本を読む女。改訂版

関西弁でだらだらと本の感想書いてます。
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# 「銀齢の果て」筒井康隆
銀齢の果て
銀齢の果て
  • 発売元: 新潮社
  • 価格: ¥ 1,575
  • 発売日: 2006/01/20


っていうかさあ、つい昨日まで恩田陸の三月シリーズで耽美な世界に浸ってた女が
翌日に読む本がこれかい、とわれながら突っ込みますわ。
私って守備範囲広すぎないか?

でもまあ、筒井康隆氏とは私が中学時代からのおつきあいで、
(あ、もちろん直接は知らないですよ、比喩ですよ比喩)
筒井康隆と村上龍が私を覚醒させてくれたと言っても過言ではないから、
育ての祖父といったところ?そうか?ほんまか?
でも私の源流として一本流れてるのは間違いないですね。
この本読んでも全く違和感無しな私。
しかし、筒井康隆氏、御年72歳。
70歳以上の老人を集めて殺戮させる「シルバー版バトルロワイヤル」を
72歳のこの人が書いてしまったら、そりゃもう誰も文句言わんで、と。
これ、30代の人が書いたら社会問題になってるって。
しゃれになるのが凄いんだわ。さすがだよなあ。

厚生労働省の施策で、70歳以上の老人達は殺しあうように、という決まりが出来た世界。
地区が決められ、バトルメンバーも指定され、期限までにたった一人が
生き残るように殺しあわないといけない。複数生き残ってしまったら、
全員が処刑されてしまう、なんとも凄まじいが、逃げ道のない設定。
東京のある地区でも、57人の老人がバトルメンバーに指定されます。
初日、九一郎が囲碁仲間の親友をワルサーで射殺するところから、この物語は始まる。
あとは延々とずっと、ひたすら誰かが誰かを殺すシーンが続きます。
章が途切れることすらないので、トイレに行くのも困るくらい、延々とです。

なんか、困りました。笑っていいのかどうか、途中までわからなかったので。
不謹慎なのよ。それはもうとにかく、老人がばたばたと死んでいく様は、
笑っていいのかどうかわからない不謹慎さをずっと感じて落ち着かないのです。
これってやっぱり、「お年寄りには席を譲りましょう」精神が、私の心の奥に
根付いてるからなんだろうか。実際に譲ったことはほとんどないけど、
前に立たれると感じるあの罪悪感(じゃあ譲れよ)、あれが今感じる不謹慎にも
つながってる気がしたり。

でも途中から「あーやっぱり笑っていいんだ」と気づきました。ギャグでいいんだね、と。
だって「葬いのボサノバ」なんて曲を歌う僧侶が出てきて、
しかも譜面までついてて、作曲は山下洋輔だし、ボサノバだし、
思わず久々に必死に譜面を読んで、ボサノバっぽく歌っちゃいましたよ。
乗せられたー。とすぐに我に返りましたが、もうそこから笑いまくり。
最後にはだってあの巨大動物まで出動、手段を選ばない殺戮ぶりは
もうシュールの一言です。笑うしかない。いやもうほんま、笑うしかないのだよこの本は。
逆に笑って読まないと、しゃれにならんような気がする。

筒井氏は、今の世の中に警笛を発しまくってる気がしました。
介護保険は厳しくなる一方で、体が不自由でも生きていける人たちへの
医療負担がどんどん重くなっていってるみたいです。長期療養型の人とか。
職場で、ご両親を介護している人がいつもこぼしていて、聞いてるとなんだか
「死ねと言わんばかりよなあ」と心で思ったりしてしまいます。
今は格差社会とかいわれてるけど、ほんまそんな感じで、年を取ったら
金がないと生き残れないかもしれない。お年寄り達にとっては、
日々闘い、それが実感かもしれません。
お年寄りだからといって甘えていたらやられちまう、そんな心境かもしれない。
それをシュールに表現したのがこれだ、といえなくもないんだけど、
でもやっぱりここは笑い飛ばすしかない、ような、気もします。

あーでもやっぱり死ぬのはいやだな、と痛烈に思う本です。
あまりに死ぬので麻痺しそうだけど、でもやっぱり麻痺しないな、この感じ。
「バトルロワイヤル」も社会問題になったけど、あれって「死ね」とか「殺せ」って
メッセージは全然こめられてなくて、「生きろ」ってのをああいう形で
表現したかっただけだと思うんですよね。
この作品の終わり方にも同じようなことを感じました。

私も第二次ベビーブームの子どもです。私が老人になった頃、
世間は老人で溢れてるでしょう。誰も面倒見ちゃくれません。生き残らねば。

なんて、真面目なこともふと思いましたが、基本的には不条理スプラッタSFです。
こんな本、筒井さんしか書けないし。やっぱりおじいちゃん、すごいや。
(育ての祖父みたいな感じで言ってみた。)

装丁も挿画も良かった。山藤章二氏は筒井氏のお友達ですか?
えーっと、おいくつかしら(気になる)

この際映画化とかどうかなあ。70歳以上の人しか出てこない感じでさ。
(あと、48歳の熟女が一人いれば)
もちろん筒井さんも出てきて欲しい(主役じゃなくて、脇で)
絵的にむちゃくちゃ斬新やと思うけど、洒落にならんかな?ならんな・・・
| comments(0) | trackbacks(3) | 01:20 | category: 作家別・た行(筒井康隆) |
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『銀齢の果て』 「バトル・ロワイヤル」老人版
著者:筒井康隆  書名:銀齢の果て 発行:新潮社 阿鼻叫喚度:★★★★☆ 筒井氏18番のスラップスティック。 和菓子屋のご隠居宇谷九一郎(77歳)は、囲碁仲間である正宗忠蔵(78歳)を射殺した。宮脇町5丁目が、厚生労働省による老年人口抑制のための「シルバー
| 粗製♪濫読 | 2006/04/25 9:59 AM |
筒井康隆『銀齢の果て』○
 初出「小説新潮」2005年1月号〜10月号。  爆発的に増大した老人人口を調節...
| 駄犬堂書店 : Weblog | 2006/04/25 3:41 PM |
銀齢の果て<筒井康隆>−(本:2006年78冊目)−
新潮社 (2006/1/20) ASIN: 4103145285 評価:85点 筒井康隆も70歳を越えた。 70歳を越えたからこそ、老人が殺しあうこんな小説を嬉々として書くことができるのだろう。 ネタ的には「バトルロワイヤル」の老人版だが、内容は完全にコメディだ。高齢社会の日本に
| デコ親父はいつも減量中 | 2006/08/25 1:15 AM |
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