.html
| ざれこ | 2006/06/07 12:17 AM |

>溶けたフルーツパフェみたいな後味の悪さは。
ラストにぴったりの表現です。確かに溶けてたし…
モンブラン、未定なんですね。
もう、絶対に書いてもらわなきゃ困ります。それも私の記憶が薄れる前にです!
| なな | 2006/06/07 11:07 AM |

おぉ!「秋期限定モンブラン事件」の情報、ここで初めて知りました!!
嬉しい!ありがとうございます。
なんといっても、「夏期〜」の最後でフラストレーションが溜まってしまって・・・
これで安心して今夜は眠れそうです(笑)
| もりちえ | 2006/06/08 11:49 AM |

ななさん、もりちえさん
これ、続編がないと気持ちが収まりませんよねー。早く早くーって感じですよね。
秋に出てくれればいいんですけど。別に真夏に出てくれてもいいんですけどね。早いほうがいい(笑)
| ざれこ | 2006/06/12 5:11 PM |

確かに後味は悪いですよねぇ。だからこそ続編が必ず出ると信じられるわけですが!

…でなかったらやけ食いしてやる。パフェ、食べてやる!(出ても食べそうですが)。
| chiekoa | 2006/06/13 11:20 AM |

ちえこあさん
パフェはとけないうちに食べちゃわないとですよね。フレークが入ってるのがたまらないわけですよ。あ、食べたくなってきた。
続編が出ても出なくても食いましょう、お互い。はは。
| ざれこ | 2006/06/14 12:01 AM |

こんばんは。
前作よりレベルアップしてましたね。謎解きも堪能しました。
「シャルロット」の小鳩くんは本当に可愛かったですね。
モンブラン、楽しみです♪
TBさせていただきました。
| EKKO | 2006/06/18 9:01 PM |

EKKOさん
ですよねえ、前回よりレベルアップ、だけど謎は相変わらず小さいのが多くて、笑えました。ケーキの数をごまかそうなんて。(笑)小鳩くんは、今回やられっぱなしでしたね・・。モンブランではどうなんでしょうか、楽しみですね。
| ざれこ | 2006/06/19 2:05 AM |

 ざれこさん、はじめまして。読書ブログをぽつりぽつりやっている吉田莉絵といいます。トラックバックさせていただきました。(合わせて、「春期限定」の方も)
 前作とは打って変わって、用意された周到な筋書きが、散らばっていて最後はすべて繋がる。という感じが、とても面白かったです。
「小市民」の擬態が破られた二人の今後の展開が、とても気になりました。秋季限定が楽しみです。(次回どんなスイーツが出てくるのかも楽しみです)
| 莉絵 | 2006/06/25 9:35 PM |

ざれこさん、こんにちは。
ラスト、すごいことになりましたね。
もう少し小鳩くんの推理劇が続くかと思って読み始めたら、まさかこんな展開になるとは思ってもいませんでした。
次回はモンブランなんですね。
後味のよさを少し期待したいです。

| 藍色 | 2006/06/27 4:08 PM |

莉絵さん
はじめまして。TBありがとうございました。
そうですよねえ、これから先彼らはどうなっちゃうんでしょうか?楽しみすぎます。秋には絶対出て欲しいですよね、モンブラン。ああ、食欲の秋・・・

藍色さん
ラスト、すごいことになっちゃいましたね・・。ほんとどうなるんでしょう。次は後味よく終わればいいですけど、この後味の悪さも癖になりつつあります(笑)
| ざれこ | 2006/06/28 1:31 AM |

ざれこさん、こんにちは ^^
頭痛くても読んでしまう・・・わかります!
わたしも、寝なくては寝なくてはと思いながら一気に読んでしまいました。
ミステリとして前作よりグレードアップしたのもさることながら、
スイーツの描写が非常に巧みで、食欲を刺激しますよね。
わたしもグレープフルーツののったシャルロットが食べたくなりました。
| tamayuraxx | 2006/07/01 6:55 PM |

tamayuraxxさん
そうそう、シャルロットがむちゃくちゃ食べたかったです。あの描写、最強でしたね。よだれものでした・・・。
それにミステリとしてさらに前進、で、モンブランが大変楽しみなのです。
| ざれこ | 2006/07/02 3:18 AM |

よけいかも知れないけど、わたしの知る限り

では、モンブランじゃなく、マロングラッセ

だよ。

ま、読んだ雑誌が間違いじゃなければ。
| 亜希。 | 2007/02/10 6:17 PM |

亜希。さん
なんか最初はモンブランって噂だった気がするんですが、最近公式サイトにマロングラッセって載ってた気がします。ありがとうございます。
いずれにせよ楽しみですねー。
| ざれこ | 2007/02/10 8:25 PM |

