本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「カタブツ」沢村凛
カタブツ
カタブツ
  • 発売元: 講談社
  • 価格: ¥ 1,470
  • 発売日: 2004/07
  • 売上ランキング: 132,085
  • おすすめ度 4.5


初めて読む作家、沢村凛。
ゆうきさんがよかった、って書いてたので、それで借りてみましたけど、よかった。
ゆうきさんいつもどうもありがとうです。
こうやって本ブログの方々からいい本の情報を吸収できて、私は幸せです。

「カタブツ」ってタイトルの短編はないんだけど、普通で平凡なんだけど不器用な、
そんな人々が織りなす短編6編はまさに「カタブツ」な感じ。
もうちょっと楽に生きられるんじゃ?っていうようなことに悩んだりして、
日常を生きてる人達の、一見退屈にも読める作品集なんだけど、
各短編、落としどころが非常にうまい。退屈なラストを迎えるかと思ったら、
最後1ページで予想もしない方向にすとんともってかれて、毎回驚きっぱなしで。
いきなりいい方向に持ってかれて幸せになる話もあれば、
ずどーんと闇に落とされるような話もあって、バラエティ豊か。うまいなあ。

うまいからといって策に溺れてるわけじゃなくて、全体は優しさで満ちている。
不器用に生きている人達を見守る、そんな優しさ。
それは、私たちを見守る視線のようで、心地いい。

各短編の感想を。

「バクが見た夢」
こんなに温かくて優しくて爽やかなW不倫の話なんて読んだことないわ。
出会ってしまって、会うのをやめられない二人が、どちらかが死ねば会わずに済む、
だからどちらか死のう、でもお互い、自分が死ななければと思って行動を起こす。
そんな話。そこまで思い詰めなくていいのに、思い詰めずにいられない姿は哀しくも滑稽で、
でもとても温かいラストで、最初にこれもってこられてぐっとつかまれた感じでした。

「袋のカンガルー」
手紙の代筆をする会社の青年の話。面白い設定です。手紙の代筆、そしていつしか
その手紙にまつわる悩みを聞くカウンセラー的なことまでやる羽目になってる会社。
なさそうでありそうな。今ってメールが主流で手紙とか書きませんけど、
昔よりも文章で書くことの比重がとても増えてて、私みたいに喋るより書く方がいい人は
生きやすい時代ですけど、そうじゃないひともいるのかな。でも、書くも喋るも
コミュニケーション。誰かに何かを伝えるのがへたくそな人が多くなってきた気もするし、
だからこんな商売は需要が案外あるのかも。

あ、しまった商売の話はええねん。そこで働く青年が、妹と彼女の板挟みになりつつ、
人のいいなりにばかりなっている自分を省みて、少し自分を取り戻す、わかりやすい話かと
思ったら、ずぶっとぬかるみにはまったようなラスト。これから彼ら、どうなるんだろ。

「駅で待つ人」
これだけ異色でした。どう異色かは読んでもらった方がいいかな。
あとがきに「普通の人を装った間違った人がいるからご注意下さい」みたいなことが
書いてあって、笑えたけど。
駅で待ち合わせをしている人を眺めるのが好きな、待ち合わせウォッチャーの男の話。
彼はある日理想的な駅でウォッチングしてたんだけど、そこでずっと誰かを待っている
女性が印象に残って・・・って話なんだけど、筋書きよりも、待ち合わせている人って
確かにドラマチックよな、とそんなことを思った。
そして、携帯電話なんて無粋なものができて、と彼が怒るくだりでは私も頷いてしまった。
私は待たせるのが得意で待つのが苦手、っていう、最低な人間だから、
携帯の登場はとてもありがたかったけどねー。

