本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「クドリャフカの順番―「十文字」事件」米澤穂信
クドリャフカの順番―「十文字」事件
クドリャフカの順番―「十文字」事件
  • 発売元: 角川書店
  • 価格: ¥ 1,680
  • 発売日: 2005/07
  • 売上ランキング: 6,424
  • おすすめ度 4.25


「氷菓」「愚者のエンドロール」で文化祭の準備をしていた
古典部メンバー、この本でやっと文化祭終わりましたわ。私の中で。
いやあ、お疲れお疲れ、と4人に言いたくなりました。長かったね。
すっかりこの4人の古典部メンバーは身近になりましたが、
今回は4人それぞれの視点で交互に語りが入るので、ますます身近に。
なんか嬉しかったな。しばらく会えなくなるのが残念。

そう、高校の文化祭の話なのです。省エネのホータローと親友里志、
漫画研究会とかけもちで超多忙の摩耶花、そして唯一、省エネのホータローを
動かせる好奇心女、千反田える。その古典部で作った文集「氷菓」を
文化祭でちょこっと売って終わるはずが、大変、間違えて200部刷っちゃった。
さて、これを売りつくせるか?せめて赤字は免れたい。4人はあの手この手で
文集を売ろうと奔走しますが、いつのまにやら連続盗難事件に巻き込まれ、
その事件はクリスティの「ABC殺人事件」をどうやら模倣しているらしい。
文集を売るために、ホータローでさえ重い腰を上げ、事件解決を目指しますが?

面白いのよね。この文化祭が。
ホータローは例によって省エネで、店番を申し出て、誰も来ない地学準備室で
細々と文集を売っていたら、変な奴らがどんどんやってきて、
(製菓研究会(菓子の押し売り)とか、何故か園芸部とか)
そしてなぜか物々交換で変なモノを置いていく。まるでわらしべ長者、
しかし変なものが変なものに変わるだけ、とホータローは冷静に観察してるが、
まさか最終的にそれがあれになるなんて。すごいわ。

省エネホータローですらもネタになってしまう、そんな文化祭。
いろんな、テンション高い学生達が活写されてて、むちゃくちゃ楽しそう。
それに、料理大会の臨場感といったらもう。まだ、連続盗難事件さえ
起こってなかったのに、もうすっかり話に夢中になってしまってた。
事件もほとんど起こってないのに必死に読むミステリって、すごいよなあ。

文化祭って楽しかったよね。懐かしい。
私は高3の文化祭ではクラス劇をやることになって、高3だってのに
徹夜して脚本書いたり、音響を担当したり、いろいろやりました。楽しかった。
脚本はまあ、映画を設定変えて焼きなおしただけだったけど、それでも女を数人泣かせ、
音響は、「なんか刑事ドラマみたい」と言われて数曲を没にされて悔しかったけど、
それでも本番ちゃんと流せたし、何よりクラス全員でやってやったぜ、っていう
一体感みたいなのが楽しかったな。皆、元気かなあ。

あ、むちゃくちゃ話それた。でもね、読んだら思い出すと思うねんな。文化祭。
それで、ああよかったあの頃は、なんてノスタルジーに浸れちゃうのです。
もう取り戻せないとか苦々しい意味じゃなくて、ひたすら爽やかに思い出せる。
もうそれだけでも、いい本だなあって思う。

それぞれの人物の内面を知れたのも、話に奥行きが出て面白かったな。
特に里志の内面が実に複雑。今までホータロー視点だったから、
明るい能天気な人かと思ってたけど、違うね。摩耶花をとても大事にしてるのに
告白には応じない複雑さ、ホータローに複雑な感情を抱いていて、
推理能力をいきなり発揮し始めたホータローへの微妙な嫉妬みたいなのが、
摩耶花との台詞に実に出ていたところがあって、うわ、そうなのか、と
一瞬ヒヤッとしたくらい。それでも二人は親友だし、それは疑いようがないんだけど。

才能への嫉妬、といった感情が、作品の根底にあるようで、そのどうしようもない感じは、
私がいつも感じていることだったから、ひりひりと身に染みてしまった。

天賦の才能ってあるよね。ない側からしたら、何を手放してでも手に入れたい、
でもある人にとっては自分にあって当たり前のものだから、いらないなら使わなくてもいい。
変な例えだけど、私は髪がとても多いのね。もう、毛根ごと誰か、薄毛の人に
移植したいと本気で思ってるけど、そんなことって不可能やん?
薄毛の方は、喉から手が出るほど私の毛根が欲しいはずだけど、でもあげられへんやん?
・・・なんか、変なたとえすぎたかな。すいません。

私はずっと音楽をやってきてるけど、趣味で滞りなくやれる分くらいには、
才能は持ってると思う。でも、金を取れるほどの才能は全然ない。
楽器もろくに練習しなければ未知数だったかもしれないけど、
大学でむちゃくちゃ練習させられて、自分の上限を感じるとこまでやっちまった。
あ、私ここで打ち止めやな、この程度やな、ってのがわかってしまった。
だから全然悔しくもないけど、でも、大学時代にともに過ごして、
最初は私がしかりつけてたような後輩たちが、みるみると私を追い抜いて、
音楽業界ですごいものを生み出せるようになっている、そんなのをみてると、
なんかね、寂しいのね。仲間に入って、一緒にすごいものを作りたい。
でも作れないのは知ってるから、取り残されたみたいで、寂しいのです。