コメントする









この記事のトラックバックURL
http://blog.zare.boo.jp/trackback/523226
トラックバック
「夏季限定トロピカルパフェ殺人事件」米澤穂信
夏期限定トロピカルパフェ事件 米澤 穂信 小市民を目指す小鳩くんと小佐内さん、高校2年の夏の物語。互恵関係にある二人、夏休みに会う事なんてないはずなのに、小佐内さんが書き込みをした地図を持って現れた。どうやら小佐内さんの運命を左右する「小佐内・
| ナナメモ | 2006/06/07 11:07 AM |
「春期限定いちごタルト事件」「夏期限定トロピカルパフェ事件」米澤穂信
「春期限定いちごパフェ事件」内容(「BOOK」データベースより)小鳩君と小佐内さんは、恋愛関係にも依存関係にもないが互恵関係にある高校一年生。きょうも二人は手に手を取って清く慎ましい小市民を目指す。それなのに、二人の前には頻繁に謎が現れる。名探偵面など
| 日々是もりちえ | 2006/06/08 11:31 AM |
● 夏期限定トロピカルパフェ事件 米澤穂信
夏期限定トロピカルパフェ事件米澤 穂信 東京創元社 2006-04-11by G-Tools , 2006/04/18 小市民たるもの、日々を平穏に過ごす生活態度を獲得せんと希求し、それを妨げる事々に対しては断固として回避の立場を取るべし。賢しらに名探偵を気取るなどもってのほか
| 本を読んだら・・・by ゆうき | 2006/06/12 11:41 PM |
夏期限定トロピカルパフェ事件 [米澤穂信]
夏期限定トロピカルパフェ事件米澤 穂信 東京創元社 2006-04-11 小市民たるもの、日々を平穏に過ごす生活態度を獲得せんと希求し、それを妨げる事々に対しては断固として回避の立場を取るべし。賢しらに名探偵を気取るなどもってのほか。諦念と儀礼的無関心を心の中で
| + ChiekoaLibrary + | 2006/06/13 11:15 AM |
『夏期限定トロピカルパフェ事件』 米澤穂信 創元推理文庫
        夏期限定トロピカルパフェ事件 自分の困った性格を封印し、中学時代の失敗を繰り返さないように、周囲に影響を与えず、目立たず、つつましく生きる「小市民」を目指している、高校生コンビの小鳩くんと小佐内さん。甘いものに目がな
| アン・バランス・ダイアリー | 2006/06/18 8:52 PM |
夏季限定トロピカルパフェ事件
 前作、「春期限定いちごタルト事件」の感想で、小鳩くんと小山内さんは小市民を「擬態」している。と書いたのですが、「擬態」に「偽装」も重ねて、周到な筋書きまでも用意していたわけです。  春期限定では、ちょっと納得がいかないことが多少あったりしたの
| 白露書房 | 2006/06/25 9:17 PM |
夏期限定トロピカルパフェ事件、米澤穂信
イラストレーションは片山若子。 「春期限定いちごタルト事件」に続く小市民シリーズ第2弾。第一章、第二章はそれぞれ「ミステリーズ!」vol.13、vol.14に掲載。それ以外は書き下ろし。 前作の「春期限定」を先に読んでお
| 粋な提案 | 2006/06/27 4:09 PM |
[本]米澤穂信「夏期限定トロピカルパフェ事件」
夏期限定トロピカルパフェ事件 米澤 穂信 / 東京創元社「春期限定いちごタルト事件」の続編。 「春期限定〜」がとても面白かったので、早速読んでみました。 高校2年生になった小鳩くんと小佐内さんのひと夏の事件簿と いった趣でしょうか。 今回もとても面白か
| Four Seasons | 2006/07/01 6:32 PM |
米澤穂信 夏期限定トロピカルパフェ事件(創元推理文庫)
夏期限定トロピカルパフェ事件米澤 穂信 (2006/04/11)東京創元社 この商品の詳細を見る 「春期限定いちごタルト事件」に続く小市民シリーズ第2作。 夏休み、小鳩君は「小山内スイーツセレクション・夏」を片手に 小山内さんに甘
| Celestial Blue | 2006/09/12 9:54 PM |
夏期限定トロピカルパフェ事件
 小市民を目指してどうしてもなりきれない高校生二年生の二人、小鳩くんと小山内さんを描いた、青春スイーツミステリー「夏期限定トロピカルパフェ事件」(米澤穂信:東京創元社)。「春期限定いちごタルト事件」に続くシリーズ第二弾だ。  二人は、一緒に行
| 本の宇宙(そら) [風と雲の郷 貴賓館] | 2010/11/07 11:57 AM |
NOW READING
ざれこの今読んでる本
Categories
Comments
Trackback
Mobile
qrcode
Profile
Search this site
Sponsored Links