本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「第三の時効」横山秀夫
第三の時効
第三の時効
  • 発売元: 集英社
  • 価格: ¥ 660
  • 発売日: 2006/03/17


だいぶ前の記事で、横山秀夫で一番よかった本は「出口のない海」だと
言った私でしたが、取り消します。これがダントツでした。
これも読まずにえらそうに横山さんを語ってすいません。と詫びたい気持ちです。

横山氏がいかに短編で威力を発揮するか、ってことは
「陰の季節」「動機」を読んで知ってたつもりだったんだけど、
いやあやっぱり凄いなと、改めて。職人芸ですね。
これはさらに連作短編ってこともあって、ある時は主役に、ある時は脇に回る人々、
だから、誰が何をトラウマにもって何に悩んでるか、読者は知ってるわけで、
そのせいで主役も脇役も全員人間くさくって、全員のドラマがしみてくる。
重厚的な見せ方が実にうまいなあ、と。

「陰の季節」では刑事ではなくて警察の人事がらみの短編だったけど、
今回はモロにある地方の捜査の最前線の課がまるまる主役といっていい。
強行課には3班あって、それぞれ個性的な班長が仕切っていて、
お互いが手柄の取り合いで競い合っている。一見冷酷な朽木の1班、
公安上がりで策を弄する楠見率いる2班、天才的勘を持つ3班の村瀬、
そして個性的過ぎる彼らをまとめる課長、部長。戸惑う部下達。
事件を通じて彼らの内面が複雑に交錯して、事件も二転三転して、
でも一つ一つの短編は芸術的に完結している。

あーなんかこれ書いてたら刑事ドラマっぽいかも、とか思っちゃったり。
私、昔「太陽にほえろ!」を毎週見てたんですけど(母が裕次郎ファンで)
大好きだったんですよね。毎回中心人物変わるじゃないですか、ドラマも。
長さんとか山さんとか。もう物心ついたころには松田優作は
「なんじゃこりゃー」と殉職した後だったと思いますが、ゴリさんとか、
細かった渡辺徹とか神田正輝とかはちゃんといて、毎週楽しみで。
裕次郎ファンじゃなかったけど、皆をしっかり見ているボスもステキだったな。
ブラインド、下げるんだよね。で、窓の外見てるんだよね。

あ、しまった本の感想だった。最近話がそれていけないや。
でも、「太陽にほえろ!」はドラマですから、それなりに単純なつくりだったと
思うけど、さすがに小説です、複雑です。雰囲気一緒でもないです。
でもこれもドラマにしたら、絶対面白いと思う。もうなってたりします?

と、真面目に本の感想に戻りますが、
短編の出来からいくと、「囚人のジレンマ」や、「第三の時効」なんかが
秀逸だったと思いますが、私は「ペルソナの微笑」がとても印象に残ってます。
小さい頃に知らずに犯罪に加担させられた矢代、刑事になった今も、
自ら作った仮面をはげずにいて、いつも笑ってばかり、でも、
同じように犯罪に加担させられ、少年時代に父を殺してしまった青年の事件が
13年ぶりに捜査線上に浮かび・・・。
最後の被疑者との対決は、ひたすら会話が続いてるだけなのに、凄まじい緊迫感で、
泣きそうになりました。矢代が背負った業が、たった2ページで
私にどっと迫ってきたので。怖かった。
そのあと出てくる矢代が、いかにおちゃらけていて、周りからどう思われてても、
私にはそれすら痛々しくて、見てられない感じで・・・。

出てくる人たちは皆、自らいろんなものと闘いながら、犯罪を憎み、
事件に立ち向かってるんだけど、自らはなかなか簡単には救われない。
その、救われない感じも重みとしてこちらに伝わってくるんでしょう。
簡単に、前向きにならないところも、引き込まれるゆえんだと思います。哀しいけど。

矢代もだけど、1班の朽木のトラウマがすごく辛くて、それが最初の短編で語られるので、
全編登場する彼の姿が目から離れないというか、ずっと気になる人物でした。
最後まで笑わない彼がすごく悲しかったりして。
いつか、彼らは解放されるときがくるんだろうか。続編を待とうと思います。