あーなんか語ってしまった。恥ずかしい。それもあまり本には関係ない。
ま、高校の頃って、やっぱり非凡な自分を夢見てた頃だからさ、
自分の限界はまだ知りたくないじゃないですか。でも知ってしまう、
そんな焦りとか、それを越えていこうとする彼らの姿とか、
そういうのもすごくひりひりと描かれてて、そこも面白く読んだのでした。
あーあ。おかしいなあ、私ももっとビッグになってるつもりだったが。

事件の謎解きは相変わらず、鮮やかで見事でした。そうきたか。
それにしても、ホータローのお姉さん登場はご都合主義以外になんなんだ、って感じでしたが、
ホータローの姉さんなら許せるのはなぜだろう。今まで2作品で培った
破天荒なキャラ設定がそれを許してるよな。あの姉ちゃんならわかってるやろ、みたいな。
そんな意味でもキャラが勝ってる。

3作目だから、前2作のエピソードが随所に出てきて、思い出してにやりにやりでした。
やっぱり順番に読むほうが醍醐味がありそうです。
あと、「ABC殺人事件」を読んでなくてネタバレされたら困る人は、
この本読まないほうがいいみたいですよ?って、古典部の人たちが語ってました。
著者の優しさなんでしょうが、途中まで読んでるんだからそこだけ飛ばすってわけにも
いかないよねえ。なんて思っちゃいました。でも、読んでも何がネタバレなのか、
読んでない私にはいまいちぴんとこなかった。あれ?私ってあほ?

あ、あと「寿司」ネタがわかりましたよ。1作目の文庫あとがきにあった、あれです。
あら、こんなところで、って笑っちゃいます。読み逃しのないように。
| comments(7) | trackbacks(7) | 02:05 | category: 作家別・や行(米澤穂信) |
コメント
あ。やっぱり、読む順番が大切だったのですね・・・くくく、ちょっと寂しい。
単独で読んでしまい、この作品のもっともおもしろい読み方ができなかった。悔しいぃぃ。
| すの | 2006/05/08 8:43 AM |

すのさん
うわ、そうだったんですか。私は知ってたから順番通り読みましたけど、いきなりこれから単行本になっちゃうので、ぱっと見わかりませんよね・・・。
| ざれこ | 2006/05/08 9:08 AM |

こんにちは。
毛根のくだりで、めっちゃ笑いました。
私も髪の毛が多いので、誰かにあげたい!

里志は、意外に複雑な人でしたねー。
ホータローの前では強がっているところが、なんだかかわいくてツボでした。
| ゆうき | 2006/05/08 11:40 AM |

こんにちは。前2作を読まずにこの本を読んだ一人です・・・。
順番に読んだ方が面白いという書評を見るたびに悔しい思いをしています。2冊読んでから、この本を再読しようと思ってますがいつになることやら・・・。
| あおちゃん | 2006/05/08 3:06 PM |

前2作を読んでいると、やっぱり盛り上がりますよね。やっと文化祭だー!と。

他の3人の内面をのぞけたのはおもしろかったんですが、結構ドキッともしました。
特に里志には、そんなことを考えてたんだと、ちょっと痛々しくなってしまって・・。
考えてみればそうですよね。そういうことが見えてきて、それを受け入れるのに辛さが伴う時期ですよね。
ざれこさんの才能の話も、私はそこまで一生懸命になったものってないけれど、なんかすごくわかりました。

| june | 2006/05/08 9:24 PM |

こんにちは。
理屈抜きで楽しい一冊でした。
千反田える製「ぎぜ焼き」食べてみたいものです。
沢木口さん率いるチーム天文部の料理にもちょっと興味あります。
異世界にトリップできそうです。
| 木曽 | 2006/05/09 7:52 PM |

ゆうきさん
不適切な例えで申し訳ありません(笑)ゆうきさんも髪多いんですね。私なんか毎回美容院で「多いっすねえ」といやそうに言われますよ。梳くのも大変らしいです。ふう。
それはともかく(笑)この本面白かったですね。里志の今後がなんだか楽しみ。

あおちゃんさん
ああ順番を間違えた方がここにも・・。なんだか私まで悔しいです。前2作を読んで「おおそういうことだったのか」と、逆に楽しんでみてください・・・。どちらも面白いですよ。

juneさん
そう、里志も今闘ってると思うんですよ。別に推理能力にコンプレックス抱くことないんでしょうけど(笑)、それが青春というものですものね。
彼がどんな答えを出していくのか、摩耶花をどうするのか、続編楽しみです。どうやら短編集で出るっぽいことが米澤さんのサイトにありました。未定、だったけど、お願い出して〜。って感じです。

木曽さん
ああ、天文部。「愛のエプロン」のインリンみたいな料理作ってんだろうなあ、と面白く読みました。(笑)
ぎぜ焼きってどんな料理か私も知らないんですけど、おいしそうでしたね。食べてみたいです。お嬢なのに料理もできるとは、えるもあなどれないです。
| ざれこ | 2006/05/09 9:37 PM |

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