「とっさの場合」
これ、よかった。途中まで、普通すぎる話なんですよね。子どもが事故にあってしまっても、
反射神経の鈍い自分は助けることが出来ない、子どもを助けられないかも、っていう不安から
強迫神経症っぽくなってしまう女性の話。私も運動神経の鈍さは相当のものなので、
いたたまれなく読んでました。でもまあ、彼女がしょっちゅう喋っている留奈という女の正体も
けっこうすぐわかるし、きっと子どもが実際に事故に遭っちゃったりするんだろう、
なんて先を読みながら読んでいたんだけど、へえ。そう転ぶのかあ。
予想外にすごくいい方向に転んで、とてもいい気分になりました。
弱くて不器用な人だからこそ、弱い人の気持ちがわかるし、思いやれるんだよな、なんて思う。
私もよわっちいけど、でも人を許せる心はあるだろうか?考えちゃいます。

「マリッジブルー・マリングレー」
妻となる女性の実家の福井県に挨拶にいった男。初めて見るはずの日本海、しかし記憶にある。
男は、交通事故の後遺症か、3年前の2日間の記憶がなかった。その時に来たのか?
男は自分を疑い始める。
彼は週末の記憶をなくしてるわけだけど、私だったら週末2日間くらい記憶が消えたって
なんてこたあないな、なんて思って哀しくなった。だいたい家でごろごろしてるか
ゲームとかやってるだけだからな。でもその時読んだ本とか観た映画とかの
記憶が消えるのは哀しいな、なんてあほなことを思いながら読んでいたら、
最後思いがけない方向に話が落とされて、おっと油断してた、とびっくりした。
真相はどこに?このざらざら感、いいわ。

「無言電話の向こう側」
なんか、4作目からおもしろさが加速していく感じだったんだけど、これが一番好きかな。
自分をしっかり持っている樽見という男性と友達になって、彼の秘密を知ってしまう男。
樽見という人物、自分を持ってるのはいいんだけど、とても不器用な信念を持ってて
不器用に生きてしまう。もうちょっとうまくやれるやろ、とこの男には一番つっこんだけど、
それでもこの人が一番好きでした。いい男だ。
伏線ははられまくっててなるほどって感じだし、短編として出来すぎてるくらいだったし、
全体として、この本のラストを締めくくるにふさわしい、とても優しい、いい短編でした。

ところで、読み終わった今もこの作家さんが男か女かわからないんだけど、
どっちなんだろう。名前からみたら女なんだけど、どっちって言われても納得できる気がする。
中世的な作風も大きな魅力です。
| comments(16) | trackbacks(14) | 11:10 | category: 作家別・さ行(その他の作家) |
コメント
おぉ、私も今日まさに借りてきたところです。ゆうきさんのところを読んで…。

ざれこさんのところを読んで余計に楽しみになりました。ふっふっふ。よい週末が過ごせそうです!(いいのかしら、乙女なのにそんなことで…)。
| chiekoa | 2006/05/19 2:48 PM |

気が合いますねえ。お互い、ゆうきさんのおっかけですもんねえ(勝手に)
良かったですよ、この本。良い週末になりますよ。私は珍しく華やかな予定(友達のライブを見に行くのです)が入ってて、家で本が読めない週末で、本読みたいなあと思ってしまってます。駄目駄目です。
| ざれこ | 2006/05/19 3:29 PM |

あらまあ。びっくり。
盛大にリンクをはってくださって、ありがとうございます!
それにしても、自分が好きな作品を他の人にも誉めてもらうと、
どうしてこんなに嬉しいんでしょうねー?
今日は、いい気分で眠れそうです。
わたしも、ざれこさん&ちえこあさんのブログはいつも参考にしています。
これからも、すえながくよろしく♪
| ゆうき | 2006/05/19 10:56 PM |

ゆうきさん
おかげさまでいい本読めました。ありがとうございます。
ですよね、自分が好きな作品を他の人が褒めていると嬉しいですよね、やっぱり。自分が書いたわけでもないのに「ふふん、面白いやろ」と得意げになってしまいます(笑)
これからも追っかけますのでよろしく。次は「七姫幻想」狙ってます。
| ざれこ | 2006/05/21 1:38 AM |