文庫版で、一部単行本から加筆修正されているようです。加筆箇所を丁寧に
解説で示してくれていましたが、すごく印象的な2行が追加されてるようで、
単行本と文庫本では、朽木のイメージがかなり違うのでは?と思います。
文庫本の再読もお薦めかも。
| comments(11) | trackbacks(15) | 02:59 | category: 作家別・や行(横山秀夫) |
コメント
こんにちは。
私も横山氏では「第三の時効」が一番面白かったクチですが(次点は「顔」かな)
文庫版は加筆されているのですか!?
うーむ、読みたくなりますね。
商売上手だぞ集英社!
それにしても自分の職場が「F県警捜査一課」みたいだったらイヤだなあ。
| 木曽 | 2006/05/14 8:51 AM |

こんにちは。
確かTBSでドラマ化されていたと思いますよ。
朽木が渡辺謙、楠見が段田安則、村瀬が伊武雅刀。で、矢代は金子賢だったと思います。
この本はすごく面白かった記憶があるのに、なぜか評価が星三つになってます・・・。
加筆があるということだし、文庫で再読してみようかなぁ。
| あおちゃん | 2006/05/14 3:21 PM |

木曽さん
文庫解説で書き換えられた箇所が少し描かれてましたが、些細な書き換えだけども重要な書き換えが行われているように私は感じました。解説の最後の方をちらっと読んでから購入を決めてはどうかと(笑)集英社のまわしものではないですが。
しかし、確かにあんな職場嫌ですね(笑)捜査課長がかわいそうでした・・

あおちゃんさん
お、やっぱりドラマになってましたか。こんな美味しい素材を逃すはずないですよね。DVD出てるかなあ。村瀬が伊武雅刀。にかなりうけました。いい感じですねー。
| ざれこ | 2006/05/16 9:15 AM |

はじめまして。
横山秀夫はかなり読んでます。この人はとても巧いので読まされてしまうのです。
二渡シリーズはテレビでもいつも見てます。
ただ、この人の本はいつも「男の世界」って感じがしますね。組織が前面に押し出されてて、ちょっと息苦しい感じがすることも(笑
| サコ | 2006/05/24 8:55 AM |

サコさん
はじめまして。横山さんうまいですよね。私もけっこう読んじゃってます。特に短編集にははずれがないですね。二渡のシリーズはTVではみたことがないんですけど、ドラマも面白いですか?今もやってましたっけ?
確かに、むちゃくちゃ男世界ですよね。女性もいるんだけど、仲間に入れてもらおうともがいてる、みたいなところもありますし(笑)
| ざれこ | 2006/05/25 1:03 AM |

ざれこさん、こんばんわ
私もこれ、文句なくマイベスト横山さんです。
ドラマもなかなか面白そうな配役ですね。見たいなぁ・・。
そして、文庫にある印象的な2行!すごく気になります。
見に行ってこなくちゃ、というか買ってしまおうか・・。
| june | 2006/09/27 10:21 PM |

juneさん
どこらへんが改訂されたかは解説に詳しいので本屋でちらっと解説読まれてみては?と思います。読んですぐなら立ち読みでもいけるかもですよ。(何薦めてるんだか)
ドラマ、興味深い配役ですよね。DVDなってるんでしょうかねえ。
| ざれこ | 2006/10/01 3:38 AM |

半落ちから入りましたが、確かにこの本は、引きづるくらい、うまかった。
朽木、サイコー!!
ドラマは、見ない方が良さそうな気がする(笑)
| モト | 2006/10/13 8:30 PM |

http://hanaletu.com/cno/96998.html
| mapquest usa | 2007/09/12 11:20 PM |

3f9c0499de3af89493e760408a360f62 谿コ縺励※縺紜縺ァ√◆縺。
| walmart jobs | 2007/11/02 8:50 PM |

はじめまして。

私も横山秀夫さんの作品では「第三の時効」が一番好きです。
そして、私も印象が強いのは「ペルソナの微笑」です。

F県警シリーズの続編が、何かの雑誌に連載されている(いた?)らしいのですが、あまり耳にしませんね。。。

何にしても楽しみですよね、続編!

では。
| tk | 2008/06/10 1:01 PM |

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