本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「写楽殺人事件」高橋克彦
写楽殺人事件
写楽殺人事件
  • 発売元: 講談社
  • 価格: ¥ 620
  • 発売日: 1986/07
  • 売上ランキング: 186413
  • おすすめ度 4.4


今読んでる本を彼氏に聞かれたので、「写楽殺人事件」と自慢げに言ったら、
「何、その土曜ワイド劇場なタイトルの本は?」と返された。
「え、でも、シリーズもので、次は「北斎殺人事件」で、最後は「広重殺人事件」なんよ」
とわけのわからない言い訳をしてみたところ、
「ますます土曜ワイド劇場っぽいやんか」と。うむ。おっしゃるとおり。

と、そんなタイトルのこの作品。江戸川乱歩賞受賞作。つまりデビュー作だ。
高橋克彦氏、かなり昔に「緋い記憶」を読んだきりで、それだけで凄い作家って
印象が貼り付いてて(確か直木賞受賞作だ)、私にとって大御所のイメージ。でもデビュー作。
この浮世絵三部作、「広重・・」が泣ける!という評をどこかで読んで、
広重を先に買ったら、実は三部作の最後の作品だった、とあとで知り、
慌てて最初の2冊を買ったという経緯がある。だから楽しみにはしてたんだけど、
でも土曜ワイド劇場。はは、テンション下がるっての。
浮世絵を研究している若手研究家の津田は、ひょんなことから購入した本に
謎の浮世絵師、写楽の名前が書かれた蘭画を見つけてしまう。
調査に乗り出す彼だが、彼のついている研究室の権威の西島と長年対立していた
在野の研究者が、その直前に自殺していた。津田は写楽の真相を解くとともに、
事件に巻き込まれていく。

困ったことに、途中まで本当に土曜ワイド劇場風。
写楽の謎そのものはむちゃくちゃ魅力的だったし、本当に面白かったけど、
展開はやたらご都合主義だし、疑問を感じたらヒントをくれる人がすぐ現れるし、
人物が皆謎を解くためのコマみたいになってるように思えた。人物像がはっきりせず、
誰が誰だかわかりづらいけど、台詞は説明調で、みたいな・・

謎を解くために岩手に行く津田に、津田の友人の妹が「私もついていく」なんて
津田の彼女でもないのについてきて、で、色っぽい雰囲気になるかと思ったら
ひたすら彼女に津田が写楽別人説を説いている。つまりはまあ、この女性、
冴子がどうも説明用についてきたキャラみたいに思えてしまう。読者視点キャラ。
重要人物のはずなのに、いい雰囲気にもならず旅行が終わり、それから彼女、
あまり出番がないのだ。だから余計そう思ってしまう。

ほか、出てくる研究者の男達や、骨董品屋、なんかが誰が誰だかわからなくなるような
ことが時々あった。人物描写が足りないのだ。津田が大発見をしたあと、
研究室の他のメンバーが津田説を奪おうとしたりと、研究者同士の争いも
興味深いが、その奪う奴の人物像が薄かったり、と、なかなか盛り上がらない。

それに犯罪の動機が複雑すぎてすぐには理解できない。津田が推理している段階では、
えー、そんな最初からそこまで計画できるか?なんて疑心暗鬼で読んだりしてしまった。
解決編にさしかかると、なんと時刻表まで登場し、「まさに土曜ワイド?」

ご都合主義だし、変に難しいし、やっぱりデビュー作だからかなあ。惜しいなあ。
なんて思ってたら、

最後、解決すると、すべてが俄然面白くなった。
読み終わると、なんか全部納得、なのだ。ご都合主義も。動機がくそややこしいのも。
最後の、真相を知る者の独白で、「うわ、これはこんなに複雑で凄い事件だったのか」
と、ぱーっと霧が晴れたみたいな気になる。

そのすごく凝ったプロットを、読んでる最中に自覚できなかったのは、ちと残念だったが。
そういう点ではデビュー作らしい、んだろうけど、でも霧が晴れたあとに
いろいろ考えると、この完成度はすごいよなあ、なんて思う。
写楽の謎と、殺人事件とが、ちゃんと緻密に関連付けられてるのだ。
写楽の謎は謎で、殺人は殺人で、どっちかがおまけ、ってことがないのだ。
それが一番凄いなと思った。

写楽はたった10ヶ月しかこの世に出てこないで、あとは何をしていたかわからない浮世絵師。
彼の正体は謎で、別人説がたくさん出ていて、津田が冴子に説明してくれたおかげで、
今までの説も理解できて、津田が発見した説がいかに凄いか、も読んでて理解できた。
すごく面白い題材だと思う。今までたくさんの人が挑戦してきたんだろうな。
「写楽」って映画あったよね、真田広之と葉月里緒菜で。そのあと不倫してたけど、
それはともかく、映画「写楽」がどんな説を採ってたか、とか、
なんだか気になってきた私でした。そういや、「写楽・考」で北森鴻が
なんかとんでもない説をぶちあげてた気がするな。大法螺、って笑ったけど、
わかんないよねー。だって謎なんだもんねー。

歴史の謎って、楽しい。
この本で平賀源内が重要なところに出てくる。平賀源内、江戸時代にエレキテルとか
作っていた変わり者の科学者兼作家で、日本のダ・ヴィンチって感じの人だけど、
私は彼には少し思い入れがある。小学校のときに読んだ「ズッコケ三人組」シリーズで、
三人組がタイムスリップして平賀源内に会う回があった。
その本が、内容は忘れたけど、子供心にすごい面白かったのだ。
悪役とされてる田村意次が、実は先進的な思想を持ったいい人だったとか、
そんなことも書かれてて、歴史ってのは一面から見ててもわからないんだな、
多面性が面白いんだな。なんて思った(子どもだからそこまで難しくは考えないけど)。
それからかもしれない、私が歴史を好きになったのは。思えば、平賀源内のおかげなのだ。
歴史の正解は1つではない。事実は一つでも、視点がかわれば変わるのだ。
だからこそ、面白いし、こんな歴史ミステリなんか、やめられないなあ。

| comments(0) | trackbacks(1) | 23:22 | category: 作家別・た行(高橋克彦) |
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(書評)写楽殺人事件
著者:高橋克彦 浮世絵の研究家・嵯峨が自殺と見られる死を遂げた。嵯峨のライバルで
| たこの感想文 | 2006/06/05 6:44 PM |
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