読みました。…ざれこさんの感想、そのままコピペしてもよいですか?(笑)。

そして『七姫幻想』入手済みです。次の狙いも同じでしたね。ふはははは。どこまでも運命っ!
| chiekoa | 2006/05/22 4:58 PM |

ちえこあさん
コピペせず感想を書かれたようですね(笑)ま、コピーするには私のは長すぎますよね。
「七姫幻想」は誰か借りているようで、手元に届くのはもう少し先みたいです。先を越された・・!しかし、チェックどころまで同じとは、笑うしかないですね。
| ざれこ | 2006/05/23 12:12 AM |

こんにちはー。
TBさせてもらいました。
私もほとんど似たような感想です♪
ざれこさんは、無言電話のお話がお気に入りなんですね♪
私は、とっさの場合がお気に入りです。
この本、あとがきもいいですよね☆
| | 2006/05/23 8:33 PM |

sonatineさん(ですよね)
あとがきも、温かくて著者の人柄が良く出ていて、でもちょっとだけひねりがきいてて、良かったですよね。
私も「とっさの場合」も好きです。「バク」も好き。
| ざれこ | 2006/05/26 10:12 AM |

↑そうです。
名前書き忘れちゃって、すいません。
バクもいいですね〜♪
| sonatine | 2006/05/29 1:24 PM |

どこかでおもしろいと書いてあった・・という記憶を頼りに読んだのですが、どうやらこちらとゆうきさんの記事だったようです。(記事の内容はお楽しみということで、読まなかったんです)大当たりでした。ありがとうございます。
私も落としどころがどうくるか予測がつかなくて、それが楽しかったです。「とっさの場合」が一番意外であたたかくて好きです。

沢村さんは、男性だと思い込んで読んだのですが、そういえば名前も文章もどちらでもありえますね。気になってきました。過去には高村薫さんと北村薫さんの性別を逆に思い込んでいた前科もあるので・・。
| | 2006/06/21 10:32 PM |

↑ハッ!またやってしまいました!
| june | 2006/06/21 10:41 PM |

juneさん
無記名を推理するのも楽しみの一つになりつつあります(おい)気にしないで下さい。
これ、私もゆうきさん経由で読みましたがかなり収穫でした。全く前知識がなかったという意味では今年一番の収穫かもです。
高村薫と北村薫は間違いますよ、そりゃ(笑)高村薫は男らしすぎて、北村薫は清純すぎます・・・。沢村さんはニュートラルなイメージでした。いまだにどっちかわからない・・・
| ざれこ | 2006/06/22 12:52 AM |

ゆうきさんとざれこさんとchiekoaさんの記事を見て、読みました。
シンプルなのに、一筋縄ではいかない短編集で、掘り出し物の一品でした。
ほかの作品も読んでみる予定です。

あとで、「砂漠」にもうかがいます。
| 藍色 | 2006/07/14 4:17 PM |

藍色さん
そうでしょう、掘り出し物だったでしょう。バラエティに富んでいて、温かくて、いい短編集でしたね。
沢村さんのほかの本も気になりつつ、家の積読を読んだり流行に乗ったりしています。また他の作品の感想も教えてくださいね。
| ざれこ | 2006/07/15 2:07 AM |

ざれこさんこんばんわ〜。
大勢の方がお薦めしていたので読んでみました。
ほんとよかったです。
沢村さんはそんなにたくさん書いてるわけではないようなので、
読み尽きてしまうのが勿体ないような気すらしてきました。
読む本は他にもたくさんあるのですがw
| 斎藤れい | 2006/12/21 6:18 PM |

斎藤れいさん
これ良かったですよねー。私もいろんな方のオススメで読みました。
沢村さんの本は数は少ないですが作風も重厚なのとかいろいろあるみたいで、私も少しずつ読みたいなあと思っています。もったいないですよね、読むの。
| ざれこ | 2006/12/24 3:01 AM |

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